オピニオン Feed

2006年11月 8日 (水)

【補助線】エナジー&エナジャイズ

よく、「元気を貰う」、「元気を与える」という言い方をするが、部下(メンバー)に元気を与えることはリーダーとして重要なことだ。

元気なリーダーには2タイプある。一つは、いつも元気で、周りのみんなも元気にするタイプのリーダーだ。もう一つはいつも元気だが、周りは元気のないタイプのリーダーだ。どうも、後者の方が多いような気がしている。

コンサルティングをしているとよく出会うのはこのタイプのプロジェクトだ。プロジェクトマネジャーやプロジェクトリーダーはやたらと元気で、如何にもバリバリと仕事をしている。しかし、プロジェクトはうまく行かない。メンバーに元気がない。失敗するプロジェクトチームの典型である。

かつて、GEのジャックウェルチはリーダーシップでは3つのEが大切だといっていた。

 Energy:仕事を成し遂げる情熱を持て
 Energize:組織の精神に自信を植えつけろ
 Edge:厳しい決断にもひるむな

Energyは自分が元気になることで、Energizeは周囲を元気にすることだ。もうひとつのEdgeはエッジを切るということで、際立った行動をすることだ。ウェルチはGEのリーダーにこの3つを求めた。

ところがこれだけでは成果が出ないことがわかってきた。活性化されているのに成果がでない。そこで、Eをもう一つ追加した。

 Execute:場外ホームランをかっ飛ばせ

である。実行性である。一説によると、ジェック・ウェルチは「経営は「実行」」を書いた羽ウェルの元CEOのラリー・ボシディの影響を受けてこのEを追加したという説もある。

また、詳しいことは、「プロジェクトリーダーシップの教科書」で書こうと思っているが、プロジェクトマネジャーはこの4つのEをリーダーシップとして持たなくてはならないと思う。

それはともかく、チームを元気付けるにはどうすればよいか?「笑力」といった話もあるが、少し違うように思う。

ビジョンを明確にし、任せることだ。

この逆をやっている人は多い。ビジョンをろくに示さない。仕事は任せない。しかし、これみよがしに、飲みにいく。プロジェクトワークプレイスに登場し、騒ぎながら、コミュニケーションと称したふれあいを行う。「はしゃいでいる」と周囲をしらけさせる。

これこそ、自分が元気だが、周りの元気を無くするリーダーである。こうはなりたくないものだ。

2006年10月28日 (土)

【補助線】おとなのマネジメント

PMBOK流のプロジェクトマネジメントは統制のツールであり、言ってしまえば、曖昧性を許容しないマネジメント論である。いわば、「子供のマネジメント」である。いくらリスクという形で不確実性を扱う概念を持ち込んでも、限界だなと思うことが時々ある。

マネジメントの世界でも内部統制が注目されるようになってきたので、そろそろ、このような領域に突入する可能性が高い。

話は変わるが株式市場では、村上ファンドの出現、西武事件、ライブドア事件など、この10年くらいで多くの出来事が重なり、経営者同士が親しいとか、資本ガバナンスとはかけ離れたわけの分からない株式の持合がだんだん崩れてきて、世界標準ルールに徐々に近づいてきた。これはよいことだと思う。

しかし、マネジメントプラットホームは本当にそうなのか?

内部統制で何をするかを考える前に、この命題を考えてみる必要がある。内部統制を強化しないとエンロンのような不祥事が生じるという単純な理屈だけで米国流に押し切きられてしまうと、根底から競争優位性を失うことになる。ちょうど、外交の世界をみているような感じになると思う。

いくらグローバル化するために共通のプラットホームが必要だからといって、米国流の統制が唯一のプラットホームであるはずはない。米国は人種の坩堝なので、米国流マネジメントはダイバーシティに強いというのは米国の経営学者が言っていることに過ぎない。

米国流が創り上げたグローバリズムに異議を唱える国があってもよいと思う。そのときに担保すべきなのは、公正さであり、ガバナンスや透明性ではないだろう。

2006年10月26日 (木)

【補助線】ダイバーシティについて考える

プロジェクトマネジメントはダイバーシティ(多様性)が前提になっている。

そもそも、ダイバーシティとは何か?日本語に訳すと多様性という。日本でビジネスの場面でダイバーシティという言葉が良く使われるのは女性の活用に関してである。雇用、職務の割り当て、マネジャーへの登用など、いろいろな場面で、女性の活用の必要が認識されており、それを実現することをダイバーシティという。

女性の活用は、ジェンダーダイバーシティという問題である。ダイバーシティには、性別に関するものだけではない。国籍、宗教、年齢、会社といった比較的明確なものから、専門性、価値観、仕事の仕方といった比較的曖昧なものまでいろいろある。

