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2007年10月

2007年10月29日 (月)

【補助線】プロジェクトマネジメント組織のRRAA

◆RRAA

前回、PMOがプロジェクトマネジメントのオーナーシップを持つべきであるという話をしたが、今回は、この点も含めて、PMOがどのような権限と責任を持つべきかを議論してみた。

日本ではあまり使われないが、組織のガバナンスを定義する方法として、RRAAというフレームがある。

 Role(役割)
 Responsibility(実行責任)
 Accountability(説明責任)
 Authority(権限)

である。ステークホルダ分析などの場合にも使われることがある。このフレームに従って、PMOを定義してみよう。

◆PMOのRRAA

最初はいわゆるPMOのRRAAについて考えてみよう。「いわゆる」という書き方が気持ち悪ければ、この後で述べるCPMO(全社PMO)によって確立されたプロジェクトのマネジメントの標準の適用による効果を見ながら、事業部、地域などの範囲で、プロジェクトマネジメント推進の戦術的なマスタープランに対する責任を持つPMOである。

PMOのRRAAは

・Role(役割):PMO
・Responsibility(実行責任):プロジェクトマネジメント遂行の戦術的なマスタープランとリソースマネジメント
・Accountability(説明責任):CPMOと事業部マネジャーへの報告
・Authority(権限):年次の全社マスターポートフォリオ、および、プロジェクト資源予算計画の策定と調整

と定義できる。

◆CPMOのRRAA

次に、CPMOについては

・Role(役割):CPMO
・Responsibility(実行責任):全社におけるビジョン、ミッション、ゴール、目的など、戦略的マスタープラン
・Accountability(説明責任):CEOへの直接報告
・Authority(権限):年次の全社マスターポートフォリオ、および、プロジェクト資源予算計画のレビューと承認

と定義できる。

基本的には、CPMOとPMOでほぼガバナンスが決まってくるが、もうひとつ、PSOの定義を決めておくと混乱が少なくなる。

◆PSOのRRAA

PSOのRRAAは

・Role(役割):PSO
・Responsibility(実行責任):プロジェクトマネジメント遂行のオペレーショナルマスタープランとプロジェクトポーフォトリオマネジメント
・Accountability(説明責任):PMOとラインマネジャーへの報告
・Authority(権限):プロジェクトポートフォリオのオペレーションプランと予算要求の承認

と定義できる。

【補助線】リーダーシップの旅

すごいマネジャーの続編。

「すごい人」がリーダーになるのではなく、「すごいことを考えた・した人」がリーダーとなってゆくと考え、その過程を旅になぞらえる「リーダーシップの旅」と呼ぶ考え方がある。

例えば、野田智義先生、金井嘉宏先生の「リーダーシップの旅 見えないものを見る」では、リーダーシップを、「見えないものを」を見通す能力であると捉えている。ある種のビジョンである。そして、そのビジョンを実現するために、まず自分で自分自身のリーダーとなることから旅が始まるとしている(リード・ザ・セルフ)。

次に、そしてそのビジョンに対して周囲の人に共鳴しする(リード・ザ・ピープル)。それが次第に社会全体に広がってゆく(リード・ザ・ソサイエティ)。このような過程でリーダーが生まれていくと述べている。

また、最近、出た本で、「シンクロニシティ 未来をつくるリーダーシップ」というリーダーシップの名著がある。

この本も著者である社会起業家ジョセフ・ジャウォースキー氏が、自身のリーダーシップの旅の様子を書いた自叙伝である。リーダーシップの旅を知るには、このあたりの本を読まれるとよいだろう。

先日、PMstyleプライベートセミナーで、「できる組織の条件」という議論をした。好川が考えているできる組織の条件は、新入社員も含めて、一人ひとりの社員(組織のメンバー)がリーダーシップの旅をしていることではないかと思う。

先日、あるコンシューマー商品メーカの社長から面白い話を聞いた。商品開発のプロジェクトに新入社員を「馴らす」つもりで突っ込んだ。もちろん、戦力になろうなど期待していない。ところが、その新入社員は偶然にもその商品の長年のユーザであった。なんと、プロジェクトの誰よりも使用経験が長かったそうだ。

