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2017年5月11日 (木)

【コンセプチュアル思考によるイノベーション】第1回 なぜ、イノベーションが生まれないのか

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Conceptual1_2◆イノベーションが生まれない3つの理由

イノベーションの創出の役割を担いながら、うまくできていない人やチームは少なくありません。時々、そのような人と話をさせていただくことがありますが、共通の特徴がいくつかあるように思います。中でも強く感じるのは

(1)具体的な考えから抜け出せない
(2)論理的であることにこだわる
(3)客観的であることにこだわる

の3つです。お会いする人に技術者が多いのもあるのでしょうが、それ以外の人で商品やサービスの開発に関わっている人に少なからず見られる傾向のように感じます。

このような傾向があるとなぜイノベーションが生まれにくいかは、イノベーションは新しい組み合わせであると考えてみるとよくわかります。日本語では「革新」ではなく、中国語では「創新」と訳しました。この2つの違いです。

◆iPhoneは如何に生まれたか

例えばスティーブ・ジョブズは、フューチャーフォンと携帯型デジタル音楽プレイヤー、パームトップのコンピュータの3つの既存のアイデアをを組み合わせてスマートフォンを作ったわけですが、具体的な製品をくっつけたわけではありません。例えば、PDAに音楽プレイヤーの機能を持たせ、電話機能を付ければ、もどきは技術的な問題を解決すればできたと思いますが、今のように膨大な市場を構成する商品にはならなかったでしょう。

ジョブズは、3つの製品アイデアを一旦、抽象化し、本質的に両者が提供しているものは何かと考え、その上で組み合わせると何ができるかと考えました。いわるるコンセプトです。そして、そのコンセプトを具体的な商品に落とし込んでいきました。

ジョブズの「本日、アップルは電話を再発明する」というプレゼンテーションで知られるように「タッチ操作のできるワイドスクリーンのiPod」「革命的な携帯電話」「インターネットコミュニケーター」の3つを統合した新しい電話iPhoneを作ったわけです。


◆既存のアイデアの組み合わせで新しいものを生み出す思考法

重要なことは、iPhoneが携帯型デジタル音楽プレイヤーとしても、携帯電話としても、パームトップコンピュータとしても全く新しいもので、それが3つのアイデアの組み合わせで生まれていることです。これはiPod、携帯電話、Palmといった具体的な商品の機能を組み合わせてもできなかったと思われます。

この組み合わせを行うには、今まで述べてきたように、

(1)具体と抽象を行き来し、抽象的なレベルでの組み合わせを行う

以外にも

(2)論理的な関係を超えて直観的にものごとを考える
(3)好き嫌いにこだわる

といった姿勢が重要です。これは、日本人は苦手とする人が多いですし、組織によっては好ましくないと考えています

これでは、新しい組み合わせによるイノベーションは生まれないでしょう。実はこれらの思考法は私の提唱している「コンセプチュアル思考」の一部です。


◆本連載の進め方

本連載では、コンセプチュアル思考によってイノベーションを生み出していく方法を解説したいと思います。

なお、今年1月に日本経済新聞出版社から「コンセプチュアル思考」の本を出しましたので、併せてお読みいただけると本連載がより役立つものになると思います。

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好川 哲人「コンセプチュアル思考」、 日本経済新聞出版社(2017)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532320623/opc-22/ref=nosim
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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。