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2007年9月

2007年9月 8日 (土)

【補助線】プロジェクトマネジャーである前にビジネスマンであれ

プロジェクトマネジャーはプロジェクトマネジャーである前に、ビジネスの目標、経営者や事業マネジャーの役割、マーケティングなどを十分に理解した「ビジネスマン」であるべきだ。

メルマガの創刊以来、プロジェクトマネジャーに対して、ずっと言い続けてきたことだ。最近、気になりだしたのは、プロジェクトマネジャーとしてはプロフェッショナルな人が増えてきた反面、ビジネスマンとしての自覚がある人が少なくなってきたことだ。

先日、ある中堅企業の経営者の4年ぶりくらいにあった。5~6年前にプロジェクトマネジメント導入のコンサルティングをやった企業の経営者である。

コンサルティングをした当時は、プロジェクトの遅延率が下がり、効果があったと喜んでいた。ところが、この2年くらい、決められていることをやればいいんだろという態度が目につくようになってきたという。

特に困っているのが、決められたとおりにやるとマネジメントコストがかかるのは当たり前だということを平然という人が増えてきたことと、プロジェクトの予算や納期が、無理なものはプロジェクトマネジャーを引き受けたがらない人が目立つようになってきたそうだ。

前者で一番困っているのが、厳しい納期でも、計画期間の必要性を訴える人が増えてきたこと、後者では技術的な新規制の高いプロジェクトは管理が大変だとみんなが逃げ腰で、結果としてうまく行かないことが増えたことだという。

常々、感じていることだが、エンジニア感覚でプロジェクトマネジャーをやる人がどんどん、増えている。プロジェクトマネジメントのスキルを身に付けることによってエンジニアリング業務がスムーズに進むという点においては、一定の評価はできるし、シニアなエンジニアを目指す人には不可欠なスキルだともいえよう。

しかし、エンジニアとしていくらプロジェクトマネジメントスキルを身につけたところで本物のプロジェクトマネジャーにはなれない。エンジニアも本来は、エンジニアである前にビジネスマンであるべきだと思っているが、百歩譲ってそうではないとしても、プロジェクトマネジャーは必ず、ビジネスマンでなくてはならない。

ここに大きなハードルがある。このハードルを越えた人だけが「できる」プロジェクトマネジャーになれる。PMBOKブームはこのハードルを乗り越えられないプロジェクトマネジャーを大量生産しているが悪いことではない。ここから、仮に1割でもハードルを乗り越える人材が出てくれば大成功だといえよう。

2007年9月 7日 (金)

PMサプリ90:部下力がPMを救う

「部下力」とはリーダー(上司)の指導力を引き出し、リーダーの舵取りを支える力である。そして、卓越したリーダーシップの陰に必ず存在する現場力である(ドリームコーチ・ドットコム代表 吉田典生)

【効用】
・PM体質改善
  リーダーシップ発揮、リスク管理能力アップ、アカウンタビリティの向上
・PM力向上
  リスク対応力向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上、チームの士気向上

【成分表示】

◆「上に上がるものは能力があるものではなく、組織として必要なものである」
◆神輿を担ぐ
◆トップダウンの体制を前提にしたプロジェクトマネジメント
◆部下力がプロジェクトマネジメントを救う

このサプリを服用したい方はこちら

2007年9月 6日 (木)

【補助線】プロジェクトマネジャーになるということ

プロジェクトマネジメントをやってプロジェクトマネジャーは何かいいことがあるのだろうか?計画書を作るとか、リスクを考えながら仕事をするとか、面倒なことは山ほどある。では、その見返りに何があるのか?

これは多くの人がプロジェクトマネジメントに出会ったときに考えることだ。僕は常に、以下のように答えることにしている。

多くのマネジメントがそうであるように、プロジェクトマネジメントも現場の人に便宜を図るためにあるのではない。いうまでもなく、経営的な目的で導入される。

従って、今まで、自己流でプロジェクトを運営していた現場マネジャーが組織の方針でPMBOK流プロジェクトマネジメントを始めたからといって直接的には何もよいことはないだろう?ドキュメントワーク、ミーティングの増加により、タダでさえ忙しかったのがますます忙しくなることは明らかだ。

もちろん、自身できちんと仕事をすることを信念にしている人であれば、適用することによって満足感、達成感はあるかもしれない。しかし、1回、2回のプロジェクトであればともかく、延々と10年もそんなことを続けられる人がどれだけいるだろうか?