普通であれば、プロジェクトの中の誰かが彼からうまく意見を引き出し、進めて行くのだろうが、この新入社員は明確な夢を持ってこの会社に入ってきたそうだ。そして、どんどんと自分の意見をプロジェクトリーダーにぶっつけた。最初は、疎んじられていたが、だんだん、プロジェクトがその新入社員のペースに巻き込まれていき、結果的に、その新入社員の発案した主だった意見はほぼ商品に採用された。さらには、商品コンセプトそのものがクリープして変わってしまったことに気がついた。

これを契機に、この社長はプロジェクトリーダー制を廃止し、チームが動かない場合にを動かすことに責任を持つチームリーダーだけを残して、フラットな開発組織に変えていく決心をしたそうである。

野田先生たちの考えに沿うと、この新入社員はすでにリーダーシップの旅にでている。おそらく、数年後にはたいへんなリーダーになっていると思われる。

あなたはこの新入社員の話をどう思うだろうか。

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2007年10月26日 (金)

PMサプリ97:文武ニ道

先武士は文武ニ道といひて、二ツの道を嗜事是道也。(宮本武蔵)

【効用】
・PM体質改善
  アナロジー思考力アップ、創造力アップ、現象観察力アップ、実行力向上、
  問題解決能力向上
・PM力向上
  プロ意識の向上、プロジェクト管理力向上
・トラブル緩和
  問題解決

【成分】

◆二道はシナジーが生まれる
◆ニ道を極めようとしているか?
◆自分の行動を説明できる理論を探す

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2007年10月23日 (火)

【補助線】プロジェクトマネジメントのオーナーシップ

◆活動のオーナーシップという概念

前回まで、PMOマーケティングの話をしてきたが、この問題を議論するために不可欠な要素がプロジェクトマネジメントのオーナーシップである。財務、マーケティング、営業、エンジニアリング、製造など、会社の中で組織管理や製品プロセスで行われているさまざまな活動には、オーナーシップがある。財務であれば財務部門がオーナーシップであり、そのトップ(例えばCFO)がオーナーになる。マーケティングであれば、マーケティング部門がオーナーであり、そのトップ(例えば、マーケティング部長)がオーナーになっている。

オーナーシップは基本的にその分野の活動に対して、すべての権限を持つと同時に、すべての責任を負うことになる。その意味合いは、財務や、マーケティングなどのビジネスシステムやビジネスプロセスを構築し、そのシステムの運用やプロセスの実行に対して責任を持つということである。当然ながら、誤った運用や実行がされた場合には指導する義務が生じる。

◆日本でもこれからはオーナーシップの確立が不可欠になる

さて、米国の動向を見ていると、日本でもこれから、プロジェクトマネジメントも財務やマーケティングと同じようにオーナーシップが生じることが予想される。。つまり、オーナーシップが存在し、そのオーナーシップのもとに、権限と責任を持ってプロジェクトマネジメントの展開が行われるようになるだろう。オーナーシップを持つ部門はいうまでもなくプロジェクトマネジメントオフィスであるPMOである。

今、多くの企業でプロジェクトマネジメントの定着化・普及に苦労している理由のひとつはこのオーナーシップの欠如にあると思われる。PMOマーケティング以前の問題として、プロジェクトマネジメントの実施についてPMOが責任も権限も持たない。単なるプロジェクトの支援部門やプロセス標準部門として位置づけられ、プロジェクトマネジメントに関する社内における権限はプロジェクトマネジャーや組織マネジャーより小さいというのが一般的な姿である。

◆オーナーシップのないという現実

例えば、プロジェクトマネジメント標準の実施を求めたところで、例えば

 ・顧客が異なるやり方を求めている
 ・標準どおりのやり方をするには、スケジュール的にも厳しいし、納期的にも厳し

といった理屈がまかり通っている。こういう書き方をするとそんなことはないと思われるPMOの方も多いと思う。例えば、プロジェクト計画書は組織レビューの対象になっており、そこでは標準に則ったものが求められるという反論がありそうだ。

