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2007年8月14日 (火)

【補助線】PMBOKはハコモノ、PMOが魂を入れる

◆PMOブーム!?

PMI東京事務局の永谷裕子さんに聞いた話だが、永谷さんがJUAS(日本情報システムユーザ協会)で初めてPMOのセミナーをやったところ、あっという間に100名の応募があったそうだ。

この話を聞いてもそんなにびっくりしないくらい、PMOへの関心は高まっている。PMstyleでも昨年からPMOリーダー養成講座というPMOスタッフ育成の体系的講座(全6回)をやっていBume る。今年4月からの第4期ではほとんどのセッションが満席になっている。

◆米国のある企業@1996

なぜ、こんなにPMOが注目されるようになってきたのだろうか?プロジェクトマネジメントは米国から10年遅れているといわれる。「プロジェクト的な性格を持つ業務の管理方法の唯一解がプロジェクトマネジメントだ」というのは少し違うと思うので、これがそのまま「プロジェクトのマネジメント」が遅れていることと意味しないが、「モダンプロジェクトマネジメント」ということであれば、10年以上だと思う。僕はちょうど、1996年は米国の企業と一緒に仕事をしていたが、今のSI企業と較べると、たぶん、その企業のプロジェクトマネジメントの方が進んでように思う。

この会社にはかなりしっかりとしたPMO組織があった。プロジェクトマネジメントのオーナーシップを持つだけではなく、プロジェクトへの支援活動も実践的なもので、我々のプロジェクトもずいぶん助けられた。特に、米国の拠点にプロジェクト本体があって、日本にも部隊がいるようなバーチャルチームだったが、チームのコミュニケーションの支援はまさに、「プロフェッショナルの業」だったような印象がある。

◆定着に10年かかる

実は最近、PMOの仕事をするようになって、改めて、この企業のPMOマネジャーとコンタクトをしていていろいろなことがわかったが、設立は80年代前半だそうだ。10年くらいはうまく機能しなかったそうだ。ただ、うまく行きだしたら、加速的にうまくいくようになったそうで、このあたりは定着化の話としてたいへん、興味深い。

さて、日本の企業はプロジェクトマネジメントに関心を持つようになってきて、まず、何をやったかというと多くの会社がPMBOKの導入を行った。そして、多くの企業がうまく行かずに苦しんでいる。理由ははっきりしている。PMBOKというのは多くの企業がやっていることを標準化したものだが、その背後にはPMBOKそのものではあまりフォーカスされていないプロジェクトマネジメントの推進体制というのがある。

◆PMBOKはハコモノ、PMOで魂を入れる?

つまり、多くの企業は「ハコモノ」としてPMBOKを入れている。まあ、ハコモノを入れて、後で中身をつめていくというのは日本型マネジメントの特技だといえるので、失敗だとは言い切れないが、あまり感心したことではない。

それはそうとして、我々がPMBOKの導入コンサルティングをやったクライアントのPMOは例外なく、「これだけのことはできないし、プロジェクトマネジャーにやれとも言えない。できる範囲でやればいいよね」という。できなくて当たり前である。プロジェクトマネジャーにやらせることを前提にしているからだ。もちろん、PMOとしても何らかの支援はしなくてはならないと考えるが、そもそも、前提が間違っている。

PMBOKはプロジェクトマネジャーのやることを示したものではない。プロジェクトマネジメントとしてすべきことを示したものだ。

PMBOKを採用する、しないに関わらず、プロジェクトマネジメントはプロジェクトマネジャーだけがやるものではないことに多くの企業が気がついてきた。そこで、とりあえず、PMOを作ってプロジェクトマネジメントの一端を担うようにし始めた。ハコモノにやっと少し、中身ができてきたわけだが、これが、今、PMOが注目されている理由である。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。