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2008年7月

2008年7月28日 (月)

【補助線】創造性と生産性の両立がチームマネジメント

プロジェクトの運用においてチームのマネジメントに対する関心が高まってきている。チームのパフォーマンスには2つの側面がある。ひとつは創造性であり、もう一つが生産性である。

創造性は「3人集まれば文殊の知恵」を実現することだ。知的生産性だと言ってもよい。

いろいろなアイディアが出てきて、1人では思いつかないような問題解決ができたり、素晴らしい商品アイディアが出てきたりする。これはファシリテーションをうまく行えば、確実に実現できる。

ところがチームはよい話だけではない。プロジェクトの中でも、設計作業や開発作業のような実務的な仕事をチームで行うと必ず、生産性が下がる。つまり、2人でやって2人分の仕事ができることは珍しい。せいぜい、1.5人分だろう。人数が増えれば増えるほど、パフォーマンスの低下は大きくなる。

チームマネジメントの前提

よく、チームは2人で3人以上の仕事をするというが、これはこの2つがうまくいったときの状態を指している。つまり、創造性を高め、かつ、生産性を落とさない状態がチームなのだ。

チームが難しいのは、この2つには本質的なトレードオフがあることだ。

創造性を高めるにはできるだけ、自由に活動させる方がよい。しかし、あまり自由にさせると生産性が極端に低くなる。かつ、ITのような顧客ビジネスのプロジェクトではこれに加えて、顧客への対応というもう一つのトレードオフが出てくることが多い。

このトレードオフを最適化するのがチームマネジメントだと言える。現実を見ていると、これらに優先順位を付けてチームを動かしていることが多い。たとえば、ソフトウエア開発のプロジェクトでは創造性を高めることを重視し、生産性を犠牲にしているケースが多い。また、同じITでもSIプロジェクトでは生産性を重視し、創造性を犠牲にしているケースが多い。このようなトレードオフがトータルのパフォーマンスを高めるからだ。

しかし、これではマネジメントしているとはいえない。

どうすればよいか?創造性の向上によって実行力をカバーしていくこと、あるいは、逆に生産性の向上の中から創造的なコラボレーションを生み出していくことができて初めてチームのマネジメントだと言える。

プロジェクトマネジメントでは、WBSやOBSによって分担をして仕事を進めていく。これはチームの生産性を落とさないためだ。チームへの第一歩は、OBSで決まった分担を前提にして、それを超えた行動をすることだ。WBSをいくら完璧に作ってもモレはあるものだし、突発的なできごともある。その中で、メンバーが自律的に判断をして、そのような事態に対処していけるようにすることである。

2008年7月26日 (土)

PMサプリ133:多様性をパフォーマンスにつなげる

個の多様性がオピニオンの多様性になって組織の中で解放され、企業のパフォーマンスにつながっていくことが重要だ(シー・スウィート・クラブ)

【効用】
・PM体質改善
  アカウンタビリティ向上、リスク管理能力アップ、アナロジー思考力アップ、
  バランス感覚の洗練、問題解決能力向上
・PM力向上
  プロ意識の向上、実行力向上、リスク対応力向上
・トラブル緩和
 弱気克服、プロジェクトにおける辛さの克服

【成分】

◆広まるダイバーシティマネジメント
◆プロアクティブとリアクティブ
◆プロジェクトマネジメントとダイバーシティ
◆慣れない状況はチャンス
◆プロアクティブプロジェクトマネジメントの一要素としてのダイバーシティ

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2008年7月21日 (月)

【補助線】チームマネジメントの前提

チームマネジメントが注目されるようになってきた。チームマネジメントとはどんなことをするマネジメントだろうか?

チームの話でよくつかわれるエクスサイズに以下のようなものがある。

一郎君と次郎君と三郎君の3人兄弟がいる。お母さんに言われて、家の掃除をすることになった。一人でやれば6時間かかる。3人で一緒にやれば何時間かかるだろうか?

