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2009年1月 6日 (火)

【補助線】指導、支援、奉仕

以前からずっと気になっていた。いよいよ、ロバート・グリーンフィールドの著作集が翻訳されたので、この記事を書いておく。

ロバート・グリーンリーフ(金井壽宏監訳、金井真弓訳)「サーバントリーダーシップ」、英治出版(2008)

時代は10年以上前に戻る。プライベートには金井先生のゼミにいっている時期だ。国の中小企業施策の変更というのがあって、「指導から支援に」という方向性が打ち出された。

日本語の指導という言葉はもっと広い意味を含んでいると思うが、少なくとも役人用語では、命令に近い語感がある。自分たちの提供するパブリックサービスを利用する前提が指導に従っていることだからだ(悪いといっているわけではない。自分たちの言うとおりにしていればうまくいくというのは一つの見識である)。

それが、支援に変わった。次のステップに行ったと受け止めた人もいたが、それまでの政策がうまくいかなかったので投げ出したと受け止めた人もいた。いずれにしても、国の施策を活用する場合にも経営政策の実質的な決定権が中小企業側に移った。所定の条件をクリアしていれば、自分自身で経営のやり方を決めてもらえば、それに対してパブリックサービスを提供しますという宣言である。

同時に自分たちの経営の方法を自分たちで決める方法を指導するということをやりだしたので、実態としてどのくらい変わったかはわからないが、僕は格段の進歩であると思った。実力のある中小企業は大きく変わることができるからだ。これが支援型のリーダーシップである。

現在に戻って、たとえば、宮崎県の東国原知事。彼は地元の企業(住民)への奉仕者である。公務員はパブリックサーバントであるとよく言うが、現実にはなかなかできない。それをいとも簡単にやっているところに、支持率の高さがあるように思う。彼が知事になったころ、マスコミ(特に東京のテレビ)は、最初は仕方ないけど、早く指導的なリーダーシップを発揮すべきだとそろって論評した。一方で、中央官庁の公務員を独断的だと批判する識者が要早く官僚的民主主義をやれと言っていたわけだ。

このときにつくづく思ったのは、日本人には「サーバント」という概念は理解されないということだ。しかし、宮崎県の状況をみていると時間はかかるが、やはり効果はあるようだ。

冒頭の話に戻るが、僕がサーバントリーダーシップという概念を初めて知ったのは、金井先生のゼミで、ちょうど、中小企業施策が指導から支援に変わったころだった。このときに、中小企業施策は奉仕でないとうまくいかないだろうと思ったものだ。ただ、奉仕を施策にすると、支援よりも一層、時間もかかるし、格差が大きくなる。どうするのだろうかと思っていたが、やはり、支援に踏みとどまっている。

さて、話を企業に移す。

この5年くらいで、牽引型のリーダーシップから、支援型のリーダーシップにメインストリームが移っているように見える。これもやりたくてやっているというよりも、中小企業政策を同じように単に経営者が先が見えなくなってきただけではないかと思うが、それは別にして望ましい方向である。

そこで、プロジェクトマネジメントとか、ファシリテーションとか、コーチングとか現場のマネジメントにスポットを当てているが、これは権限委譲をしているにすぎない。つまり、指導と呼ぼうが、支援と呼ぼうが、組織的に上の立場から、自分の目標を達成するための手段を変えているにすぎない。それが経営だと開き直る人も多いと思うが、松下幸之助、井深大、本田宗一郎がどうして今のような世界に冠たる大企業を作りえたのかを考えてみてほしい。彼らは明らかにサーバントリーダーシップを発揮していた。

日本人には奉仕という概念は見えにくい。指導にしろ、支援にしろ、目的語があって行動として完結するが、奉仕という考え方はもともと神(キリスト)への奉仕である。詳しいことはわからないが松下や井深、本田はキリスト教に奉仕していたわけではないように思う。日本はヨロズの神の国である。彼らが奉仕していた神は、顧客であり、技術ではないだろうか?

指導から支援への変革で生まれるものは自立性である。支援から奉仕の変革で生まれるものは、自主性である。

すべての企業にサーバントリーダーシップが適するとは思わないが、少なくともサーバントリーダーシップを標ぼうするのであれば、マネジメントは支援ではなく、奉仕の精神を持ってほしいものだ。

最後にプロジェクトマネジメントに触れておこう。この議論は
 指導=守
 支援=破
 奉仕=離
という感じではないかと思う。

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コメント

まず考え方・生き方の基本に横たわっている「キリスト教」の理解が不足したご意見と拝しました。表面的なキリスト教への知識だけでは理解しきれないと思います。


コメントありがとうございます。自覚しています。

キリスト教に限らず、宗教を背景にしたマネジメント論は難しいですね。おっしゃるとおり、頭で、表面的にしか理解できない部分があります。

サーバントリーダーシップが注目されている背景には、ご指摘の生き方の問題があるのだと思います。提唱者のグリーンリーフがヘルマン・ヘッセが東方巡礼の「レーオ」にヒントを得たというエピソードだと紹介していますが、その本質は、人としてのあり方、生き方がリーダーシップにつながっていくというところなのだろうと思います。

最初にこの概念を知ったのは、ケン・ブランチャードの「新・リーダーシップ教本」だったのですが、最初に読んだときにはなんとも違和感を感じたのを覚えています。

ケン・ブランチャード、フィル・ホッジス、ビル・ハイベルス(小林薫訳)「新・リーダーシップ教本―信頼と真心のマネジメント」、生産性出版(2000)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4820116916/opc-22/ref=nosim

それに比べると、グリーンリーフのいっていることはまだすんなりと入ってきますが、どれだけ理解できているかは怪しいです。

というよりも、生きていく中で理解していくものなのだろうと思います。僕はキリスト教の信者ではありませんが、なんとなくグリーンリーフの領域にはいけるのではないかと思っています。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。