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2020年8月27日 (木)

【コンセプチュアル講座コラム】AIはコンセプチュアルな思考ができるか

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Ai2◆シンギュラリティ

今回は珍しくAIの話を書いてみたいと思います。AIには「シンギュラリティ」という概念があります。簡単にいえば、AIが自分自身のフィードバックで高度化した能力を持ち、、人間に代わって文明の進歩の主役になるという概念です。この概念は、「収穫加速の法則」を考案したレイ・カーツワイルが2000年前後に提唱したもので、2010年代になってAIの手法としてディープラーニングが爆発的に普及したのを契機に注目されるようになってきました。そして、その実現性については未だに喧々諤々の議論が続いています。

例えば、数学者であり、「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」(東洋経済新報社、2018)で知られる新井紀子さんはシンギュラリティはもはや黒歴史であり、人々の間で実現しないことが共有され始めていると主張していますが、まだまだ、実現すると考えている人も少なくありません。


◆シンギュラリティの議論のポイント

この議論の難しいところは、本質的に未来学の範疇なので、AIの自己フィードバックによる高度化がレベルもスピードも現状では想像がつかないことにあると思いますが、ポイントになるのは汎用性です。シンギュラリティ実現の可否の議論の一つのポイントになっているのは、現時点では特定分野(単独の問題)でしか人間を超える能力を発揮していないAIが、複数の分野にまたがる形で思考できるかという問題です。

この議論は、与えられた問題の解決には威力を発揮するが、問題が与えられていないときに問題を見つけ出して能力を発揮するようになるのかという議論です。言い換えると今はクローズな場で能力を発揮しはじめたAIが、オープンな場でも機能するのかという議論です。この議論の答えは見えていないように思われます。


◆汎用AIはオープンな場で活動できるのか

AIの議論に限らず、クローズな場で活動するのと、オープンな場で活動するのは根本的に違う点があります。それは、クローズな活動は与えられた概念や問題に対して行うものですが、オープンな場ではそうはいきません。活動の中で新しい概念を生み出したり、問題を発見したりすることが不可欠です。

今のところ、AIは概念を考えることができるかどうかは分かりません。問題を見つけ出すことについても同様です。ディープラーニングは、パターン学習して、概念を認識できるようになることになっています。ただ、それが既存の概念の中から当てはまるものを探すだけなのか、問題は新しい概念を生み出せるのかは微妙です。

未来はともかくとして、今のところAIは情報として問題を与えられたときに問題解決ができるだけのものです。与えられた情報を使って、問題を見つけ出すことはできません。例えば、「ぴんとした耳」、「スラっとした立ち姿」、「丸まった尾」という特徴を持った動物という問題に対して、犬が60%、ネゴが30%、・・・といった問題解決はでき、さらに情報量が増えると精度が上がってきます。この部分は人間と同じですが、対象が動物でないときに認識できるかという問題があります。さらに、動物だとしても新しく発見された種類だとするとどうするのかという問題もあります。

与えられた情報に基づいて自ら考えることができるのが汎用AIですので、汎用AIでは概念の創出が可能だということになるかもしれませんが、このあたりが議論が分かれている理由の一つだと思われます。


◆人間とAIの協業

人間でもオープンな場で活動するのが得意な人と不得手な人がいます。シンギュラリティがきて、AIが人間に変わるというのはそういった人間を対象にした議論のように思えて仕方ありません。極論すれば、与えられた問題や概念の中でしか行動できない人間に変わるだろうという主張のように思えます。

ところがオープンな場で、概念的にものごとを考えるとか、新しい問題を探すといった活動が増えての人の方が圧倒的に多く、そもそも、AIが人間を置き換えるかどうかという議論はナンセンスだという気もします。ある種の人間の活動は置き換わるだろうし、ある種の人間の活動は置き換わらないだろうということです。

だとすれば、これからの人間とAIの分担、協業の姿としては、オープンな場で概念的な活動は人間が担い、概念を実際に展開していく部分はAIに任せるという姿がもっとも生産性や創造性が高くなると考えられます。

このような姿に近づいていくためには高いコンセプチュアルスキルが不可欠です。コンセプチュアル思考を身に付け、コンセプチュアルスキルを高めていきたいものです。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。