しかし、そのような組織でも、最終的な「プロジェクトマネジメント成果物」としての体裁は整えられるが、それが厳しく運用されている企業は決して多くない。たとえば、レビューはする。仮に、計画書の内容に問題があれば差し戻しがある(これもそんなに多くない)。ところが、計画書の記載方法に問題があっても指摘だけで、対応してくれで終わる。このような仕組みを持っているある企業の話だが、作業着手時に計画書の監査を実施したところ、作業着手前に計画書が組織レビューされており、指摘事項があったものの中のなんと95%が未対応で作業に着手していた。こんなものだ。これは本来許されるものではないが、上に述べた(実質的な)権限の問題で、プロジェクトマネジメントを実行することに対するオーナーシップがない状況になっているわけだ。

さて、では、このような現状を踏まえてどのようにオーナーシップを確立していけばよいのだろうか?この点については次回議論してみたい。

2007年10月22日 (月)

【補助線】多様性を否定するロジック

8チャンネルで日産のゴーン社長をゲストに招いて、スカイラインGT-Rの話題をやっていた。この車、突拍子もなく出てきたように見えるが、実はゴーン氏の就任当時からの「公約」であった。2001年の東京モーターショーでゴーン氏は

「世界的に有名な3つのアルファベットがあります。G、T、Rです。私はここでお約束いたします。必ずGT-Rは復活します」

という名演説とともに、「CT-Rコンセプト」を出品、2007年の東京モーターショーでの新型CT-Rの発表を宣言した。実は、この翌年、当時のGT-Rは排ガス規制の不適合により生産中止になる。当時、何かのインタビューで、日産の本当の復活は新型GT-Rが成功したときに終わるといっていたような記憶がある。

いよいよ、この車がスカイラインの冠をとり、日産GT-Rとしてベールを脱ぐ。我々の世代の車好きなら、羨望の車である。

さて、そのテレビ番組の中で、キャスターとのやり取りで興味を引いた部分がある。

・みんなが手が届く車ではないと思うが(700万円台後半)
・環境問題をどう捉えているのか

ゴーンの答えは、いずれも、ドイツあたりの同カテゴリーのスポーツカーと較べれば価格優位性があるし、環境性能も高いという答え。質問者は納得しない。

まあ、質問キャスターにもテレビ番組としてのパフォーマンスがあるのだろうけど、

 ・そうは言っても、みんなが手が届かない車は高い
 ・排気量の大きい車は環境によくない

という発想といったコメントを繰り返す。まず、GT-Rという車の個性を認めた上で議論しなくては話しにならない。

実に日本はこのパターンのロジックが多い。いろいろな機会でチームビルディングのアンケートをとると、メンバーの個性を大切にしているという答えをする人が圧倒的に多い。しかし、それは、「(既存の)組織、あるいは社会的に許せる個性」であれば、認めるという。

上のキャスターのように、それが如何に環境に優れた車であっても、コンパクトカーより排気ガスを吐き出しているのはけしからんというロジックで個性を否定しにかかる。つまり、「どれだけパワーがあってもよいし、高級志向でもよい、それも個性だろう。ただし、コンパクトカーとしての枠の中でね」という話になる。

チームマネジメントでいえば、どういうやり方をしようとそれは個性なので認めよう。ただし、「わたしが理解できる範囲でね、でないとフォローできないから」という話になるのだ。お釈迦様と孫悟空みたいな話しだ。

これが、一様主義、ダイバーシティを認めない日本の組織や社会の構造だというと言葉が過ぎるだろうか?

個性を認めるというのは、「組織、あるいは社会的に許せる」範囲を広げることである。もちろん、一定の制限は必要だろうけど。

2007年10月19日 (金)

PMサプリ96:マネジメントの基本は外向き?

