« 【ブックレビュー】「好き嫌い」と経営 | メイン | 【イノベーション戦略ノート:035】パラダイムの変化に対応する »

2014年7月 6日 (日)

【プロジェクトの本質】本質とは何か?

バックナンバー https://mat.lekumo.biz/ppf/cat9922971/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◆はじめに

これまで「プロジェクトの補助線」という名前でブログをやっていたときには「補助線」というコラムをときどき書いていた。

Honsitu_2

ブログを「プロジェクトイニシアチブ」に変え、コンセプトも変えたので、「補助線」に代わる新たなブログ連載として「プロジェクトの本質」という連載を始める。

初回のテーマは、そのタイトルにもある「本質」とは何か。

最近、PM養成マガジンで「プロジェクトマネジメントをコンセプチュアルにしよう!」という連載を始めたが、その中で述べたようにコンセプチュアルスキルとは

「周囲で起こっている事柄や状況を構造的、概念的に捉え、事柄や問題の本質を見極めるスキル

と定義される。要するに本質を見極める技術がコンセプチュアルスキルである。

プロジェクトマネジメントをコンセプチュアルにしよう!

◆本質とは何か

では、本質とは何か。辞書を引くと、いろいろな定義があるが、

物事の根本的な性質・要素。そのものの、本来の姿。

という定義がしっくりくる。

4~5年前に日産自動車でプリメーラやGTRを開発された水野和敏さんの講演会でいい話を聞いた。水野さんはプリメーラの開発でエンジニアとしての実績もでき、さあ、これからというところでレースをやれと言われたという。しぶしぶ、引き受けたが、やるからには勝とうということで、どうしたら勝てるかと考えた。

そこで、実際のサーキットを見て、最高出力、最高速度で走っているところというのはそんなに多くないことに気づく。たとえば、日本の代表的なサーキットである富士スピードウェイだと最高出力で走れるのは全体の18%に過ぎない。

ところがレース用のクルマは軽量化、最高出力を競って開発している。これは違うのではないかと考えたという。

つまり、レースの本質はサーキット全体の80%以上あるカーブを早く走ることだと気付いたという。そして、加減速の速いクルマを開発した。この話は水野さんの著書に詳しく書いてあるので、興味がある人は読んでみてほしい。

水野和敏「非常識な本質――ヒト・モノ・カネ・時間がなくても最高の結果を創り出せる」、フォレスト出版(2013)

このように考えると本質とは、

目的を達成するために不可欠なもの

だということができる。


◆本質とは主観である

このあたりまではそうかと思って戴けると思うのだが、この議論には続きがある。それは、本質とは主観的なものだということだ。

本質という言葉から「正しい答え」を連想する人は少なくないと思う。もちろん、間違いではない。それはその人にとっての正しい答えだからだ。

水野さんの話は非常によくできた話で、82%は直線ではないので、82%を早く走れるクルマを作るのがよいと言われるとあたかも正解のように思るし、実際にこの発想で優勝している。しかし、冷静に考えてみるとそんなことはない。

実際にはすべての優勝チームがそのような方針をとっているわけではない。82%を速く走るのはレーサーの本分であり、最高出力を大きくし、優秀なレーサーを確保することこそレースの本質だと考える人も多いだろう。要するに水野さんは82%を速く走ることに本質があるというのは水野さんの主観である。

本質の議論というのは、ある意味でその人の世界観(ものの見方、考え方)の話なのだ。そこを勘違いしてはならない。


◆この連載について

さて、最後にプロジェクトの本質というテーマに触れておく。レースでお分かりいただけたようにプロジェクトの本質の捉え方も人によって違う。たとえば、ある人は目的やビジョンこそ重要だと考える。ある人はコミュニケーションだと考える。ある人はプロジェクトによって違うと考えるかもしれない。

いずれにしてもこの議論がプロジェクトイニシアチブのコアであることは間違いない。

このブログの連載では、このような議論をしていきたい。

コメント

コメントを投稿

PMstyle 2024年11月~2025年3月Zoom公開セミナー(★:開催決定)

カテゴリ

Googleメニュー

  • スポンサーリンク
  • サイト内検索
    Google

最近のトラックバック

Powered by Six Apart

プロフィール

フォトアルバム

好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。