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2007年9月 1日 (土)

【補助線】サイエンスとアート

プロジェクトマネジャーのスキルの中で、見落とされがちなのが、「想像力」である。プロジェクトマネジメントだけではなく、マネジメントは一般的に、50%がサイエンスで、50%がアートであるといわれる。

サイエンスだけでは決してうまく行かない部分がたくさんある。一つの例。リスクマネジメントである。リスクマネジメントとは可能性のマネジメントである。リスクを識別するというのは、経験知があれば分析的にできると考える人も多い。

確かに、プロジェクトマネジメントの先進的企業ではリスクチェックリストを作り、機械的にリスク識別を行うような取り組みをしている。この部分はサイエンスである。

そのような取り組みをしているあるSI企業のPMOマネジャーに聞いた話。その企業では、リスクチェックリストを使って、リスクを回避し、それに併せて、各プロジェクト独自のリスクを識別するようにしている。すると、プロジェクトマネジャーとしての成績と、独自リスクの洗い出しの数は明らかに相関があるというのだ。もちろん、洗い出す独自リスクが多いプロジェクトマネジャーが成績がよいそうだ。

興味深い話である。たぶん、この話はリスクマネジメントがうまく行くからという話でない。想像力の問題だと思う。つまり、いろいろなシナリオを描くことができ、そこで何が起こるかということが明確なイメージとして頭に浮かんでくるのだろう。

実はこのような能力は、リスクマネジメントだけはなく、計画作業全般に必要だ。著者の知っているプロジェクトマネジャーの中に、計画をものすごく細かく書く人がいる。その人と他のプロジェクトマネジャーを比較してみるとわかるのは、その人はアクティビティのイメージがすごく明確なのだ。だから、細かな計画もかける。

計画をどの程度詳細に書くとよいかという議論は別途あるとしても、計画に対する「リアリティ」をどれだけもてるかは歴然とした違いがある。見てきたような計画を書くのと、テンプレートをさわって計画を書くのでは、その後のスムーズさ、とりわけ、トラブルに陥ったときの対応などが違うことは想像に難くない。

これは想像力の賜物であろう。このような部分がアートなのだ。プロジェクトマネジメントが普及してくるにつれて、アートの部分が軽んじられるようになってきたと思うのは、著者だけだろうか?

この議論は、組織の成熟度が上がってくればサイエンスの部分が増えるというほど単純な議論ではない。成熟度が上がれば、サイエンスの部分の質は上がってくる。これは間違いない。しかし、やはり、一定の割合でより高度がアートが求められるようになるだろう。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。