【ブックレビュー】がんばると迷惑な人
太田 肇「がんばると迷惑な人」、新潮社(2014)
承認欲求で知られる太田肇先生の新しい指摘と提案。
仕事の質が変わって昔ながらの頑張りが通用しなくなったにも関わらず、頑張りから抜け出せない人に向けて、仕事の質を上げることが重要であることを説いた一冊。
今年は女性活用とか、ホワイトカラーエグゼンプションとかで、働き方が大きく変わりそうだ。変わる方向性として、この話はぜひ押さえておきたい。
明確な関係は定かではないが、どのような承認欲求にしても満たす方法は頑張って認められること。それが逆機能すると、タイトルにあるような迷惑な頑張りになっていく。逆機能のメカニズムを多くの事例で、認める側、認めてほしい側の両方から分析している。
逆機能の起こる理由は、昔と違って今は不確実性の中で仕事をしなくてはならないにも関わらず、頑張り方が分からないので、昔と同じ方法、つまり、量的な成果を求めて何も考えずに頑張ってしまうこと。
そうではなくて質的な成果を求めて、どうすれば成果を得られるかを考えて、そこに向けてしっかりとがんばりましょうという提案。口でいうのは簡単、でも実践は難しい課題だが、そこに非常に機微に跳んだ方法をいくつも提案されていて、実践的な内容。
太田先生の本はどちらかというと現場で働く人の視点で書かれているので、ついでに制度が労働に与える影響を書いたこの本も一緒に読むといいだろう。
海老原 嗣生「いっしょうけんめい「働かない」社会をつくる」、PHP研究所(2014)
それから、もう一点。この仕事の質を上げるという議論は本質を見極めるという議論と非常に深い関連がある。
効率には量的効率と質的効率の両方があり、これからの時代は質的効率を求めていく必要がある。そして、質的効率を求めるには、物事の本質を見極めることが大切だというのは中西輝政先生が「本質を見抜く「考え方」」で指摘されている。このあたりの議論とも関係がありそうだ。
迷惑な人になりたくなければ、こちらの本も併読をお勧めする。
中西輝政「本質を見抜く考え方」、サンマーク出版(2007)
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