【コンセプチュアル講座コラム】隠れている対案や選択肢を考える
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◆コロナ騒動を見ていて感じたこと
コロナをめぐってさまざまな点で、説明責任を果たせという意見をよく耳にします。これには若干違和感を覚えることがあります。そのような意見を聞いていると出した答えが正解である証拠を示せといっているように聞こえることが多いからです。
例えば、大きな話でいえば、感染防止と経済のバランスをどうとるかという問題があります。例えば、7~8割りの人が遅すぎたと思っているGO TOトラベルを一時停止すべきか、どうかという問題です。
実際に停止が表明されたときに、多くの人がなぜ今なのだと思いました。そして、特にマスコミはなぜ今なのかということをしつこく聞きました。これはマスコミという仕事の正確による部分が大きいのでしょう。きっと1ヵ月前に停止を決めたら、きっと旅行業や飲食店はやっと復活の兆しが見えたのにとかいって、批判するでしょう。彼らは批判をすることが仕事だからです。
一般の人でも、なぜ、ここまで引き延ばしたのか、理由をちゃんと説明しろと言っている人がたくさんいました。
◆正解のない問題は直観で決める
しかし、この問題は正解がないことは明らかです。強いて理由を説明するとすれば、直感ですということにあると思いますが、多くの人は納得しないでしょう。きっと表に出していないデータがあって、それを見て判断していると思っているのでしょう。
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長も、時々、エビデンスはないが、そう判断したという言い方をします。実際に、そうだと思います。直観であることも多いと思います。それが専門家の専門家足る所以でしょう。ここで注意して欲しいのは、ちょっかんには2種類あるということです。感じでは「直感」と「直観」と書きますが、前者は思い付き、後者は経験に基づく勘です。
実際に、欧米のようなデータを取っても、判明したことはまだまだ少なく、例えば、飲食から感染しているという仮説ひとつとっても、正しいかどうか分かりません。
このように専門家が直観も含めて、専門的な知見で判断したことを、ファクトとして使って行政を進めていくというのは、日本の行政の基本的なスキームですが、これによって発表される判断を市民はファクトとして考えてしまい、論理的に正しい正解だと思い込んでいくわけですが、今回は時間的な問題もあり、それすら満足にできていません。そこで、説明せよという意見が多く出てくるわけです。
それでもできるだけファクトを元に考えたいという専門家や政治家の良心があるので、対策が一見後手に回っているように見えるのでしょう。
◆直観であればその基本になる選択肢や対案がある
しかし、よく考えてみると、最後は直観にせよ、その判断をする選択肢、あるいは対案のようなものは必ずあります。それすらない直感だけで決めればでたらめですが、選択肢や対案を以って直観で決めれば専門家の判断です。
ただ、分科会も引き続き議事録は取らないという方針らしいので、選択肢や対案を説明以上に知ることは難しいのでしょう。この方針については議論もあるところだと思いますが、著者は経験的に発言が増すと思っていますので、いいことにします。
このときに、考えてみたいことがあります。それは、結論だけ言われたときに、どんな対案があったのだろう、どんな選択肢から選んだのだろうと考えることです。上で、GO TOトラベルの中断を引き合いに出しましたが、これにはどんな選択肢があったかと考えると、この選択の意味が分かってきます。
2000年になったくらいからロジカルシンキングが普及し、一般的になってきたので、すべての状況はMECEに表現できると考える人が増えてきました。ある状況をMECEで表現できるのは、ある前提の元での話です。前提が明確にできるなら、MECEに表現することができ、ロジカルシンキングできるわけです。説明を求めるというのは、背景にこのような発想があるからです。
◆前提が不明だとMECEはできない
ところが、VUCAな世界では前提を明確にすることができません。例えば、Go Toトラベルの例ではコロナの感染がどのように拡がっていくのか、収束するのかについて前提を決めるのは難しいと思われます。確率的な要素が入り、かつ非常に複雑なシステムだからです。
例えば、GoTo トラベルに関しては、1ヵ月くらい前には分科会で検討しています。その時の内容ははっきりしませんが、考えられる選択肢としては
・即座に全面的に停止
・首都圏が自粛要請したら、全面停止
・首都圏と関西圏、名古屋、福岡が自粛したら停止
・・・・
・感染が〇〇になったら即座に停止
・感染が〇〇になって1週間で停止
・感染が○○になったらクリスマスシーズンを終えたところで停止
・正月が終わったところで停止
・・・
・そのまま継続
位の選択視があったでしょう。そして、それぞれの場合に感染者の広がるスピードや病床の占有度がシミュレーションされていたのでしょう。ただし、前提が不明確なので、選択肢の適切さを評価することは難しいのです。
その結果、どこまで感染者が増えても大丈夫か、経済的な被害がどこまでこらえられるかといったことを、正解のない中で政治が考えて、直観により決めていると思われます。
◆ビジネスの世界ではこの対案や選択肢が隠れていることが多い
さて、政治の世界より、ある意味でもっとクローズなのがビジネスの世界です。例えば、顧客から突然の要求変更があったけど、どうも理由の説明があいまいである、あるいはあやふやだという状況に直面した人は少なくないでしょう。このような場合、とことん説明を迫ることが難しいことが珍しくありません。一昔前であれば、理不尽な理由で顧客が要求を変えたときにはこのようなことがよくありましたが、今は、仕方なしに変更したけど、論理的な説明はできないケースがよくあります。理由は想定していた前提条件がはっきりしていなかったり、曖昧になったりするためです。
このようなときには、選択肢や、対案の洞察をしてみると、顧客の置かれていう問題の全体像がつかめ、変動への対応を協力しながら進めていく流れを作れます。
このような思考はコンセプチュアル思考の基礎です。ぜひ、このような思考のスキルを身につけましょう。
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