単純計算をすれば2時間である。しかし、このエクスサイズを行うといろいろな答えが出てくる。ポイントは2時間を超えるかどうか。代表的な意見は以下のようなものだ。

1人でやったの無駄は段取り変えにある。掃除機をかける、掃除機をかけれない場所をふく、窓ガラスをふくというところで、何度か段取り変えが出てくる。したがって、2人でやることによればこの段取り変えを減らすような分担ができるし、また、疲労が少なくなるのでパフォーマンスの低下が小さく、ゆえに2時間以下に減る。

というのが一つの意見。もう一つの代表的意見は、

二人でいくら効率的にやっても2時間かかるのだから、2人でやる作業の段取りを決めたり、作業の行き違いもあると思われるのでそもそも、ベースラインを2時間に設定するのがおかしい。したがって、いくら頑張っても2時間ではできないだろう。

というもの。

他にもお兄さんの太郎君のリーダーシップによるだろうとか、兄弟の仲がよいかどうかによって違うとか、掃除の道具ややり方によって違うとか、まあ、いろいろと出てくる。チームビルディングにもなると思うので、ぜひ、一度、あなたのチームでも議論してみてほしい。

掃除のようなベースラインのある作業を行う場合には、1人の場合と同じやり方をしたのでは2人でやって生産性が倍になることはまずない。コミュニケーションの問題とか、協働の問題で、必ず、生産性は落ちる。

FFS理論という独自のチーム理論を展開しているヒューマンロジック研究所によると、10人のチームではだいたい、ベースラインの生産性が6~7人分の生産性だという。このデータは実験に基づくちゃんとしたものだが、僕も感覚的にいえば、こんな感じだと思う。

チームとは3人が集まったときに3人分以上の仕事をする状態だというが、まずは如何に3人分の仕事をするかというのが問題になる。この問題は、リーダーシップの問題であったり、チームワークの問題であったり、モチベーションの問題であったりする。

同時に、3人で、1人ではできない方法で作業ができる方法がある。分業して慣れればパフォーマンスが上がるというような単純な課題はプロジェクトではあまりないと思われるが、それでも工夫すれば見つかることが多い。そして、作業者としての熟練と、プロセスの改善を継続的に行う。

この2つの要素を組み合わせてチームのパフォーマンスを上げていくのが、チームマネジメントである。

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〓【開催概要】〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
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  場所:ヴィラフォンテーヌ汐留コンファレンスセンター(東京都港区)
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【講義】
・チームを作るとはどういうことか
・プロジェクトマネージャーのリーダーシップ行動
・チームビルディングエクスサイズ
【グループ討議】
・管理と統率を両立するにはどうすればよいか
・メンバーのコミットメントをどのように引き出すか
【ロールプレイ】
・スケジュール遅延の際のリーダーシップ
【エクスサイズ】
・チームコミュニケーションエクスサイズ
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2008年7月19日 (土)

PMサプリ132:それは計画ではない

「計画している」というけど、それは決して「計画」ではない(保田健治、グローバルマネジメントコンサルティング代表)

【効用】
・PM体質改善
  PM体質の全般に対して効果があります
・PM力向上
  PM力向上の全般に対して効果があります
・トラブル緩和
  モチベーション向上、チームの士気向上

【成分】

◆計画を作るマネジャーは28%
◆計画と呼べない計画
◆プロジェクトにおける目標でしかない計画
◆プロジェクト計画は目標だという考え方もある
◆計画はシミュレーションである

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2008年7月14日 (月)

【補助線】経験がプロジェクトマネジャーをダメにする?!

◆メンタルモデル

メンタルモデルという言葉を聞かれたことがあるだろうか?我々の心に固定化されたイメージや概念のことだ。刷り込み、思いこみだと言ってもよい。

ハーバードビジネスレビュー2008年8月号にプロジェクトマネジャーのメンタルモデルをめぐるたいへん興味深い論文が載っていた。これだ。

キショア・セングプ、タレク・アブデル、ルーク・ファン・ワッセンホフ「プロジェクト・マネジャーが陥る「経験の罠」

この論文では、プロジェクトマネジメントのシミュレータを使って、数百人にのぼるベテランのプロジェクトマネジャーの調査をやっている。そして、その結果、必ずしも、これらの経験の豊富なプロジェクトマネジャーのパフォーマンスが高いわけではないことが分かった。むしろ、同じ失敗を繰り返し、パフォーマンスが低いケースが多いという結果が出た。

