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2007年7月 9日 (月)

【補助線】定着化サイクルの作り方

◆定着化サイクル

前回、プロジェクトマネジメントの普及においてマーケティングの発想が重要だと述べた。今回は、もう少し、話を進めて、どのようなマーケティング活動を行い、定着化サイクルを構築していくかを考えてみたい。

Cicle PMOによる定着化のサイクルはどこでもやっているように

 通知 → 教育 → 奨励

という3つのステップが基本になる。程度の差はあっても、これはどこの組織でもやっていることだろう。おそらく多くの方は、サイクルを見て、

 標準やツールの開発 → 通知 → 教育 → 奨励

という流れを思い浮かべられたのではないかと思う。

◆プロダクトアウトでは標準は定着化しない

前回も述べたが、手法や標準の展開をする際に、まず、作って、それを組織内のプロジェクトやあるいは機能組織に知らせていくというやり方はあまり適切とはいえない。製品でいえばプロダクトアウトというやり方である。これでは関心が高まらないばかりか、「また、勝手にやることを増やした」などということで反感を買うのが関の山である。

通知や教育は標準を開発する中で展開していく。つまり、

 通知 → 教育 → 奨励
 ↑    ↑↓
 標準やツールの開発

という進め方をしていくことが必要である。これはマーケットインの発想である。

◆タウンミーティングで通知と教育を行う

もっとも重要なのは通知を行うタイミングと内容である。これは、開発をすることを決めた段階で第一報を行うことが望ましい。この段階で、なぜ、その開発アクティビティを行うのか、それがどのようにメリットをもたらすのかといったことを明確にしておく。

と同時に、その段階から教育を行う。ここにもうひとつのポイントがある。ここでいう教育は標準の使い方そのものではない。この段階では、その標準が入ったときにプロジェクトマネジメントがどのように変わって行くかを教えるような教育である。従って、長時間をかける必要はない。1時間でもいいので、プロジェクトマネジャーに集まってもらい、背景説明を行い、また、方向性について意見を求める。このためには「タウンミーティング」を開催するとよい。

日本では、タウンミーティングというと小泉内閣のときに開始されたが、やらせ問題や不適切な経費使用であまりよいイメージがないが、タウンミーティングは米国のニューイングランド地方で実施されている

各州によって形態は異なるが、概ね「町」単位で1年に1度開催され、住民の参加により予算、法律、その他自治体に関わる今後1年間の事項を採決する(Wikipedia)

という地方自治体の意思決定方式である。

◆自己決定の形を作ることがポイント

つまり、プロジェクトマネジメントに関する標準を策定することは組織ガバナンス上はPMOの仕事であるが、その定着や効果を考えた場合には、特にプロジェクトマネジャーの「自己決定」の形を作ることが極めて大切である。

従って、もし社内にコミュニティがあればコミュニティを徹底的に利用することが重要であるし、なければタウンミーティングのような場を作る。これにより、通知と教育を行うと同時に、パイロット実施も含めて標準の評価をして、洗練させていく。このサイクルをまわしていかない限り、いくらツールを準備しても、いくらレギュレーション化をしても、その標準が有効に機能するCicle1 ことはないだろう。

◆マーケットアウトを目指して

このような仕組みが定着してくれば、継続的改善の仕組み作りの可能性も見えてくる。継続的改善の仕組みを作るためのポイントはマーケットアウトの発想にある。これは次回。

◆マーケティング用語の説明
プロダクトアウト:自分たちが持っている技術などでできる商品をつくり、市場に出す
マーケットイン:市場の声を聞いて商品にして市場に出す
マーケットアウト:自分たちが顧客の立場で一般顧客が想像しない商品を考え、市場に出す

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。