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2016年6月30日 (木)

【イノベーション戦略ノート:091】なぜ、大企業ではイノベーションが起こりにくいのか

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◆組織は戦略に従う

Kouzou

戦略と組織の間には、

「組織は戦略に従う。そして、戦略は組織に従う。」

という関係があると言われる。アルフレッド・チャンドラーが1962年に発表した「Strategy and Structure」において指摘した名言である。(※1)

※1 邦訳「組織は戦略に従う」、ダイヤモンド社(2004)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478340234/opc-22/ref=nosim

これは現在も事業部制において組織ガバナンスの基本になっている。



◆組織構造はドミナント・デザインに従う

これと同じくらい重要だと思われる関係に、「組織構造はドミナント・デザインに従う」という関係がある。これは、入山章栄先生が「ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学」で指摘されたものだ。

第61回の「製品ライフサイクルとイノベーション戦略」で少し触れたが、ドミナントは「支配的な」という意味の言葉で、ドミナントデザインとは、標準化・固定化されたデザインのことだ。製品ライフサイクルでは、揺籃期から成長期にかけて、製品の標準的なデザインが決まるが、これがドミナントデザインである。

ドミナントデザインという考え方が生まれたのは、自動車産業だと言われる。自動車の揺籃期には様々なデザインの車が登場したが、その後、ユーザのニーズやコスト効率、各種の規制などにより、デザインは今のような「4輪で、ハンドル、ブレーキ、アクセルがあって、座席がある」といったものに固定化されてきた。


◆自動車メーカーの組織

自動車メーカーの組織は、製品の構造やルールに従って作られるのが基本である。たとえば、以下のような部門に分かれる。

・パッケージング
・シャシー設計
・ボデー設計
・電子技術
・エンジン設計
・デジタル技術
・・・

これが、組織構造はドミナント・デザインに従うという意味だ。

ところが、このようになると、ドミナントデザインの中に収まらないデザインの自動車を作るのは非常に苦労する。たとえば、グーグルが取り組んでいるようなタイプの自動運転車を作るのは、技術的には可能だろうが、組織的非常に難しいだろう。製品のパーツの構成が変わるからだ。


◆大企業はイノベーションが難しいわけ

このような制約は大企業になればなるほど強くなる。大企業になればプロジェクト化することはできても、なかなか、新しい組織にすることはできない。

ゆえにイノベーションが起こせるかどうかは、プロダクトマネジャーの腕次第ということになるのだ。たとえばトヨタでいえば主査制度があり、イノベーティブな主査は毎回、開発を担当する自動車にイノベーションを起こしている一方で、イノベーションにはあまり縁のない主査もいるようだ。そんなものだろう。

この壁を打ち破るために、注目されているのがデザイン思考である。デザイン思考は組織において、ルールを破ることによって、これまでにはなかった組み合わせを実現しようとすることによってイノベーションを起こそうとしている。

デザイン思考については、また、別の機会に触れたい。

【参考資料】
入山 章栄「ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学」、日経BP社(2015)

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822279324/opc-22/ref=nosim

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。