2006年12月31日 (日)

プロ論。3

4198622655_01__aa240_sclzzzzzzz_v4847349 B‐ing編集部編集「プロ論。3 」、徳間書店(2006)

お奨め度:★★★1/2

待望のプロ論。の第3巻。

第1巻、第2巻はこちら

相変わらず面白いが、第1巻、第2巻に較べると、著名人というか、メディアによく出ている人が多い。このシリーズも有名になって、そのような人たちが取材を受けてくれるようになってきたということだろう。喜ばしいことだ。

今回は以下の50名。

出井伸之氏、尾関茂雄氏、北尾吉孝氏、熊谷正寿氏、宋文洲氏、中谷巌氏、野尻佳孝氏、橋本真由美氏、林文子氏、藤田晋氏、池上彰氏、岩井志麻子氏、岩崎究香(峰子)氏、押井守氏、江上剛氏、楳図かずお氏、小山薫堂氏、榊原英資氏、北村晴男氏、金美齢氏、金田一秀穂氏、しりあがり寿氏、辛酸なめ子氏、鈴木敏夫氏、高田文夫氏、陳建一氏、筒井康隆氏、戸田奈津子氏、長嶋有氏、名越康文氏、藤沢久美氏、藤巻健史氏、三池崇史氏、溝口肇氏、村上隆氏、茂木健一郎氏、山田真哉氏、池畑慎之介氏、市川春猿氏、今井雅之氏、片桐はいり氏、勝俣州和氏、島田洋七氏、高嶋ちさ子氏、高田純次氏、高見映氏、南部虎弾氏、岩村明憲氏、小宮山悟氏、為末大氏

ちなみに、今回僕が一番気に入ったプロの哲学は、ソニーCSLの茂木健一郎氏の

 不確実性を楽しめれば、個人の価値は向上する

である。

2006年12月29日 (金)

人脈≠知り合い

4757304226_01__aa240_sclzzzzzzz_v3436483藤巻幸夫「人脈の教科書~図解フジマキ流シビれる人生をつくる」、インデックス・コミュニケーションズ(2007)

お奨め度:★★★1/2

テーマのせいか、前作の「チームリーダーの教科書」ほど、インパクトは感じなかったが、でも、引き込まれるように読んだ。

ほしい人脈を手に入れる方法、人脈の作れるひとになる方法、社内人脈を作る方法、仕事以外の人脈作りなど、人脈に関して藤巻さんが持っている考えをすべて披露したような一冊である。実は、人脈というのは雑読派の僕としては珍しくまったく興味のないジャンルである。実際に立ち読みはしても、本を買ったのはこれが初めて。なぜかというと、第一は藤巻さんの本だからだが、第二の理由は極めて論理的、合理的にまとめてあるからだ。

この本で藤巻さんが言っていることは、「人脈はできるものではなく、作るもの」だということ。そのためには、まず、自分。人脈に恵まれる人のタイプとして

・オリジナリティのある人

・単独で行動できる人

・フットワークの軽い人

・計算より「志」の実現を見据えている人

・志のある人

の5つが上げられている。僕は人脈は恵まれているほうだと思うが、この5つはクリアしていると自負しているので、納得。

よくコミュニティや交流会で知り合いはできるのだが、サラリーマンなのであまり役立たないという人がいる。そんな人は、人脈が何かということを理解できていないと思うので、ぜひ、この本を読んで勉強をしてください!

また、人脈化される場合にもこの本に書かれているようなアプローチをされるとうれしいな!