そしてその原因はなんと、従来、プロジェクトマネジャーの重要な資質だと考えられてきた「経験」にあるという結果を得たというのだ。

◆失敗を繰り返す3つの原因

実際に実験に協力したプロジェクトマネジャーの多くは、過去の判断ミスが反省せず、その後の意思決定に活かすこともなく、結局のところ、失敗を繰り返していることが多いが、その原因は3つあったそうだ。

ひとつ目は原因と結果の間にタイムラグがあることだった。タイムラグがあるので、因果関係がはっきりしない。たとえば、新たに加えたメンバーがチームに慣れ、思惑通りの能力を発揮するには常識的に考えて2~3か月かかるが、彼らはメンバーに加えるとすぐに能力を発揮するという判断をするのだ。そして、それは繰り返される。

二つ目は見込み違い。これは初期の見込みを修正できずに、チームに影響が出てくること。たとえば、生産性。ひとりひとりのメンバーの生産性に対して初期に設定した生産性が見込み違いであることが、進捗報告の評価によって判明しても無視する傾向がある。また、評価そのものを低めに行う傾向がある。これは、より多くのリソースを獲得したいという心理が働いているという。

三つ目はもっとも根深い問題だ。プロジェクト初期の目標が達成できそうにない場合に、彼らは目標の下方修正より、初期目標に拘り、ボロボロになりながらも何とか達成することにこだわるという。この背景には彼らのキャリアの中で「上司から与えられた目標は絶対である」というメンタルモデルが培われていくためだ。実際のところ、多くの企業では目標の下方修正は「失敗の自認」であるとみなされると指摘する。

このようにベテランのプロジェクトマネジャーは、長年、培われてきたメンタルモデルが支配し、それゆえに適切な判断ができなくなる傾向があるという論文である。これを防ぐためには、プロジェクト管理の仕組みの中に認知フィードバックの仕組みを入れて、プロジェクトマネジャーに思い込みに気付かせることが重要であると述べられている。まさに、アーンドバリューなどはそのためにあるといってもよいだろう。

以前、プロジェクトマネジャーの育成では失敗を糧にすべきという意見に対して、PM学会会長の富永氏に、「IBMでは失敗するプロジェクトマネジャーは何度でも失敗を繰り返す」と指摘されたが、結局、こういうことなのだろう(ちなみに、この論文で、企業名は明記されていないが、IBMと思われる企業がこの問題対処のベストプラクティスに取り上げられているので、IBMははやくからこの問題に気づき、対処していたのかもしれない)

◆経験を積めばつむほど失敗要因が強化される

少し、この論文から離れる。

この問題は、むしろ、メンタルモデルに起因するものなので、経験を積めばつむほど、強化されることになる。何とも考えさせられる論文である。全般的な印象でいえば、キャリアの浅いプロジェクトマネジャー(職位でいえば係長クラス)でこのような問題を感じさせる人は少ない(まれにエンジニアとしてのこのような感覚をそのまま引きずっている人がいるくらい)。ところが、シニアプロジェクトマネジャーになると、何を言っても自分の思い込みの世界から抜けきれないという人がよく見られる。明らかに強化されているわけだ。

ただ、これはそんなに単純な問題ではないことだけは言っておきたい。つまり、プロジェクトの状況で白黒がはっきりしていればアドバイスもできるが、本質的にはプロジェクトの状況も認知の問題であるので、そうは思わないと一言言われれば抗う余地はなくなる。したがって、対処のまずさも本人が気づくしかないのだ。

◆現場にみる3つの罠

また、この論文で指摘される3つのこの問題も、よく見かける。

最初のラグに対応できないという問題はかなり深刻な問題である。問題解決をする際にはアクションに必ずラグが出てくるが、このラグを考慮した問題解決を行うことのできるプロジェクトマネジャーにはほとんどお目にかからない。

