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2008年8月

2008年8月29日 (金)

PMサプリ137:本業に全身全霊を捧げることに喜びを覚えよ

われわれはプロである。その本業に全身全霊を捧げて、そこに喜びがわかないような者は、その本業から去らなければいけない(松下幸之助、経営者)

【成分】
◆プロフェッショナルの定義
◆結果オーライではない
◆フロー状態
◆フローに入るには経験自体を楽しむことが必要

【効用】
・PM体質改善
  リーダーシップ発揮、顧客感度アップ、リスク管理力アップ、創造力アップ
・PM力向上
  ピープルマネジメント力向上、チームをまとめる力の向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上、チームの士気向上

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2008年8月23日 (土)

PMサプリ136:ダイナミックなストーリーを語れ

ダイナミックなストーリーを語れ。それを社員と共有せよ(カルロス・ゴーン)

【効用】
・PM体質改善
  創造力アップ、バランス感覚の洗練、顧客感度アップ、問題解決能力向上、
・PM力向上
  チームをまとめる力の向上、ピープルマネジメント力向上、リスク対応力向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上、チームの士気向上

【成分】

◆WBSを見て納得できるか?
◆論理の限界を埋めるストーリー
◆ストーリーの制度化~いくつかの事例
◆ストーリーのプロジェクトマネジメントへの適用例

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2008年8月17日 (日)

【補助線】成果、仕事、作業

◆あるメルマガ読者からの質問

お盆休みにあるメルマガ読者から次のような質問を戴いた。質問の中では、プライベートなことも含めて、いろいろなことが書かれているので、編集して、質問だけを再構成する。

定型業務で改善をすることが重要なのはよく分かる。しかし、プロジェクトにおける改善というのはどのような意味があるのか?改善によって本来の達成できないような作業を可能にするというのはそれなりに分かるが、それはリスクを伴うことであって、一概によいとはいえないのではないか?(実際はもっと柔らかい文面でした)

メルマガやブログに、

 カイゼンによって、通常はできない目標にチャレンジしよう

ということをよく言っているが、こういう受け止め方をされているのかと知ってちょっと驚いた。なぜ、このように受け止めるのかと考えていて、あることに思い当たった。

◆仕事と作業

仕事と作業の違いがあまりきちんと認識されていないのではないか?

話は変わるが、WBSの「work」という言葉は日本では仕事という意味でも使うし、作業という意味でも使う。このためか、若干、混乱しているように思える。

言葉の定義としては、仕事というのは、解決すべき課題に対して答えを出すことであり、仕事を成し遂げるための手段が作業である。たとえば、

・市場調査をし、商品の機能を設計する

というのは仕事である。これに対して、

・収集されたデータの指定された分析方法で分析する

というのは作業である。ここで注意すべきことは、仕事と作業の間にも仮説があることだ。たとえば、市場データを収集してこういう方法で分析しようというのは、その分析方法によって市場ニーズが抽出できるという仮説を持っているからだ。仮説がないのは定型業務であり、仮説があるのが非定形業務であるといってもよいだろう。

◆成果とはなにか?

さて、もう一つ、考える要素がある。成果だ。成果というのは仕事によってもたらされる。つまり与えられた課題をどの程度解決したか、言い換えると仕事の品質が成果である。ここにも仮説が重要な役割を持っている。

仕事をしてどれだけの成果を上げるかどうかは、この仮説の妥当性によるといってもよい。たとえば、上で引き合いに出した商品開発で、市場調査をしなくても商品を作って市場投入することはできなくはない。しかし、それでは期待する成果が得られないと分かっているので、市場調査という仕事を行うのだ。