マーケターの日常

4820744062_01__aa240_sclzzzzzzz_v4840508 末吉孝生「マーケターの仕事術〔入門編〕」、日本能率協会マネジメントセンター(2006)

お奨め度:★★★★

マーケターの書いたマーケターのコンピテンシー。 

マーケターの業務シーンを想定し、それぞれのシーンで役立つ道具を「キット」としてまとめている。うまく構造化されているので、実践的である。

キットには

「チャート」:全体図

「ノウハウ」:実務上のノウハウ(手順、詳細)

「ステップアップ」:事例とトレンド

「ブック」:関連する書籍、資料

という4つの要素から構成されている。

シーンはマーケティングプロセスに沿って25準備されている(目次参照)。

解説スタイルは基本的なことをエッジを効かせて書いてある。なので読んでいて面白い。

また、この手のコンピテンシー本にありがちな、コンピテンシーの羅列という感じがない。一つ一つの道具に存在理由があることを意識し、その理由を一言かきくわえてあるかだらと思う。

たぶん、これが、マーケター末吉孝生の流儀なのだろう。

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2006年12月28日 (木)

MS Projectを使ったダイナミックなプロジェクトマネジメント

4885387116_01__aa240_sclzzzzzzz_v3515413 Eric Uyttewaal「ダイナミックスケジューリング」、テクノ(2006)

お奨め度:★★★1/2

マイクロソフトのPMツール Office Project をPMBOKの考え方で実施するプロジェクトマネジメントの中で如何に使えばよいか、如何に使えるかを詳細に解説した一冊。タイトルからも分かるように、シミュレーション型のプロジェクトマネジメントを提案している。

Projectの解説としては、単にツールの使い方に留まらず、ツールを使ったプロジェクトの計画方法、コントロール方法が実際のツールの画面のキャプチャーを使いながら、丁寧に説明されているので、非常に有益な一冊である。特に、Projectを導入したものの、使いあぐねている人や組織にはぜひお奨めしたい。

ただ、PMBOKそのものが明確なマネジメントのモデルを提示しているわけではないし、シミュレーション型のプロジェクトマネジメントの全貌がよく分からない。そのため、ツールの枠組みでPMBOKを説明した本になっている感があるのは否めない。おそらく、PMPである著者の頭の中には、PMBOKに準拠したマネジメントモデルがあり、それに従って書かれていると思うのだが、それが書かれていないので、よく分からない。その点で、Projectの詳細な解説書の域を出ていないようにも思える。

とにかく、読んでやってみる価値はある。

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2006年12月18日 (月)

リスペクトすることについて考えてみよう

4880862061_01__aa240_sclzzzzzzz_v3496859 デヴィット・シーベリー(菅原明子訳)「リスペクト!自分も他人も大切にする生き方24話」、成甲書房(2006)

お奨め度:★★★★

心理学博士である著者が説く、「存在の基本原則」と「人間関係の魔法の公式」。1937年に米国で出版されて以来、200万人の人に読まれている人間関係のバイブル。

多様性が重視されている中で、リスペクトすることはどんどん重要性を増しているが、特に、戦後の画一的教育を受けてきた中では、なかなか、理解しにくい概念でもある。実際に相手を否定しないとかいったことが抑制的に行うことはできても、本当に相手を大切にすることは難しい。

そんな人に、取って置きのヒントを24のストーリーに載せて教えてくれる一冊。

この本の教えてくれること

・トラブルに対処する7つのルール

・7つのステップからなる思考手順

・避けるべき12の過ち

・確実に失敗する65のやり方

・トラブルを扱う10の方法

・危機的状況に対処するための4つのルール

・失敗の12の原因

・間違った7つの前提

・問題を起こす12の考え方

・厄介なトラブルに対する12の心得

・すでに手遅れだったときの10の対処法

・やり抜くための8つの方法

・問題解決のための5つの秘訣

2006年12月15日 (金)

プロフェッショナルの具体的イメージ

4480063331_01__aa240_sclzzzzzzz_v3576063 波頭亮「プロフェッショナル原論」、筑摩書房(2006)

お奨め度:★★★★

ありそうでなかった本。プロフェッショナルとは何か、プロフェッショナルであるためには何を守らなくてはならないか、プロフェッショナルであるためにはどのような日常を送らなければならないかなどをまとめた1冊。まさに、原論である。

この手の本は、結構、持論に走り勝ちであるが、著者はコンサルタントだけあって、自分のフレームを作り、そこに、世の中にあるいろいろな認識を自分の言葉でうまく整理して、決して独断だけではないプロフェッショナル論を展開している。

著者の述べるプロフェッショナルの3つの要件は

1)プロフェッショナルは極めて高度な知識や技術に基づいた職能を有していなければばらない(職能に関する規定)

