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2021年4月 6日 (火)

【コンセプチュアルリーダー塾コラム】「コンセプチュアル」とは何か~本質は主観である

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◆概念とは何か

コンセプチュアルリーダー塾の活動を再開し、何回か「コンセプチュアル」ってどういう意味ですかという質問を受けました。コンセプチュアルスキルに関する活動をはじめて10年近くになりますが、当時と比較すると言葉自体はよく使われるようになってきましたが、明確な定義で普及してきているかというと、今でもはっきりしない人が多いようです。そこで、今回は「コンセプチュアル」の意味を解いてみたいと思います。

コンセプチュアルの名詞はコンセプト(concept)です。コンセプトという言葉は普通に使われるようになってきましたが、どういう意味かと聞かれると説明に困るという人が少なくないと思います。そもそもをいえば、コンセプトは概念、コンセプチュアルは概念的と日本語が当てられますが、概念ってどういう意味かと聞かれると説明に困る人が多いのではないかと思います。難しい「概念」だといえます。

例えば、デジタル大辞泉を調べると概念の説明として

「事物の本質をとらえる思考の形式」

だとした上で、「個々に共通な特徴が抽象によって抽出され、それ以外の性質は捨象されて構成される」という説明がされています。そして、これがconceptの説明だともされています。これらを参考に、このあとの議論のためには、ここでは概念を

「共通している点によって、それらを同じ種類だと判断できる考え」

と表現しておきます。

少し脱線しますが、概念の説明で興味深いのは、ブリタニカ国際大百科事典の説明で、

「一般にAの概念といえばAについての経験的事実内容ではなく、Aに関する論理的、言語的意味内容をさす」

という説明があることです。

日本の戦後に生まれた習癖の一つに論理を軽視し、経験を重視するというのがありますが、これによって経験的内容ではないことに関する意味の理解を邪魔しているように感じることがよくあります。だとすれば、これが概念という考え方が理解しにくい理由なのかもしれません。


◆概念と観念

さて、概念という言葉の説明はここまでにして、概念と似た言葉に観念があります。英語では、アイデア(idea)です。概念は上に述べたように「共通している点によって、それらを同じ種類だと判断できる考え」ですが、観念は同じように説明しますと

「物事に対する考え。物事について抱く考えや意識。見解」

だといえます。言い換えると、概念は物自体に関したもので、観念は認識(心の動き)を伴うものです。

コンセプチュアルスキルを発揮するためには、対象をコンセプチュアルに理解することが前提です。コンセプチュアルに理解し、それに対して問題解決を考えていくわけですが、そのためにポイントになるのが本質です。

ここで本質とは客観的なものなのか、主観的なものなのかという問題があります。コンセプチュアルスキル研修の中でこれを尋ねると、9割は客観的なものだと答えます。つまり、「本質は何ですか」という問いには正解があると思っているわけです。しかし、少し考えてみるとこれはあまり適切ではないと分かります。

例えば、コロナの中で飲食店が売上げが落ちしています。この本質的な理由を考えてみてください。真っ先に出てくるのは、営業時間の制約ですが、実はテイクアウトに力を入れでコロナ前より売上のが伸びている飲食店もありますし、通販で売上げを伸ばしている飲食店もあるようです。すると、時短営業が本質ではないという考え方もできます。例えば、料理のおいしさとか見栄えいう問題がコロナでクローズアップされたのかもしれません。

ちょっと脱線します。結局、この問題はどういう見方で捉えるかにより、正解はないのですが、正解があると信じている人が多いのには理由があります。それは、企業や組織としての固定された見方があることです。

組織文化の問題かもしれませんが、ものごとを一様に見るという習慣の中に置かれると、正解でもないことを正解だと思ってしまうのです。


◆本質は主観である

話を戻しましょう。

このように問題が起こったときに何が本質だと認識するかは個人的なものであり、まさに主観です。

もともとコンセプチュアルスキルは、1950年代に経営者に必要なスキルとして提唱されたものですが、経営者は客観的に状況を観察しなくてはならないと同時に、正解のない経営問題に対して主観的な決定をする必要があります。だから、コンセプチュアルスキルに主観が入るというのは当然のことなのです。

ここでもう一度言葉の問題に戻ります。概念と観念はconceptとideaという英語の日本語ですが、概念的、観念的となると少し変わります。概念的は上に述べたようにconceptualと対応しますが、conceptualの日本語として観念的という言葉が使われrうこともよくあります。これは英語のconceptという言葉のニュアンスがそういうもの、つまり客観だけではなく、主観的なものだからです。

