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2016年6月22日 (水)

【イノベーション戦略ノート:090】顧客の本質的なニーズを洞察する

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◆改めて、iPhoneはなぜ成功したのか

iPhoneもそろそろ衰退期に入ろうとしているが、スティーブ・ジョブズが開発したiPhoneを改めて見てみると、やはり最大の特徴は顧客の本質的なニーズを把握していたことに尽きるのではないかと思う。

当時、フューチャーフォン(ガラケー)は成熟期の製品だった。そのため、メーカーは目の前の顧客ニーズに応えることに最大の価値をおいていた。この5~6年くらい、ガラケーの機能はほとんど変わっていない。スマートフォンに投資し、ガラケーにはほとんど投資しなくなったからだが、それでも市場はしっかりと生きている。

そして、機能ということでいえば、スマートフォンが生まれる以前の機能からほとんど変わってないのではないかと思う。つまり、フューチャーフォンにはニーズがあり、そのニーズの本質に到達したくらいのタイミングで、iPhoneが登場し、スマートフォンという新しい製品コンセプトがが生まれたといえる。

◆顧客の声から聞こえてこないもの

重要なことは、フューチャーフォンだけを見ていたのでは、顧客自身も気付いていない課題や価値があったということだ。それに気づき、徹底的に洞察し、分析したのがジョブズで、その結果がiPhoneだった。

今、考えてみると、ほとんどスマートフォンがiPhoneと似た機能を持っているのは、iPhoneが顧客のニーズの本質を見事に見抜いていたからだ。


◆本質を見抜くには

ではどうすれば本質を見抜くことができるのだろうか。もちろん洞察力などの思考力がある程度必要なことは言うまでもないが、もっと重要な要素があるように思える。それは、顧客の声を聞かないことだ。ジョブズの有名な言葉に

「人は形にして見せて貰うまで自分は何が欲しいのかわからないものだ」

という言葉がある。もっともこれはジョブズが最初に考えたことではなく、似たような言葉はいくつかある。例えば、100年前に、ヘンリー・フォードが言ったとされる

「もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは『もっと速い馬が欲しい』と答えていただろう。」

という言葉がある。100年前に今も顧客の特性は変わっていないのだろう。

顧客が欲しいと口にするもの常に「具体的」である。具体的な要求から、本質を見極め、そして、その本質をもう一度、具体的な製品にする必要がある。


◆本質と具体的な姿を行き来する

ジョブズの言葉は、具体化は一回では済まないことを示唆している。まず、自分で本質だと思う要求を具体化する。つまり、形にする。形にすれば顧客は自分が欲しいもののイメージが湧いてきて、そして欲しいものを言うようになる。

ところがそれは一つの具体的な機能であり、それがベストとは限らない。そこで、そこから本質を取り出し、自分の持っている本質的なイメージを調整する必要がある。これを何度か繰り返しているうちに、本質を確信し、そのベストの具体化をした製品が生まれてくる。そうしてできたのが、iPhoneである。

このように、本質的なニーズの洞察には、本質と具体的な姿を行き来することが不可欠である。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。