2)プロフェッショナルの仕事は特定のクライアントからの特定の依頼事項を解決してあげるという形態をとる(仕事の形式に対する規定)

3)プロフェッショナルはインディペンデント、すなわち職業人としての独立した身分である(身分に関する規定)

の3つである。

そして、仕事のルールとして

(1)営業のルール

・営業をしない

(2)報酬のルール

・パーディアム×必要日数で報酬を設定

・値引きをしない

・成功報酬をしない

を上げている。

これからプロフェッショナルを目指す人はもちろんだが、プロフェッショナルを名乗っている人もぜひ、一度、目を通してほしい一冊である。

2006年12月12日 (火)

強い個をベースとしたリーダー論

4569656420_01__aa240_sclzzzzzzz_v3649460平尾誠二「人は誰もがリーダーである」、PHP研究所(2006)

お奨め度:★★★★

ミスターラグビー平尾誠二氏のリーダー論。

平尾流のリーダー論は、まず、「強い個」がベースになる。そのために、この本では、如何に自身を強くするは、また、指導者は如何に個を育成するかを議論している。

その上で、その強い個の上に立つリーダー像のキーワードとして、キャパシティというキーワードを使って議論している。キャパシティは、異質のもの、いびつなもの、対立するものを排除せずに、受け入れることだ。別の言葉でいえば、ダイバーシティである。

また、チーム論も展開している。平尾氏のチーム論はなかなか面白く、パズルではなく、積み木型のチームを創れと説いている。パズルはいうまでもなく、ぴったりとはまり、力を発揮するようなチームのイメージであるが、積み木型はでこぼこがあってもかまわない。30点のところもあれば、90点のところもあるが、全体として高くなる。そんなチームを創れと説いている。一種のコンペイトウ論である。バランスや効率は悪いが、その反面、予想しないような高い創造性を発揮する可能性もある。

基本的に平尾氏の発想は強い個、言い換えるとプロフェッショナルをベースにした議論である。その意味で人は誰もがリーダーである。ある意味で変わった理論であるが、少なくとも、大学選手権で3連覇を遂げた同志社の1年目のチーム、7連覇を遂げた神戸製鋼チームはそのようなチームだったと思う。その意味で、実践された論理でもある。

非常に興味深い。

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2006年12月 9日 (土)

マネジャーへの刺激のシャワー

4756910300_01__aa240_sclzzzzzzz_v3371458 嶋津 良智「あたりまえだけどなかなかできない 上司のルール」、明日香出版社(2006)

お奨め度:★★★★

このブログでは、このシリーズの本は過去に何冊か紹介している。

あたりまえだけどなかなかできない 説明のルール

あまりまえだけどなかなかできない 仕事のルール

あたりまえだけどなかなかわからない 組織のルール

あまりまえだけどなかなかできない 会議のルール

これらの本のよさは、半分くらいは、当然だと思うような項目(どんな類書を読んでも書いてあるようなこと)が挙げられているが、残りの半分くらいは非常に尖がった指摘がされていることだ。これが非常に役立つ。中には読んだ瞬間に「はっ!」とすることもあれば、「えっ?」と思うようなことも混じっている。ただし、書かれていることは、やってできないことではない。

この本はこの意外性の割合が非常に高い。例えば、

・究極の仕事は自分の仕事を無くすこと

・判断に迷ったら部下に聞け

・切り離すな、優先順位と時間管理

・心の中に第三者の目を持て

・真実の15秒(エレベータテストステートメント)

・マネジメントは不公平でいい

といったことが連なっている。非常によいことが書いてあるのだが、シリーズの他の本で書かれていることに較べると、実行が難しいことが多い。これは本質的に上司の仕事とというのは難しいことが多いからかもしれないし、ひょっとすると、難しいことが結構、並べて書かれているからかもしれない。

という意味で、シリーズの中ではちょっと変わった一冊だと思うが、間違いなく言えることは、「とてつもない刺激を受ける」ということだ。この点は保証する。また、時々、読んで、長時間かけて自分の成熟度の向上に取り組んでいくには、非常によい視点がたくさんある。この点も保証できる。