一方で、概念的に把握するとは対象を客観的に理解するものであり、観念的に把握するとは対象についての認識を深めることです。つまり、コンセプチュアルスキルですべきことは、概念的に考えることではなく、観念的に考えることです。


◆PMstyleのコンセプチュアル、コンセプチュアルスキル、コンセプチュアルリーダー

このように考えると、conceptual skillのconceptualは概念的という意味よりは、観念的という日本語の方がしっくりきます。ただ、日本語としてはすでに概念化能力、概念化スキルという言葉が一般的になっていますので、PMstyleでは観念化スキルとか、観念化能力ではなく、コンセプチュアルスキルと呼んでいます。

つまり、PMstyleでコンセプチュアルと呼んでいるのは、

複雑にからみあう事象を概念化することにより、ものごとの関係性や本質を認識している状態

です。関係性や本質を見極めるのですが、それは理解することではなく、認識することである点に特徴があります。つまり、概念化ではなく、観念化なのです。

そして、コンセプチュアルを実現する能力をコンセプチュアルスキルと呼び、さらに、コンセプチュアルスキルを活用して、リーダー活動をしている人をコンセプチュアルリーダーと呼んでいます。つまり、コンセプチュアルリーダーとは

複雑にからみあう事象を概念化することにより、ものごとの関係性や本質を認識して、リーダーシップを発揮している人

のことです。

さらに、組織がVUCAの時代を乗り越えるには、組織のメンバー一人ひとりが組織の目指す方向と規範に対して適切な行動をとることが求められます。そのためには一人ひとりが組織の目指す方向や規範を理解し、その中でさまざまなものごとの関係性や本質を認識し、行動しなくてはなりません。このような考えに基づき、PMstyleでは

組織として、向かうべき方向や取り巻く環境の複雑性や本質を共通認識して、メンバーが主体的に考え、行動して、イノベーションや業務を行うことのできる組織

をコンセプチュアルな組織と呼んでいます。

コンセプチュアルな組織を実現するためには、経営者やマネジャーだけではなく、全員がコンセプチュアルリーダーになり、組織文化を構築していく必要があるのです。


◆PMstyleのコンセプチュアル思考のフレームワーク

これは、コンセプチュアル思考のフレームワークを見てもらえればよく分かります。コンセプチュアル思考は

・大局と分析
・抽象と具象
・主観と客観
・直観と論理
・長期と短期

の5つの軸を行き来して、考えていくというモデルになっています。

詳しくは、こちらの書籍をご参照ください。

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好川 哲人「コンセプチュアル思考」、 日本経済新聞出版社(2017)

https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532320623/opc-22/ref=nosim

上の例でいえば、どういう問題として解決していくかを考えるときに、客観的にデータを集めながら、分析し、その結果を主観的に認識するということを何度か繰り返すことになります。

これは、コンセプチュアル思考のフレームワークを決めるに当たって、かなりの数の事業責任者に話をお聞きして得られた結果になっています。どの軸を重視しているかは人や組織によって違いがありますが、インタビューした人のほぼ全員がこの5つの軸の思考を多少なりとも考えていますし、また管理職やスタッフから意見を求めるときに言われることもこの5つのどれかに位置づけできるということでした。

同時に識者の意見を聞くと、「結局、抽象と具象の行き来なのだろう」という人が多く、実際にコンセプチュアルスキルは抽象化スキルという人も少なくありませんでした。この問題もよく考えてみると、実は抽象化というのは主観と直観も混ざった思考ですので、当たり前だといえます。


◆コンセプチュアル思考の評価

コンセプチュアル思考に対する評価で、よく使い方が分からないという意見を頂くことがあります。確かに5軸あるので難しく感じるのは分かりますし、この順番で考えればうまくいくというフレームワークでもありません。

ただ、実施に行動レベルで考えると、例えば、どのタイミングで直感を使うのかは人によって違います。フレームワークの開発当初、手順を決めたフレームワークにしようとし、研修などに折り込んでいた時期がありますが、どうも複数の軸の組み合わせは既定すると却って使いにくいという結論に至りました。それで、フレームワークとして、各軸をバラバラに考えて、関連性や順序を整理しながら統合していくというものになりました。

2017年にコンセプチュアル思考の書籍を出したときには、この方法になっており、考えていく典型的なパターンをいくつか示した内容になっています。今後は、少し、このパターン集を増やしていこうと思っています。


◆コンセプチュアルリーダー塾

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コンセプチュアルリーダー塾
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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。