二番目の見込み違いもよく見かける問題だ。多くのプロジェクトマネジャーは見積もりが間違っていたと認識した時点で計画を放棄する傾向がある。見積もりを見直して、新たな計画を作ってその計画に従って、プロジェクトを進めていこうとはまず考えない。PMツールを使い、生産性を一括して変更できてもなかなかやろうとしない。初期の設定に拘り、なんとか、今の生産性をベースにして管理しようと工夫する。初期の設定が間違っていることはプロジェクトマネジャーとして決定的な落ち度になると考える傾向があるようだ。

これはプロジェクトの命取りになりかねない。

三番目も多い。なかなか、プロジェクトマネジャーが上位組織に対して、スコープ削減、納期変更などの目標の下方修正を申し入れることはない。これは不思議な現象だが、この論文のようにメンタルモデルを持ちだされるとよく分かる。そして、この論文の指摘通り、たとえば、100%のスコープを90%にして納期どおり、スケジュール通りに達成するよりは、大幅なスケジュール遅れ、大幅なコスト超過を起こしても、100%のスコープを達成する方が評価される傾向がある。一度、コンサルティングに入った商品開発プロジェクトで、スコープ削減の提案をしたが通らず、2億円の予算が2億8千万円、開発期間11か月が15ヵ月になったが、プロジェクトマネジャーもメンバーも評価されて、びっくりしたことがある。

結局、上位のマネジャーは目的を達成するプレッシャーが一層強い。それゆえにこのようなことになるのだろう。

なんとはなくだが、コンサルティングの中で、抱いていた感じが、シミュレーションによってきちんと実証された感じだ。この論文はいろいろと使える!

2008年7月12日 (土)

PMサプリ131:人は意識の共有で動く

人は、意味の共有ではなく、意識の共有で動く(小宮一慶、コンサルタント)

【効用】
・PM体質改善
  アカウンタビリティ向上、計画力アップ、リスク管理力アップ、実行力向上
・PM力向上
  チームをまとめる力の向上
・トラブル緩和
  不要なトラブルの回避

【成分】

◆問題解決はチームで行うことが大切
◆チーム問題解決を可能にする風土
◆徹底的に議論し、結論がでたら従う
◆チーム問題解決では問題の定義が特に重要
◆答えを絞り込まず、優先順位をつける

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2008年7月 7日 (月)

【補助線】プロジェクトマネジメントはチームで行え!

PMBOKプロジェクトマネジメントの導入をすると、例外なく、ドキュメントワークの大変さを訴えるプロジェクトマネジャーが出てくる。実際にプロジェクトの立ち上げの際には時間の制約があり、かつ、マネジメント業務が集中する中でやらなくてはならないので、本当に大変だと思う。いくら、ドキュメントワークに慣れているといっても、欧米のプロジェクトマネジャーはこれだけのドキュメントを本当に書くのかと疑問を持っているプロジェクトマネジャーも少なくない。

そう思った経験のある人は、PMBOKのプロジェクト活動の図式をもう一度、みてほしい。実はプロジェクトマネジメントの仕事というのはプロジェクトマネジャーが一人でやるような図式になっていないのだ。少なくとも、プロジェクトマネジメントを担当すべき人は3名いる。

(A)プロジェクトマネジャー
(B)プロジェクトスポンサー
(C)プロジェクトマネジメントチーム

である。プロジェクトマネジメントの指揮をするのがプロジェクトマネジャーであることは間違いないのだが、それはプロジェくマネジメントチームを結成し、プロジェクトマネジメントの体制を作り、さらには、プロジェクトスポンサーへのマネジメント活動の依頼をすることを意味している。

さて、プロジェクトマネジメント業務を分類すると、以下のように分けることができる。

(1)プロジェクト体制の整備
(2)プロジェクト運営方針の調整とステークホルダの調整
(3)プロジェクト運営に関する意思決定
(4)プロジェクトの統制
(5)プロジェクトマネジメント成果物作成作業
(6)プロジェクトの対外的アピール

PMBOKで問題にされているドキュメントワークの多さは、(4)の量の多さである。

さて、ここで問題は誰が何をするかだ。まず、確実にプロジェクトマネジャーの仕事だと言えるのは、(1)~(4)である。そして、(1)の中で、プロジェクトマネジメントチームの編成をする。その上で、(5)を依頼する。また(6)はプロジェクトスポンサーの仕事である。