マネジメントの基本は、内向きではなく、外向きでなくてはならない(沼上幹・一橋大学教授)

【効用】
・PM体質改善
  アカウンタビリティ向上、顧客感度アップ、顧客説得力アップ、
  バランス感覚の洗練
・PM力向上
  プロ意識の向上、実行力向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上

【成分】
◆外向きと内向き
◆外部のマネジメントとは?
◆プロジェクト成果は外部が決める

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2007年10月15日 (月)

【補助線】すごいマネジャー

金井先生の「組織変革のビジョン」という本はチェンジマネジメントだけではなく、多くのリーダーシップに関するインプリケーションを含む本である。中でも「組織変革のリーダーシップ」の中で、大規模なフィールド調査に基づく優秀なリーダーとマネジャーの関係に関する話が出てくるが、これはプロジェクトのマネジメントを考える上で興味深い。

まず、面白いのは、リーダーには「すごい(outstanding)」という形容詞をつけ、マネジャーには「できる」という言葉を使っている。

金井先生の調査では、すごいリーダーとできるマネジャー像として

すごいリーダーは、大きな絵(ビジョン、ロマン、夢)を熱っぽく語り、フォロワーの感情に訴え、しばしばバランスを欠いたり、抜けがあったりする。また、ときには他者を攻撃するけれども、語る絵が本質的に正しく納得のいくものなので、周りの人がついつい応援してしまうタイプである。

できるマネジャーは、システムや仕組みをうまく活用し、データを冷静に分析し、安定したオペレーションを生み出すために欠かせない。

という人材像を浮かびあがらせている。あなたはどちらのタイプだろうか?

組織側の人材マネジメントの論理としては、例外的な1~2割の人を除くと、リーダーとマネジャーの共存は難しく、ゆえに、必要に応じてそのような人材を開発していくということになる。

今、プロジェクトマネジャーの育成に取り組んでいる企業のほとんどは、できるマネジャーを育成しようとしている。また、進んでいる企業が、マネジャーに多少なりともリーダー的な特性が発揮できるような人材開発に取り組んでいる。

ただ、この認識はそんなに適切だとはいえないのではないかと思う。マネジャーは金井先生の説明にあるように、「システムや仕組み」の中で仕事する。しかし、プロジェクトマネジャーという仕事は必ずしもそういう仕事でもない。たとえば、調達ひとつとってみても、新しい調達方法や調達先を開拓しなくてはならないことは少なくない。

つまり、プロジェクトをやっていく上で、システムや仕組みを作っていかなくてはならないことが少なくない。

しかし、実際には、マネジメント業務に追われて、リーダーとしての活動が二の次になっている。実は、僕がPMOにずっとこだわっている理由は、マネジメント業務はPMOを中心にしてプロジェクトマネジメントチームを作り、そこでやればよいと思っているからだ。そして、プロジェクトマネジャーはリーダー業務に専念すればよいと思っている。

ただし、条件がある。小さなプロジェクトにおいては、マネジメントができるくらいのスキルは持っている必要がある。というよりも、いやでも両方をやらざるを得ない。つまり、プロジェクトマネジャーが目指すべきなのは、

 最低限のマネジメントスキルを持った「すごいリーダー」

なのではないかと思う。プロジェクトの成功を顧客満足で捉えるならば、これしかないだろう。われわれはこれを「すごいマネジャー」と呼ぼう。

金井先生が上の本で

 王たるもの、大海の水を飲み干すくらいの気持ちと、同時に砂浜の砂粒が一粒ずつ見えることの両方が必要

というシェークスピアのフレーズを取り上げているのがなんとも印象的である。

【補助線】PMOマーケティング

◆定着化サイクルのコラムに戴いた意見

7月9日のコラムでプロジェクトマネジメントの定着化サイクルとして

通知 → 教育 → 奨励

というサイクルが必要だという話をした。この中で、プロジェクトマネジメントの定着化にマーケティングの手法を持ち込んで話をした(実際に、弊社はそういうコンサルティングを行っているのだから当然!)。これに対して、この3ヶ月くらいの間に何人ものPMOの方から懐疑的な意見を戴いた。このメルマガは読者数は2000名弱と少ないのだが、しっかり読んで戴いている方が多く、うれしかった。実は、このような状況に対する偽りのない第一印象はこれ。ただ、僕にも思うところがあるので、今回は意見を整理し、それに対する意見を書いてみたい。

