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2009年9月 8日 (火)

PMサプリ立読み「PMサプリ186:速くやるために準備に時間をとる」

速くやりたい。だからこそ、準備に時間をかける(大木豊成、エクスアーツ常務取締役)

【効用】
・PM体質改善
  創造力アップ、バランス感覚の洗練、顧客感度アップ、問題解決能力向上、
・PM力向上
  チームをまとめる力の向上、ピープルマネジメント力向上、リスク対応力向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上、チームの士気向上

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◆まず、「やらないこと」を決める

大木豊成氏はYahoo!BBの立ち上げのオペレーションを指揮された人で、その時に経験
を一冊の本「ソフトバンク超流速断仕事術」(ダイヤモンド社、2009)という本にま
とめられている。今回のフレーズは、その本からのフレーズである。

この本、非常に共感する部分の多い本であるので、できればぜひ、読んでみてほしい
のだが、共感を一言で言えば、戦略的なプロジェクトの進め方が必要だと説いている
点である。

戦略的なプロジェクトの進め方をするというと、現場で仕事をしている人には大仰に
聞こえるかもしれないが、そんな難しいことではない。一言でいえば、

プロジェクトを行う目的を明確にして、目的実現のために必要のないことは一切やら
ないこと

である。大木氏は、

まず、「やらないこと」を決める

ことを勧めている。PMBOKでいうところの「アウト・オブ・スコープ」である。
しかし、大木氏も指摘しているが、実際にやらないことを決めているプロジェクトマ
ネジャーは少ない。難しいからだ。

◆クイズ

ここでクイズ。昼下がり、主婦のあなたは夕飯のことを考えていた。今日はシチュー
にするつもりだ。夫に好きな魚介類のクリームシチューにするか、子供の好きなビー
フシチューにするか、迷っていた。ここで、あなたはどういう行動をとりますか?

(1)とりあえず、買い物にいって、材料の質を見て考える
(2)とりあえず、買い物にいって、どちらでも作れるだけの材料を買ってくる
(3)自分は魚介類のクリームシチューを食べたいので、魚介類のクリームシチュー
      に決めて買い物に出かける
(4)仕事中の夫と授業中の子供にメールをして、意見調整を行い、決めた後で買い
   物にでかける。しかし、返事がいつになるかわからないので、とりあえず、共
   通の下ごしらえを始める
(5)今日は夫を喜ばせることに決めて、魚介類のクリームシチューに決めた上で、
   買い物に出かける

(1)、(2)は普通に考えると、やらなくてよいことをやっている。(3)は一見、
無駄がないように見えるが、料理をしている途中で子供が学校から帰ってきて、駄々
をこねて、結局、ビーフシチューに変更、「じゃあ、変えてあげるからお使いに行っ
てきて」といったことになりかねない。(4)も一見、合理的な行動に見えるが、そ
もそも、どちらのシチューにするかという意見調整は意味がない。後でどちらかも文
句を言われないための言い訳作りに過ぎない。

正解は(5)。目的を決めて、その目的のために行動する。もちろん、子供に「お父
さん、最近、夏ばて気味なので、元気にしてあげるのに協力してね」くらいのコミュ
ニケーションはあってもよい。

◆やらないことを決めるには、目的の熟考が重要

このクイズから分かるように、やらないことを決めるには、成果物を決めればよいよ
うに思えるのだが、そうとは言い切れない。確かに成果物が確定できればそれに向か
って一直線に進むことができるのだが、何らかの事情で成果物を変更せざるを得ない
ときに自由度がなくなり、大変なことになる。下手をすれば、一からやり直しだ。

これに対して、目的を決め、その目的を実現するように動く場合には、その目的に対
して成果物を決めることができるので、無駄なことはしなくてもよい。そして、もっ
と重要なことは、成果物に対して、変更が必要になったときに、自由度が出てくるこ
とだ。

たとえば、(5)で子供がいやだといった。じゃあ、野菜のスープにして、魚介を使
ってパエリアを作れば、子供も納得するし、夫も好きだ。というような変更が可能に
なるわけだ。

ここで注意しておかなくてはならないのは、シチューを作ることが目的ではないとい
うことをよく認識しておくことだ。主目的は、「栄養のある夕食をとる」ことであっ
て、そこに副目的として、「夫が喜ぶ」という目的が設定される。そして、この目的
を実現するために、魚介類のシチューという目標を設定するが、目標は目的が実現で
きるのであれば、変更してもかまわない。

◆熟考の時間を十分にとる

このようにプロジェクトを進めていくには、目的を熟考することと、その目的実現の
方法を十分に検討し、その後に始めることである。つまり、準備の時間を十分にとる。
現実には、ステークホルダから速くしてほしいという催促が飛んでくるので、たいへ
ん難しいのだが、それをクリアすることは難しいことではない。準備にステークホル
ダを巻き込んでしまうのだ。

それによって、意見調整することもできるし、実施に対しての協力を得ることもでき
る。たとえば、半年のプロジェクトで最初の1ヶ月を準備にかけても、ステークホル
ダの協力を得て5ヶ月でやりきってしまえば、その方がはるかに高品質の成果を得る
ことができるだろう。

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コメント

好川さま
著書を取り上げていただき、大変ありがとうございます。
今後とも、何とぞよろしくお願いいたします。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。