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2017年6月 8日 (木)

【コンセプチュアル思考によるイノベーション】第2回 抽象と具象の行き来でイノベーティブなコンセプトを作る

バックナンバー https://mat.lekumo.biz/ppf/conceptual/
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Kuroneko

◆宅急便の例

前回、お話ししましたように、本連載では、コンセプチュアル思考によってイノベーションを生み出していく方法を考えていきます。

まず最初は、抽象と具象の行き来を中心に考えてみたいと思います。この軸の使い方の一例として、前回はiPhoneを考えてみましたが、そこで述べました通り、組み合わせや工夫を抽象的なレベルで行うところにポイントがあるように思います。

これは言い換えると新しいコンセプトを作るということに他なりません。私がこの50年くらいで最高のサービスイノベーションだと考えているヤマト運輸の他急便を例にとって考えてみましょう。

ヤマト運輸の小倉昌男社長は小荷物配送に挑戦するかどうかを考えていました。悩みは、小荷物配送は大口運送に比べて効率が悪く、損益分岐点を超える荷物をいかに確保するかでした。

たまたま出張していたマンハッタンのある四つ辻の道路に米国の貨物運送会社ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)の4台の集配車が止まっているのを目にしました。これを見て小倉氏は区割りを小さくすれば小荷物配送の効率を上げることができることに気づいたのです。

◆抽象と具象を行き来し、イノベーティブなコンセプトを

ここから小荷物配送として宅急便のアイデアが固まっていくわけですが、重要なことは、宅急便のコンセプトとUPSサービスを見たことの関係です。宅急便はUPSの配送方法のアイデアをそのまま使ったわけではありません。むしろ、宅急便というコンセプトを探す中で、一つの事例として捉えています。

つまり、抽象化して、集配のエリアを小さくして効率よく集配するというコンセプトが固まっていきます。このように、抽象と具象を行き来して、イノベーティブなコンセプトを固めていったものと思われます。


◆コンセプトから多様な具体的アイデアを

ここでもう一つ重要なことは、このコンセプトがあったので、通常の他急便以外にもスキー用具を運ぶスキー宅急便、ゴルフ用具を運ぶゴルフ宅急便、冷凍の荷物の集配を行うクール宅急便など、さまざまなサービスを展開していることです。言い換えると、抽象的なコンセプトから、具体的なサービスをいくつも展開できているのです。

宅急便の本を読んでみると、具体的なサービスを設計する際には、具体的なアイデアを出して検討していくだけではなく、しばしばコンセプトに立ち戻り、妥当性の検討をしていることが分かります。

宅急便のサービスの特徴の一つはサービスの多様性だと思われますが、多様なサービスの展開ができている理由の一つは間違いなく、このようなコンセプチュアルな思考にあるといってよいでしょう。


◆なぜ、コンセプトが大切か

最後に、コンセプチュアル思考がなぜ重要かを整理しておきたいと思います。宅急便の例からも分かりますように、具体的なサービスのアイデアをすべて一人の担当者が生み出すわけではありません。広く展開していくにはさまざまな人が同じ方向性で絡んでいく必要があります。この方向性を示すのがコンセプトです。

宅急便の成功は極論すれば小倉氏の作ったコンセプトだといってもよいでしょう。つまり、コルこそが、上位レベルのマネジャーにコンセプチュアル思考が求められる理由だといえます。


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まず、基本については以下の2日講座があります。すでに開催が決定しています。

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  詳細・お申込 http://pmstyle.biz/smn/conceptual_practice.htm
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   1.本質を洞察し、応用する
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   3.コンセプチュアルに考える5つの思考
   4.洞察力を高める
   5.応用力を高める
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   7.コンセプチュアルが行動を変える        
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  場所:ちよだプラットフォームスクウェア(東京都千代田区)
  講師:好川哲人(エム・アンド・ティ コンサルティング代表)
  詳細・お申込 http://pmstyle.biz/smn/conceptual_practice2.htm
  主催 プロジェクトマネジメントオフィス
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
  【カリキュラム】                     
   1.本質の見つけ方
    (ワークショップ)本質を見極める
   2.本質を外さないコンセプトの作り方
    (ワークショップ)本質を包括するコンセプトを作る
   3.要求の本質を見極める
    (ワークショップ)コンセプト実現のための本質的要求を探す
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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。