戴いた意見を整理するとおおよそ、以下の3点に集約される。

(1)まず、PMOの顧客は、プロジェクトマネジャーなのか、組織なのか

(2)プロジェクトマネジャーを顧客だと考えた場合、組織としてこうしてほしいというのが入ってくるので、100%顧客のニーズにこたえるということにはならない

(3)組織のニーズの入った標準やツールである限り、彼らがもろ手を挙げてそれを使うということにはならないし、プロジェクトマネジャーにとってのメリットも出しにくい。

◆そもそも、プロジェクトマネジャーとはどういう立場か

まず、基本的な認識として、プロジェクトマネジャーは経営組織の中でどういう立場なのかを考えてみる必要がある。9月7日にブログに以下のような記事を書いた。

プロジェクトマネジャーになるということ
https://mat.lekumo.biz/ppf/2007/09/post_1c25.html

この記事に書いていることが著者の考えである。一口でいえば現場を代表するリーダーではなく、経営を代表するリーダーである。

もちろん、これが一致するのがもっとも望ましいし、このような認識をすることはあまり望ましいものではないという考えも同時にもっているが、現場の立場でものを考えればよい立場ではないということを明確にするために、敢えてこういうものの言い方をしたい。

と同時に、プロジェクトマネジャーの標準やツールありきで、このサイクルを回していっても効果は薄く、自分たちがプロジェクトマネジャーの立場で彼らでは発想できない標準やツールを提供していくことが成功の秘訣であることを述べた。

ただし、現場にいて、現場を取りまとめていくという立場はある。したがって、マネジメントだけではすまない部分もあり、リーダーシップの発揮が求められる部分もある。

まず、これが一点目。

◆PMOにとってはプロジェクトマネジャーも組織も顧客

次にそのように考えた場合、プロジェクトにおいては、プロジェクトマネジャーが経営側の利益代表であり、そもそも、顧客がプロジェクトマネジャーか、組織かという命題の立て方そのものがおかしいのではないかと思う。顧客はいうまでもなくプロジェクトマネジャーであり、その背後には顧客としての組織があると考えるのが正しいだろう。

言い換えるとこの命題は、プロジェクトマネジャーを現場の利益代表だと考えているので発想するわけで、PMOはそこを改めていくべきだ。

さて、そこで、どうすればつかってもらえる標準やツール(以下、サービス)が提供できるかという話だ。7月9日のコラムで書いたマーケティングの話になる。このコラムで3つのサービス開発の方法があると説明した。プロダクトアウト、マーケットイン、マーケットアウトである。

◆PMサービスにおけるプロダクトアウトとは

説明が不十分だったようなので、具体的な例で説明する。プロダクトアウトという方法は、PMOが普段の活動の中で必要だと感じているサービスを提供していくという方法である。組織側の立場に立っていろいろなサービスを提供していくというのはほとんどプロダクトアウトになると思われる。これでは、ほとんど、受け入れられるサービスができないと思われるが、PMOのサービスというのは本質的にそういうものだと思っている人も少なくない。

つまり、自分たちは組織の代理人であり、組織の代わりにプロジェクトマネジメントに関するガバナンスを持っており、それを行使することが使命だ。要するに、ごちゃごちゃ言わずにいうことを聞けという考え方。

これは一理あるのだが、必ずといってよいくらい、事業ガバナンスとのコンフリクトが起こる。つまり、言うことを聞くのはよいが、もし、それで儲からなかったら誰が責任と取るのかという議論の中で、いろいろな問題が起こる。

◆PMサービスにおけるマーケットイントとは

次に、マーケットインという考え方。これはプロジェクトマネジャーのニーズを十分に聞き、それに対して、応えていくことを基本としたサービスの提供方法である。これは一見正しいように見えるかもしれないが、プロジェクトマネジャー自身が現場の利益代表であるとそんなに話は単純ではない。当然、ニーズに応えることができないケースが出てくるだろう。