この問題に対するひとつの答えは散々言われているように、

「プロジェクトがうまく行けばプロジェクトマネジャーは楽になるじゃないか!みんなが同じ方法で研究すればうまく行く確率も高くなる、頑張ろう」

というものだ。これはウソだ。

そろそろ、このウソに気付く人たちが多発してきた。いつまでたっても楽にならない。どころか、成功率を上げるためと称してだんだん、マネジメントワークが増えてきている。

この1年だけでも、10人くらいの人から、「これなら、トラブルを起こしてばたばたしているほうが楽だし、第一、仕事をしているという充実感がある」というような意見を聞いた。この問いにどう答えるのか?

これに対する僕の答えは

多くのマネジメントがそうであるように、プロジェクトマネジメントも現場の人に便宜を図るためにあるのではない。いうまでもなく、経営的な目的で導入される。

だ。つまり、現場マネジャーは、経営側に立たない限り、プロジェクトマネジメントを導入してもメリットがことがあると感じられないだろう。あなたの会社ではプロジェクトマネジャーは職位でいえばまだ組合員なのかもしれない。しかし、そういう問題ではない。

プロジェクトマネジャーになるということは経営側の視点を持つということを求められるのだ。現場のリーダーだという発想は捨てた方がよいだろう。

2007年9月 1日 (土)

【補助線】サイエンスとアート

プロジェクトマネジャーのスキルの中で、見落とされがちなのが、「想像力」である。プロジェクトマネジメントだけではなく、マネジメントは一般的に、50%がサイエンスで、50%がアートであるといわれる。

サイエンスだけでは決してうまく行かない部分がたくさんある。一つの例。リスクマネジメントである。リスクマネジメントとは可能性のマネジメントである。リスクを識別するというのは、経験知があれば分析的にできると考える人も多い。

確かに、プロジェクトマネジメントの先進的企業ではリスクチェックリストを作り、機械的にリスク識別を行うような取り組みをしている。この部分はサイエンスである。

そのような取り組みをしているあるSI企業のPMOマネジャーに聞いた話。その企業では、リスクチェックリストを使って、リスクを回避し、それに併せて、各プロジェクト独自のリスクを識別するようにしている。すると、プロジェクトマネジャーとしての成績と、独自リスクの洗い出しの数は明らかに相関があるというのだ。もちろん、洗い出す独自リスクが多いプロジェクトマネジャーが成績がよいそうだ。

興味深い話である。たぶん、この話はリスクマネジメントがうまく行くからという話でない。想像力の問題だと思う。つまり、いろいろなシナリオを描くことができ、そこで何が起こるかということが明確なイメージとして頭に浮かんでくるのだろう。

実はこのような能力は、リスクマネジメントだけはなく、計画作業全般に必要だ。著者の知っているプロジェクトマネジャーの中に、計画をものすごく細かく書く人がいる。その人と他のプロジェクトマネジャーを比較してみるとわかるのは、その人はアクティビティのイメージがすごく明確なのだ。だから、細かな計画もかける。

計画をどの程度詳細に書くとよいかという議論は別途あるとしても、計画に対する「リアリティ」をどれだけもてるかは歴然とした違いがある。見てきたような計画を書くのと、テンプレートをさわって計画を書くのでは、その後のスムーズさ、とりわけ、トラブルに陥ったときの対応などが違うことは想像に難くない。

これは想像力の賜物であろう。このような部分がアートなのだ。プロジェクトマネジメントが普及してくるにつれて、アートの部分が軽んじられるようになってきたと思うのは、著者だけだろうか?

この議論は、組織の成熟度が上がってくればサイエンスの部分が増えるというほど単純な議論ではない。成熟度が上がれば、サイエンスの部分の質は上がってくる。これは間違いない。しかし、やはり、一定の割合でより高度がアートが求められるようになるだろう。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。