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2007年11月20日 (火)

【補助線】イニシエーション

PMBOKの立ち上げプロセスは、英語では「Initiation」である。イニシエーションは通過儀礼という意味が一般的である。通過儀礼とは、出生、成人、結婚、死などの人間が成長していく過程で、次なる段階の期間に新しい意味を付与する儀礼のことだ。

日本で一般的にイニシエーションという言葉が認知されたのは、オーム真理教が話題になったときだと思う。彼らはキリスト教徒同じく入信の儀式をイニシエーションと言っていた。オーム事件の後で、そのイメージの悪ささからか、イニシエーションに「洗脳」という言葉があてられるようになってきて、あまりよくないイメージがある。

しかし、宗教の中でもイニシエーションというのは重要な意味を持っている。キリスト教では、神と人間とを仲介し、神の恵みを人間に与える秘跡(あるいは、洗礼)と呼ばれる儀式があるが、これがイニシエーションである。

神戸大学の金井壽宏先生は、これに加えて、

 そこから始まる

という意味を持つと指摘し、新卒社員が入社時の「リアリティ・ショック」を乗り越えるには(イニシエーション)が必要だと述べている。

米国の産業組織心理学者D・フェルドマンは、

・「職場集団への加入儀礼(グループ・イニシエーション)」
・「職場の仕事上の課題面での加入儀礼(タスク・イニシエーション)」

という二つのイニシエーションがあると指摘している。これは、導入研修などのOff JTの話ではなく、配属先の職場になじむための二つの課題である。

また、慶応大学の榊原清則先生は、フェルドマンの説をさらに具体的にし、

会社に入ったときに,個人は組織に適応し,その組織文化を内面化しようとする。その際に個人は2種類のイニシエーションに直面する。第1は,新しい世界での仕事に慣れ,課題がうまくこなせるかどうかという「課題」イニシエーションである。第2は,その世界で出会う新しい人々と文化にうまく溶け込めるかどうかという「人・文化」イニシエーションである。これらのイニシエーションを通過することで,個人は組織に適応し社会化していく。

と指摘している。

このようにイニシエーションというのは極めて意味の深い言葉であり、儀式である。

これをPMBOKの日本語版では「立ち上げ」という言葉で片付けている。これでは、プロジェクトを巡るメンバーの不適合や不全が起こっても全く不思議ではない。PMBOKの訳語の適切さをめぐってはいろいろな議論があるが、すべての訳語の中で、これが一番ひどいのではないかと僕は思っている。

スコープは訳をあきらめて、スコープのままで、プロジェクトマネジメントを行う組織の中では普通に使われるようになってきた。その例に学び、イニシエーションをカタカナ英語に変えてほしい。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。