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2012年11月 2日 (金)

【戦略ノート297】続・「センス」について考える

Sense◆はじめに

この戦略ノートは、

【戦略ノート269】「センス」について考える

の続編です。

 

◆正しい努力

日本人は、努力することをよいことだと考える。このこと自体は、間違っていないと思う。しかし、前提がある。それは、正しい努力であればという前提である。

では、正しいかどうかをどのようにして判断すればよいのだろうか?それは、相手、あるいは周囲の期待に応えるために意味のある努力であるかどうかだと思う。同時に、自分自身が期待に応える価値があると考えていることが必要である。この両方が揃って、初めて正しい努力であるといえる。



◆最低の努力で相手の期待に応えることができる

努力の話をしたいわけではない。しかし、センスの問題を議論するには、努力の話を抜きにして語れない。センスがいいとは、

最低の努力で相手の期待に応えることができる

ことだからだ。

さらに、ここにもう一つの要素がある。それは、サプライズである。つまり、相手の期待に応えるだけではなく、相手の想像を超えた方法で期待に応えることだ。

戦略ノート269で江川卓の27球で終わらせるという話をした。ピッチャーに対するファンの期待は、完全試合だろう。それを次々と三球三振を取っていくという方法で実現するというのは、究極の期待かもしれない。

が、27球で終わるというのは、あまり期待する人はいないだろう。僕も江川のインタビューを読んだときに、驚いた。しかし、本当に27球で終わると、27人の三球三振より、はるかに感動は大きいと思う。かつ、これは、江川卓自身の理想でもある。

これができることが、ピッチャーとして最高のセンスだと言えよう。


◆プロジェクトマネジャーの正しい行動

プロジェクトの議論に戻る。プロジェクトマネジャーのセンスは、すべての主要ステークホルダの要求に応えることである。ステークホルダには、利害関係の対立があるので、これは相当に困難なことである。センスのよいプロジェクトマネジャーはこれをやってのける。たとえば、顧客が無償の要件追加を言ってきた。当然、上位組織はそれは受けれないという話になる。

一昔前は、プロジェクトマネジャーが何とかしろと言っていたような気がするが、今は、エスカレーションが推奨されているので、とりあえず、形だけ顧客に抵抗したら、自分の一存では決めれないといって、上位組織にエスカレーションするプロジェクトマネジャーが多い。そして、そこでは当該プロジェクトに囚われることなく、取引全般を見すえた話し合いが行われ、両社の利害の調整が行われる。交渉範囲はプロジェクトマネジャーの権限の外にあり、その意味で、エスカレーションするのは正しい行動だ。


◆プロジェクトマネジャーのセンスのよい行動

ところが、まれに、自分自身でこういう困難な交渉をまとめてしまうプロジェクトマネジャーがいる。何ができるかといえば、まず、顧客と上位組織の期待を明確に把握できている。そして、その期待を考えたときに落としどころを考えることができる。

相手の期待とは何かと考えたときに、実は目標値ではない。競争型の交渉の中に、抵抗点という概念がある。これ以下だと買えないというポイントだが、この抵抗点をうまく見つけることができるとこういう交渉をまとめることができる。

【インターパーソナルスキル・エンジン】第6回 コンフリクトの解消と合意形成(2)~競争と譲歩



◆相手の期待を超える

まあ、だいたいこういう芸当ができるのはセンスがよい人だが、本当にセンスがよいプロジェクトマネジャーは、日ごろから顧客や上司、あるいはメンバーを観察しており、問題が発生したときに、抵抗点を設定できる。かつ、問題解決の中でステークホルダと話をしていく中で、抵抗点を刷り込んだり、微調整したりできる。これができると、相手の期待を超える行動を取ることができる。

ことが起こってから情報収集を行なっているようでは、相手を満足させることはできても、期待を超えることはできない。

センスのよいプロジェクトマネジャーは日常活動の中で、常に情報に対してアンテナを立て、また、人の行動を観察しているので、手抜きができるだの。このような努力は、意味のある努力である。

つまり、センスをよくするには、日常的な活動の中で意味のある努力は何かを探し、その努力をすること。これに尽きる。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。