◆マーケットアウトがすべてを解決する

最後がマーケットアウト。実は、申し訳ないことにこのコラムで次回説明するといってしないままになっている。マーケットアウト戦略は、PMOがプロジェクトマネジャーの立場でプロジェクトマネジャーが発想しない手法や標準を創り、それをサービスとしてプロジェクトマネジャーに提供していくことを意味する。

実は、上に述べたいろいろな問題を一挙に解決する秘訣はここにある。PMOがマーケットアウト戦略をとり、プロジェクトマネジャーの立場で、組織が満足する方法を考案し、サービスとして提供していくことこそが、PMOの成功要因である。

弊社ではこのようなマーケティングをPMOマーケティングと呼んでいる。PMOマーケティングができれば、(1)~(3)の問題が一挙に解決するだろう!

2007年10月12日 (金)

PMサプリ95:自分が成長すれば環境も変わる

高い志をもち高い目標を掲げて努力すれば環境も改善される(ユニチャーム会長・高原慶一郎)

【効用】
・PM体質改善
  アカウンタビリティ向上、実行力向上、問題解決能力向上
・PM力向上
  プロ意識の向上
・トラブル緩和
  弱気克服、チームの士気高揚

【成分】

◆自分が成長すれば、不満に思う環境が影を潜める
◆プロジェクトマネジメントにおけるジレンマ
◆高い志を持った努力
◆サーバントリーダーシップの重要性

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2007年10月 5日 (金)

【補助線】プログラムマネジメントはコペルニクス的転回である

◆プログラムマネジメントはなぜ、普及してきたのか?

この1年の間に、プログラムマネジメントに対する関心が急速に高まってきた。その背景には、PMIによるプログラムマネジメント標準の発表、プログラムマネジメントプロフェショナル認定制度の開始、日本でもPMAJによるプログラムマネジャー試験の開始など、さまざまな要因があると思われるが、必ずしもそのような話だけで
はないように思える。

プログラムマネジメントはある種のパラダイム変換である。たとえば、プロジェクトとして実行しようとしている投資計画があったとする。これをプログラムとして扱っていくのかは、コペルニクス的転回なのだ。

つまり、地球中心説から太陽中心説に変えるようなものだ。ものの見方が変わるだけで、やるべきことが変わるということではない。そして、ものの見方が分かるので、マネジメントが変わるだけである。

◆プログラムマネジメントへの移行はコペルニクス的転回である

プログラムによる業務運用に急速に関心が高まってきた背景には、このコペルニクス的転回ともいえるようなパラダイム変換が起こってきているのではないかと思う。これまで全体を決めてから実行する方が効率がよく、合理的であると考えてきたのだが、変化の激しい時代を迎え、その変化に対応するためには逆に効率が悪くなってきた。プロジェクトを実行しているうちに、次から次に状況が変わる。それに追従していかない限り、プロジェクトとしての成果は小さくなる。

これに対して、プロジェクトマネジメントは、変更管理で対応しようとする。プロジェクトマネジメントは決めたもの(要求)が「変わらないという前提」で進めているためだ。段階的詳細化といっても、どのような分野でも、全工程の20%が終わったくらいであらかたゴールを決めている。

◆変わった場合の変更管理ではなく、変化を前提にしたマネジメントパラダイム

これに対して、プログラムマネジメントは「変わることを前提」としている。したがって、業務の目的は決めるが、その手法、アプローチは決めない。個々のプロジェクトを小さくしておいて、柔軟に変更しながら、全体のバランスをとって、業務の目的を達成しようとする。

つまり、業務の前提として、実施期間中要求が変わらないという前提で行っていたのが、変わるという前提で行われるようになってきた。これが、コペルニクス的転回が起こった理由でもあり、パラダイム変換でもある。

今後、プロジェクトはどんどん、プログラムとして実行するようになってくるものと思われる。現に、今、IT系を中心にプロジェクトといいながら、プログラムとして運営されている。このようなプロジェクトの運用形態に対して、「プログラムマネジメント」という新しいツールを手に入れたプロジェクトマネジャーはプロジェクトの成功確率が格段に高くなっていくことが予想される。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。