WBSというのは成果、仕事、作業(ワークパッケージレベル)の仮説を作るためのツールである。

※仮説について勉強したい人はこちら

仮説を制す者はマネジメントを制す

◆プロジェクトにおける改善の考え方

さて、改善の話に戻る。

この構造を考えればわかるように、カイゼンには2つのレベルがある。ひとつは、作業レベルの改善である。仕事を行うために、できるだけ無駄なく、作業を組み立てられるように改善をする。ここでは仕事として設定された課題を効率よく解決することが目的であるので、基本的にはリスクは小さくなることはあって、大きくなることはあってはならない。
ここで作業時間が減るので、時間ができる。プロジェクトの場合、この時間の使い方が問題なのだ。どのような仕事を組み合わせれば成果が最大化されるか、この仮説を徹底的にブラッシュアップするためにこの時間を使わなくてはならない。

それによってはじめて、期待以上の成果を上げることが可能になるし、成果目標をストレッチしても実現が可能になる。

2008年8月15日 (金)

PMサプリ135:仮説で作業を減らす

仮説から始めれば作業量は激減する(内田和成、ボストンコンサルティンググループ・シニアアドバイザー)

【効用】
・PM体質改善
  創造力アップ、計画力アップ、実行力向上、顧客説得力アップ、
  問題解決能力向上、リスク管理力アップ、
・PM力向上
  チームをまとめる力の向上、ビジネスセンスアップ、リスク対応力向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上、チームの士気向上

【成分】

◆仮説と網羅
◆仮説を使うメリット
◆トラブルでは仮説が勝負
◆プロジェクト計画と仮説

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2008年8月11日 (月)

【補助線】プロジェクトマネジャーから、プロジェティスタへ

プロジェティスタという考え方が注目を浴びている。きっかけになったのは、この本だ。

野田 稔+ミドルマネジメント研究会「中堅崩壊―ミドルマネジメント再生への提言」、ダイヤモンド社(2008)

プロジェティスタはイタリアで存在している職業で、一言でいえば、中小企業がプロジェクトを実施するときに、そのプロジェクトマネジメントを引き受ける。これにはイタリア独特の背景がある。イタリアでは、95%以上の企業が従業員9人以下という中小企業で、中小企業の輸出比率は60%に達する。イタリア企業の全体としての強みは、各企業間で縦横に張り巡らされた水平ネットワークであり、ネットワーク環境で活躍し、ある意味でこのネットワークを支えているのがプロジェティスタという職業だというわけだ。

日本もイタリアと同じように中小企業産業を支えている国であるが、大企業がビジネス中核を担い、中小企業はそこに対して技術を中心に部分的なコミットをするという産業構造を持つ日本ではプロジェティスタは成り立ちにくい職業である。しかし、その発想は大いに参考になる。実際に、野田先生が提案されているのも、企業内において、ミドルマネジメントのロールとしてプロジェティスタを位置づけることである。

このプロジェティスタという形は、プロジェクトマネジャーのロールモデルとして非常に卓越したものではないかと思う。

PMIがPMBOKやPMCDF(Project Managemet Competency Development Framework)だけを提示していた時代は、プロジェクトマネジャーは独立性の強い仕事だという風に感じていた人も多いと思う。現に日本企業でPMBOKに関心を持った企業のほとんどはそのようなプロジェクトマネジャー観を持っていたと思われる。

しかし、それは米国においてもあまり現実的な姿ではなく、また、PMIの標準を見ていてもその後、プログラムマネジメントやポートフォリオマネジメントにおける標準、さらには、これらすべてを束ねるOPM3という組織成熟度の標準が登場するに当たってはだんだん、見え方もプロジェクトマネジメントは組織ぐるみで行うものだという方向に変わってきている。

つまり、ガバナンスのマネジメントをきちんとして、プロジェクトマネジャー、プログラムマネジャー、ポートフォリオマネジャーといった「ロール」に、「プロジェクトマネジメント」、「プログラムマネジメント」、「ポートフォリオマネジメント」という「ツール」を使ってプロジェクトを組織としてマネジメントしていくという合理的なマネジメントシステムを構築し、戦略実行をしていこうという考え方が明確になってきた。

このような価値観は、従来からある日本の価値観に合わない点が出てきている。大きな問題は2つあるように思える。ひとつは、プログラムマネジメントやポートフォリオマネジメントといった組織マネジメントが含まれてくる部分は日本型経営の強みであった。ここを標準化してしまい、競争の対象から外してしまうのは、あまりにももったいない。米国は違うが、日本企業はこの部分のマネジメントに付加価値の源泉があるからだ。

