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2007年10月15日 (月)

【補助線】すごいマネジャー

金井先生の「組織変革のビジョン」という本はチェンジマネジメントだけではなく、多くのリーダーシップに関するインプリケーションを含む本である。中でも「組織変革のリーダーシップ」の中で、大規模なフィールド調査に基づく優秀なリーダーとマネジャーの関係に関する話が出てくるが、これはプロジェクトのマネジメントを考える上で興味深い。

まず、面白いのは、リーダーには「すごい(outstanding)」という形容詞をつけ、マネジャーには「できる」という言葉を使っている。

金井先生の調査では、すごいリーダーとできるマネジャー像として

すごいリーダーは、大きな絵(ビジョン、ロマン、夢)を熱っぽく語り、フォロワーの感情に訴え、しばしばバランスを欠いたり、抜けがあったりする。また、ときには他者を攻撃するけれども、語る絵が本質的に正しく納得のいくものなので、周りの人がついつい応援してしまうタイプである。

できるマネジャーは、システムや仕組みをうまく活用し、データを冷静に分析し、安定したオペレーションを生み出すために欠かせない。

という人材像を浮かびあがらせている。あなたはどちらのタイプだろうか?

組織側の人材マネジメントの論理としては、例外的な1~2割の人を除くと、リーダーとマネジャーの共存は難しく、ゆえに、必要に応じてそのような人材を開発していくということになる。

今、プロジェクトマネジャーの育成に取り組んでいる企業のほとんどは、できるマネジャーを育成しようとしている。また、進んでいる企業が、マネジャーに多少なりともリーダー的な特性が発揮できるような人材開発に取り組んでいる。

ただ、この認識はそんなに適切だとはいえないのではないかと思う。マネジャーは金井先生の説明にあるように、「システムや仕組み」の中で仕事する。しかし、プロジェクトマネジャーという仕事は必ずしもそういう仕事でもない。たとえば、調達ひとつとってみても、新しい調達方法や調達先を開拓しなくてはならないことは少なくない。

つまり、プロジェクトをやっていく上で、システムや仕組みを作っていかなくてはならないことが少なくない。

しかし、実際には、マネジメント業務に追われて、リーダーとしての活動が二の次になっている。実は、僕がPMOにずっとこだわっている理由は、マネジメント業務はPMOを中心にしてプロジェクトマネジメントチームを作り、そこでやればよいと思っているからだ。そして、プロジェクトマネジャーはリーダー業務に専念すればよいと思っている。

ただし、条件がある。小さなプロジェクトにおいては、マネジメントができるくらいのスキルは持っている必要がある。というよりも、いやでも両方をやらざるを得ない。つまり、プロジェクトマネジャーが目指すべきなのは、

 最低限のマネジメントスキルを持った「すごいリーダー」

なのではないかと思う。プロジェクトの成功を顧客満足で捉えるならば、これしかないだろう。われわれはこれを「すごいマネジャー」と呼ぼう。

金井先生が上の本で

 王たるもの、大海の水を飲み干すくらいの気持ちと、同時に砂浜の砂粒が一粒ずつ見えることの両方が必要

というシェークスピアのフレーズを取り上げているのがなんとも印象的である。

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リーダーとマネジャーの言葉の違いは
よく議論になるが
役割と責任という切り口で
分析することが多い。
しかし、今回の記事を読んで
「すごい」と「できる」という形容詞によって
その2つの違いを明確にすることで
今後の議論が深くなるような気がする。

気づきを与えてくれたことに感謝したい。

コメントありがとうございます。

マネジャー像の議論は分析的にできるかもしれませんが、リーダー像の議論は分析的にするのは難しいと思います。
理由はこちらの記事に書いたとおりです。

http://people.weblogs.jp/ppf/2007/10/post_8d2a.html

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。