ところが、現実には、(1)~(6)のほどんどがプロジェクトマネジャーの仕事になっている。これでは、いくら時間があっても足りない。

プロジェクトマネジャーがプロジェクトの立ち上げで真っ先にやるべきことは、プロジェクト憲章の作成でもなく、スコープの明確化でもない。プロジェクトの形を一緒に作ることのできるプロジェクトマネジメントチームの結成である。

2008年7月 5日 (土)

PMサプリ130:肯定のOSをインストールしよう

肯定のOSをインストールしよう(阪本啓一、コンサルタント)

【効用】
・PM体質改善
  リーダーシップ発揮、顧客感度アップ、問題解決能力向上、バランス感覚の洗練
・PM力向上
  ピープルマネジメント力向上、チームをまとめる力の向上、リスク対応力向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上、チームの士気向上

【成分】

◆「もう10日間しかない」か、「まだ10日間もある」か
◆楽しむことが重要
◆無条件な肯定が苦手な日本人
◆否定に託する思いと肯定に対する懐疑を引き起こす察する文化
◆否定がプロジェクトをややこしくする
◆分からないなら「肯定」が重要

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2008年7月 1日 (火)

【補助線】プロジェクトマネジメントにおける型と守破離(しゅはり)

◆型と形

6月25日のPMstyle+メールマガジンの巻頭言に守破離(しゅはりと読む)について書いたのだが、短時間で簡単に書いたので、もう少し、詳しく調べて記事にしてみた。

どうも、守破離を論じる前の問題として、型とは何かという問題があるようだ。PMスタイルという型に関係するコンセプトを打ち出しながらいまさらの話で恐縮なのだが、いろいろと調べてみた。

東北大学名誉教授の源了圓先生は、型とは何かと考えるときに、形と型はどう異なるのか?がポイントだと指摘している。源先生によると、型を構成するものは心技体であり、

「型」とは、ある「形」が持続化の努力を経て洗練・完成したものであり、機能性・合理性・安定性を有し、一種の美をもっている。さらにそれは模範性と統合性を具えている。
【出典】http://www.sal.tohoku.ac.jp/80thanniv/minamoto.html

と指摘する。型が機能性、合理性、安定性、規範性、統合性というのは、分野に関わらず、型である限り必要な要素だというのは納得ができる。プロジェクトマネジメントで、米国プロジェクトマネジメント協会(PMI)により1987年に初めてまとめられたプロジェクトマネジメント標準と1996年にまとめられたPMBOK第1版を比較してみるとこれは非常によく分かる。

◆型とは家と間からなる

編集工学を唱える松岡正剛氏は、

型というものは、いろいろのものと一緒にある。一番わかりやすくいえば「家」と「間」とともにある。「家」は職能の伝統を守る門のことで、ここに家元も出てくれば、入門も破門も出てくる。
【出典】http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya1100.html

と指摘する。

家は上の説明の通りである。日本人にはPMIを家だと見做している人が少なくない。違うと思うが、まあ、そう考えたい気持ちはわからなくはない。

◆間とステークホルダマネジメント

説明しにくいのは間である。日本人にとって、「間が悪い」などという言葉があるように、間という概念は浸透している。しかし、説明となると難しい。そもそも、間というのはなぜ必要なのか?

間について調べていたところ、やはり、源先生の指摘がもっとも納得できた。著者なりにまとめてみると、

間というのは心技体の心の部分に関わるものである。いろいろな間があるが、たとえば、能の世阿弥は父である観阿弥の教えを成熟させていく中で、本質的な美の追求と、観客を本位とした美の実現という異なる二つの方向性を、いかにして両立させるかという問題に行き当たった。そこで、静止してはいるが全身全霊がこもった緊張状態である「せぬ隙」を生み出した。ただし、そうした内心の精神的な動きを観客に知られては具合が悪いので、自分自身が自分の心を隠すことが必要だと考えた。これが「無心」であり、無心ができて、心技体が完成する

というのが源先生の見解である。プロジェクトマネジメントの型を極める中で、この間というは意外と重要ではないかと思われる。ステークホルダマネジメントの本質は間にあるのではないかと思うからだ。