そもそも、なぜ、こういう話になっているかと考えてみると、戦略経営が必要だということに尽きる。では、なぜ、戦略経営かと考えてみると、これはいくつかの理由はあるが、最大の理由はグローバルな競争である。グローバルな競争のためには戦略が必要である。これは事実だと思う。

ただし、では、日本型の組織では戦略経営が成り立たないかというとそんなことはない。トヨタがなによりもそれを証明しているし、たとえば、京都には日本市場に関心を持たず、いきなりグローバル市場に出ていき、マネジメントシステムを構築している会社がいくつもあるが、そのような企業の経営を見ていても、日本型経営のスタイルで戦略展開している。要するにこの議論は、戦略を持つべきであるということだけが問題であるにもかかわらず、抱き合わせ販売のように戦略達成のマネジメントをそこに押し付けられているところにあるのは明らかである。

つまり、戦略を作り、戦略実行ができるのであれば、どのような形でも構わないことになる。

二つ目の違和感は、個人にとってのやりがいの問題だ。米国のマネジメントシステムはキャリアアップをし、たくさんの報酬を得ることを望んでいるという価値観を基本にしている。ゆえに成果主義がうまく機能する。余談だが、そこに飽き足らなくなってくると、社会起業のような活動を始める。

日本人はこれではおそらくやりがいを感じない。米国のような価値観を持っている人もいるが、その人たちも50歳くらいまでに価値観が変わることが多いようだ。では日本人は何にやりがいを感じるかというと、自分にとってのおもしろさであり、また、他人から感謝される(認められる)仕事である。従来から、生涯現役でいたいという人は多くいた。野田先生の著書の表現を変えると、生涯、一プレイヤーでいようという人だ。

ところが、成果主義の中ではこれは通用しない。野田先生の指摘するようにミドルまできて、プレイヤーである人はあきらめ感があるというくらい深刻な状況になっている。

ここでドロップアウトしたくない人は、マネジメントの仕事に入っていく必要がある。ところがマネジメントの仕事にやりがいを感じる人は多くないし、不安感のようなものがあるのだと思う。そこで、マネジャーではなく、プレイングマネジャーを目指す。

つまり、マネジャーの役割もするが、同時にプレイヤーという役割も果たすという人だ。部下を持ち、部下を使ったプロジェクトをいくつか同時にマネジメントするというスタイルで仕事をしているミドルマネジャーがこれだ。日本の企業が上に述べたように、日本型経営スタイルでなんとか戦略実行をできているのは、プレイングマネジャーの役割が大きいことも間違いない。

このようなスタイルで仕事をしている人は、野田先生が指摘するように「プロジェティスタ」に極めて近いし、逆に、プロジェティスタをロールモデル(手本)とすると自分たちの価値観を活かし、成果を上げることが可能になるのではないかと思われる。

以上のように考えてみると、プロジェティスタが日本の企業の中で普及していくことは、ミドルマネジメントが復活し、競争力をとり戻るために不可欠だと思えてくる。また、その意味で、プロジェクトマネジャーは次のステージとしてプロジェティスタを目指すというのがよいだろう。さらに、著者が「ひとつ上のプロマネ。」といっているものの、ひとつの実現イメージは間違いなく、プロジェティスタである。

ということで、しばらく、プロジェティスタというのを追いかけてみたい。

2008年8月 9日 (土)

PMサプリ134:残業が問題解決を遅らせる

残業が問題解決を遅らせる(吉越浩一郎、トリンプ元社長)

【効用】

・PM体質改善
  リーダーシップ発揮、問題解決能力向上、計画力アップ、実行力アップ
・PM力向上
  ピープルマネジメント力向上、チームをまとめる力の向上、リスク対応力向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上、チームの士気向上

【成分】

◆粗い計画と残業
◆プロジェクトマネジメントにとって残業は諸悪の根源
◆残業ゼロがプロジェクトの成功をもたらす
◆もう一つの問題

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2008年8月 4日 (月)

