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2021年2月10日 (水)

【コンセプチュアル講座コラム】不確実な状況から脱したいなら、新しいことを受け入れる

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◆VUCAで躓く理由

多くの事業やプロジェクトがVUCAに対処するためによくやるのは、不確実な状況から脱し、安定的に進めていくために、新しいことを受け入れないことです。これは他の要素も似たようなもので、曖昧な状況から脱したいので、仮決めをしてそれに拘る。複雑性から逃れたいので、物事を単純化して、その範囲で考えるなどです。、一言でいえば、現状のやり方でできるように動こうとするわけで、それによってできるだけ、変動を小さくしようとします。

今、自分たちのいる世界がVUCAだと思って人は7~8割はいると思いますが、そう思っている人の9割くらいは上のような態度を取るのではないかと思います。

こういうスタンスは、結局、VUCAと正面から向き合っていないことになり、VUCAで躓く原因になります。実際に、VUCAであることはビジネスの前提だと言っているようなリーダーが、平気でこれまでのビジネスのやり方をして、失敗するのを見かけることは珍しいことではありません。


◆不確実性を脱するために、新しいことを受け入れない

このスタンスの中で、特に問題だと思うのが、不確実性な状況から脱するために、新しいことを受け入れないというスタンスです。日本の企業に限らず、社会はこれが極めて多いからです。

例えば、1年ほど前に、コロナで緊急事態宣言が出されたときに、全国民に10万円一律給付をするという政策が取られました。この政策を実施するに当たって打ち出したのが、マイナンバーカードによる給付でしたが、結局、速いと言われていたマイナンバーカードからの申請が圧倒的に遅くなり、失敗しました。

報道によると、その原因となったのは、マイナンバーカードからの申し込みに対して、従来通りのプロセスで処理をしていたことによるとされていました。これは、マイナンバーカードによる申請だったために、いくつかの問題が起こり、書類で申請するより給付が遅くなるという状況になってしまったと観がられます。その時点で、多くの自治体はまだまだ、トラブルは起こるだろうと考え、何が起こるか分からない状況から脱するために、新しい方法をやめようとして、書類申請に誘導していったと考えられます。この結果、給付完了は相当遅くなりました。


◆不確実性から逃げるのではなく、向き合う

もし、どんな問題が起こるかわならないという不確実性と向き合って、てマイナンバーカードからの申請を受ける業務プロセスを見直し、新しいプロセスを改善しながら、合理化する方向に持っていけば、おそらくもっと早く、給付できたと思いますし、マイナンバーカードの普及にもつながっていたと思われます。

この件が示していますように、不確実性の高い状況、もっといえば、VUCAな状況では、、これまでの実績とか、経験とは関係なく、新しい方法を考えるべきです。しかし、現実には人間の心理として、これ以上、状況をややこしくしたくないという思いが勝り、結局、創造的な対処は受け入れられません。最近では、ここにリスクという概念を持ち込んで、リスクを避けるためには新しい方法は避けるべきだという意見もよく聞きます。しかし、VUCAでは変動することはリスクではありません。正常なのです。


◆VUCAの特性

この問題をもう少し、掘り下げてみましょう。VUCAな状況では、変動が激しく、従来のやり方では対処できないというケースが圧倒的に多くなります。ここでいう従来のやり方とは

・経験に基づき
・先を予測し
・最適な方法を探す

というやり方です。これは現在多くの事業や業務で行っているやり方ですが、これに対してVUCAは

・これまでにない新しいことが起こり、経験が役に立たない
・変動があるので、先々の予測ができない
・そもそも、最適という概念がない

といった特性をもたらします。従来のやり方はまったく成り立たないのです。


◆VUCAへの対応の基本

このような特性の中で事業や仕事をスムーズに進めていくためには、目の前で起こっていることを注意深く観察し、その状況でできるだけ適切な対処を行いながら、環境やニーズの変動に気を配る。そして、変動したら、すぐにどう対処するかを決定し、その決定に従って進めていくというやり方が必要です。例えば、アジャイルはその方法の一つです。

このように進めていくと、上で触れた10万円配布のプロジェクトもずいぶん結果が変わってきたと思われます。例えば、デジタルで送られてきた申請情報を入力しなおすといったプロセスはすぐに無くなり、申請管理のシステムに移行する方法が考えられます。法律があるのでできないとか、法律改正じ時間がかかっていたという反論は聞こえてきそうですが、これは日常業務ではなく、プロジェクトです。他のことを止めても優先すべきなのです。少なくとも所用時間はずいぶん短くなったでしょう。

一般的に言えば、VUCAに対するには、これまでの思い込みを捨て、一から考えるのが近道です。今までと同じにやろうとすると、苦労は大きく、得られるものは少ないという状況になるのが一般的なのです。

しかし、この思い込みを捨てるには、壁があります。これは個人レベルだけではなく、組織のレベルでも同じです。この壁を打ち破るためには、カルチャーを変えていく必要があるのです。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。