◆型の成熟と守破離

このように型というのはいろいろな視点がある。このほかにの見方もあると思うが、源先生の指摘のように「形」の延長線上にあるのだと思う。つまり、型を極めるというのは、形から入り、型を覚え、型を破り、新しいものを作っていくプロセスということになる。

このプロセスを示したのは、守破離である。このプロセスを、守破離という言葉で表現したのは、江戸時代の茶匠、川上不白の『不白筆記』である。

川上不白の『不白筆記』では、

守ハマモル、破ハヤブル、離ハハナルと申候。

とある。また、川上不白は『茶話集』で

守は下手、破は上手、離は名人

とも記している。

この考え方自体は禅の考え方で、川上不白が影響を受けたのではないかと推察される達人がいる。ひとりは上で名前の出てきた世阿弥で、『風姿花伝』で「序破急」を説いた。もう一人は歌集『利休百首』にて、

規矩作法 守り尽くして 破るとも 離るるとても 本を忘るるな」

と説いた千利休である。いずれにしても、まず最初は型を守り、次に型を崩してみる。そして、最終的に型から離れるというプロセスである。離れるというのが若干イメージしにくいが、離れるというのは松岡正剛氏の家が重要な要素であるという説明を考えるとよく分かる。家を離れるのだ。家を離れたからといって好き勝手にやってよいという話にはならない。千利休のいうように「本を忘るるな」である。すなわち、本質を見失うなということだ。

◆プロジェクトマネジメントにおける守

この守破離のプロセスは、プロジェクトマネジメントにおいても、展開でき、有用なものであると思われる。

まずは、守である。教えられた型を徹底して学ばなければならない。この学びの中では形が出発点になる。形を覚え、そこから型の意味を学んでいくのだ。スキルを「身につける」とかいうのは、この段階をさす言葉で、ここでは教えが必要である。

プロジェクトマネジメント道では、PMBOKの型を覚え、PMPの資格を取るというのが王道かもしれないが、PMBOKにこだわる必要はない。ある程度の範囲で型と認めているものであれば、何でもよい。たとえば、企業独自の流儀とか、業界独自の流儀とかでもよいわけだ。

◆プロジェクトマネジメントにおける破

次の「破」はその身に付いたスキルをつかって、行動をすることだ。あまり使わない言葉だが、身につけるに対して、「身を働かせる」といってもよい。落語で芸を揶揄する言葉に「箱入り」というのがあるが、この段階で箱からでなくてはならない。そのためには創造性や工夫が必要である。そして行動において重要なことは、その行動による影響をきちんと認識し、感じておくことが必要だ。

プロジェクトマネジメントでいえば、PMBOKを覚え、実際にやってみる中で、現実に合わないところがあれば、変えていく。たとえば、プロセスのインプットやアウトプットを変える、ツールを変えるといったこと。あるいは、プロセスそのものを破ることも破だといってもよいかもしれない。

ここで重要なことは、実際に変えてみたときにどのようなことが起こったかをしっかりと観察し、型の持つ意味をしっかりと理解することだと思う。それが上手に型を崩すことにつながっていく。

◆離とはキャリアである

そして、「離」は自由自在に行動すること。しかし、本質を踏み外してはならない。

能や茶道のような求道的なものとは少し違うかもしれないが、マネジメントにおいてもやはり、この本質なるものはあると思われる。本質に行き当たるには、何のために仕事をしているのか、そして何のためにマネジメントをするのかというところがポイントになるのだろう。

それはたぶん、顧客のためであったり、社会のためであったり、あるいは自身のためであったりする。著者はビジネスの世界ではそこまでに積み上げてきたキャリアを活かして仕事をする、あるいはキャリアをかけて仕事をするといったことが、離に当たるのではないかと思っている。ここで重要なことは、自由に行動するということは、すなわち、自身のキャリアをかけているのだということをきちんと認識することである。

キャリアが型に変わると言ってもよいと思う。

型を持たないスタイル、キャリアをかけて仕事をするというスタイル。これが「ひとつ上のプロマネ。」の目指しているところである。

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好川哲人

技術士&MBA 技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。