【補助線】チームの求心力をどう構築するか~組織、プロジェクト、個人の目的と目標

◆プロジェクトの3大ステークホルダはそれぞれ、対立する目的を持つ

プロジェクトには多くのステークホルダがいる。プロジェクトマネジャーからみた場合の三大ステークホルダは、チーム、上位組織、顧客である。ここで言う顧客は、プロジェクトの成果物を活用して何らかの活用する人たちである。

プロジェクトの始まりには、プロジェクト憲章を作って、目的や成果目標、前提、制約を明確にしなさいという。たとえば、SIベンダーのSIプロジェクトを例にとって考えてみよう。顧客はプロジェクトを起こした目的があるはずだ。それは、最終顧客に対するサービスの向上かもしれないし、あるいは、原価の低減かもしれない。いずれにしても、単純に考えれば、SIベンダーに支払う費用が少なければ少ないほど、顧客の目的達成の度合いは大きくなることだけは間違いないだろう。

しかし、ベンダーにはベンダーの目的がある。利益を上げること、あるいは顧客との取引額を大きくするといったことだ。ここで早くも思惑が食い違う。顧客はお金を払いたくない。ベンダーは1円でもたくさんのお金をもらいたい。

さて、ここで視点を変えてプロジェクトチームのメンバーにはどのような目的があるのだろうか?プロジェクトをうまくやることによって、目標を達成し、評価を上げることが目標かもしれない。そのプロジェクトに新技術を適用し、習得することによって、その後のキャリアにプラスにすることが目的かもしれない。

いずれにしても、そんなに簡単に両立するようなものではない。

◆プロジェクトデザインとは結局のところ、目的の整合である

しかし、プロジェクトの目的は、このようにすべてのステークホルダの目的を満たすものでなくてはならない。プロジェクトのデザインをする中で、最も難しいのが、プロジェクトの目的の設定である。

多くの場合にはこれができないので、力関係で、まず、組織が顧客に対してなき、メンバーや下請けのベンダーが組織に対してなくという構図が描かれることが多い。これではだめだということで、なんとかしてみんなが満足する目的を見つけようという話になる。いわゆるWin-Winの関係というやつだ。

ここでよく考えなくてはならないのは、目的の整合のさせ方には2つがあることだ。ひとつは文字通り、Win-Winである。もう一つは共通点だけ取るという目的の設定の仕方だ。実は日本人は後者がとても得意である。

典型的な例を示そう。SIプロジェクトで、「ユーザが満足する品質の○○システムを作ろう」という目的の設定である。このような目的が100%プロジェクトの目的であるということはあり得ない。顧客もベンダーも戦略上の目的というのが必ずある。これだけで戦略上の目的が達成できればほとんど戦略などないと言ってもよい。

◆共通部分だけすり合わせするのはナンセンス

もうお分かりだと思う。このような部分的な目的設定をしておいて、あとは、属人的、あるいは場当たり的に適当にやっていこうというのが日本流なのだ。この場合、まず、戦略など顧みられることはない。ひたすら、当事者の満足やメンツといったものが重視される。要はそれで現場は丸く治まるのだ。何も目的の合わないところを公式にやりあって、勝ち負けをつける必要もないし、Win-Winなどどうでもよいという感覚である。

ただし、これをやると、間違いなく、最もつらい思いをするのはプロジェクトである。一生懸命にやっても評価されない、責任は全部押し付けられるなど、悲惨なことになる。非公式な意思決定をするのだから弱いものが泣くのは当然である。

これではどんなにチームビルディングをやってみても、チームの一体感は生まれてこない。プロジェクト初期の緩い間はまだよいが、後半を迎え、本来チームワークがもっとも重要な修羅場になってくると、間違いなく、チームは崩壊する。チームの一体感を引き出すためには、まず、目的設定のところにとことんこだわり、目的が合意できない限り、プロジェクトは開始しないくらいの覚悟を持つことが必要である。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。