いつの時代にもある、「最近の若いものは、、、」というのもダイバーシティの一つだといえる。

ダイバーシティのない中でマネジメントを行うのは非常にたやすい。お互いにお互いを理解できている。従って、放っておいてもそれなりの成果がでる。

さすがにいまでは表立った意見としては少なくなってきたが、プロジェクトマネジメント導入の非効率性を指摘する意見は、このダイバーシティが存在しないことから生じている。お互いにそれなりに分かっており、「あうん」の呼吸で協力しあう。このような世界ではプロジェクトマネジメントなど必要ない。プロジェクトマネジャーに女性が少ないのも、おそらく、このことと無関係ではあるまい。

マネジメントオーバーヘッドというのは投資対効果で測るものなので、手間がかかる(投資が大きい)割には、効果が小さいという意見が出てくるのはある意味で必然である。

ところが、何らかの理由でダイバーシティが生じると、そうは行かない。よい例が、システム開発の分野で行われているオフショア開発だ。ここで日本人は最初何をしようとしたか?「同質化」である。つまり、ダイバーシティを殺すことによって、ダイバーシティのないマネジメントをしようとした。ある種の植民地的思想である。

ところがその限界に気がついてきた。それはそうだ。取引というのは相互作用を前提にしたものなので、一方のカルチャーに統一しようという図式は成り立つはずがない。そこで、ダイバーシティを重視する政策を取るようになってきた。彼らのやり方を重視するようになってきた。

ところが、過剰反応して任せっぱなしにするようになった。当然、うまく行かない。また、ガバナンスを渡してはダメだという議論になる。この繰り返しを延々としているように思う。欧米のダイバーシティマネジメントを上手に行う企業がうまく適応しているのとは対象的である。

この問題は意外と根が深いのではないかと思う。この背景には、日本人自身がダイバーシティを認める自らのベースラインを持たないことがあるような気がして仕方ない。

これは別の機会に。

2006年10月20日 (金)

【補助線】続・プロジェクトマネジメントはサイエンスかアートか

PM養成マガジンでは、この問題、今まで、2つの視点から議論してきた。

一つは、マネジメントと管理という視点である。

もう一つは、コンピテンシーと(テクニカル)スキルという視点である。

すごく乱暴な議論をすれば、

 プロジェクトマネジメントはテクニカルスキルを駆使してプロジェクト成果の管理行うものだ

と考えている人はプロジェクトマネジメントをサイエンスとして捉えている人である。

逆に、

 プロジェクトマネジメントはコンピテンシーを発揮してプロジェクト成果を出すような人のマネジメントをするものだ

と考えている人はプロジェクトマネジメントをアートとして捉えている人である。

僕自身はプロジェクトマネジメントはアート50%、サイエンス50%であると思っている。そして、自身のコミットメントとしては、コンサルティングにしろ、トレーニングにしろ、アートの部分に焦点を当てている。

この両輪のバランスが取れていないと、プロジェクトはとんでもない方向に進んでしまうだろう。

そろそろ、アートというのを全面に押し出していこうかな、、、

【補助線】プロジェクトマネジメントはサイエンスか、アートか

プロジェクトマネジメントはサイエンスかアートか。あまり議論されない問題である。

おそらく議論されない理由はみんながサイエンスだと思っているからだろう。

確かに、プロジェクトマネジメントの系譜をたどれば、少なくとも近代プロジェクトマネジメントはORなどの経営工学に立脚しており、まさしくサイエンスである。

しかし、マーケティングがアート50%、サイエンス50%といわれるように、マネジメントには何がしかにアートの要素がある。

では、一般的なマネジメントとプロジェクトマネジメントを比較したときに、どちらがアートの要素が大きいのか?これは明らかにプロジェクトマネジメントである。なぜかというと課題解決の不確実性の大きさが異なるからだ。

マーケティングにアートの要素が多いのも同じ理由だ。3Cとか、4Pのような分析をして、予測をして、満を期して上市した商品が外れる。と思えば、とりあえず、穴埋めに出しておけといった感じの商品が大ヒットする。

この不確実性の要因の多くは市場を形成する消費者の行動にある。一言でいえば、人は思わぬ行動を取る。良いと思っていない商品でも、友達が持っていればほしくなる。三重だけで消費をする、などなど。

プロジェクトマネジメントにおける不確実性も同じような構造をしている。大半の不確実性は「人に纏わること」から生まれている。

メンバーが気まぐれ、顧客がわがまま、上司は自分の出世しか考えていない、などなど。この不確実性をマネジメントするのはサイエンスだけでは無理だ。

アートが必要である。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。