2006年12月 5日 (火)

あいまい性を許容する

4798111430_01__aa240_sclzzzzzzz_v5265845名内泰藏「曖昧性との共存」、翔泳社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

名内氏は日立で国鉄の座席予約システム「マルス」の中心的役割を果たしたエンジニアの一人である。その体験に基づいたプロジェクトマネジメント論は、ベストセラーになった前作

4798109053_01__aa240_sclzzzzzzz_名内泰蔵「曖昧性とのたたかい―体験的プロジェクトマネジメント論」、翔泳社(2005)

で詳しく書かれている。この本は、その経験を抽象化し、17の経験則にまとめている。

2冊ともあいまい性への対処を書かれているが、PMBOK的なリスクマネジメントと若干違うのは、あいまい性をマネジメントしているということ。例えば、曖昧性との戦いの中で、システムの重要部分をキャリアの浅いエンジニアに任せるという話がでてくる。管理的な視点でみれば、スキルあった部分を担当させるというのが正道なので、こんなことは危なくてやっていられない。しかし、マネジメント的な視点からみれば、目立つので悪いことが早く見つかるので、そうすべきだというのが著者のロジックである。

こういうロジックが作られる背景には、いくらあがいてもプロジェクトには曖昧性がある。曖昧性と喧嘩をするのではなく、如何に曖昧性とうまく付き合えるかが問題

というような著者の独特の視座がある。

以前、ある研究所で同じくマルスの中心人物の一人で、後に京都大学でアカデミックキャリアを歩み、日本の情報処理教育の基礎を気づかれた大野豊先生に指導された経験がある。大野先生もこのようなスタンスだった。ソフトウエアエンジニアリングやプロジェクトマネジメントが進んできたのはよいことだが、一方で、曖昧性に勝てる(無くすことができる)という錯覚が生じているのではないかと思う。そして、その錯覚がプロジェクトの躓きの原因になっているプロジェクトは決して少なくない。

著者は、ユーザー企業とITベンダー、競合ベンダーの間で曖昧さが混入する構図を「曖昧の三角関係」と呼んでいる。いくら、エンジニアリングやプロジェクトマネジメント、マーケティングマネジメントが進んで行こうとおそらくこの曖昧性がなくなることはないだろう。

その意味で、そのような思いを持つプロジェクトマネジャーは「視座」を変える必要がある。そのために、IT系に限らず、読んでほしい一冊である。前作と較べると、ITに限定しない書き方がされているので、ITの専門でなくて、十分読める本に仕上がっている。

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2006年12月 4日 (月)

待望のプロダクトマネジメントハンドブック

4798111929_01__aa240_sclzzzzzzz_v3663775 Linda Gorchels(新井宏征訳)「プロダクトマネジャーの教科書」、翔泳社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

欧米では定番のプロダクトマネジメント本の一冊。プロダクトマネジメントの仕事を「プロダクトマネジャーのハンドブック」という切り口で整理している。

プロダクトマネジメントは、日本ではあまり、なじみのない概念であるが、製品カテゴリーの展開に責任を持ち、また、同時に個別の製品開発プロジェクトにプロジェクトスポンサーとして関わるマネジャーである。製品カテゴリーをプログラムだと捉えれば、プログラムマネジャーである。

この範囲で必要な知識は極めて膨大である。この本はそれを網羅しているので、さしむき、「ポーフォリオ」的な意味合いの強い一冊である。

第1部は戦略計画について述べている。第1章の戦略立案フレームワークから始まり、市場調査、競合分析、ブランド戦略、コスト戦略などについて書かれている。第2部は製品計画と戦略実行で、戦略的成長、新製品開発プロジェクト、市場投入戦略、製品管理、顧客管理について書かれている(詳細は目次参照)

第3部は多少趣が変わり、プロダクトマネジャーのリーダーシップについて書かれている。

本の構成として、すべての項目について簡単なチェックリストでプロダクトマネジャーとしての仕事がチェックできるようなつくりになっている。また、章末に14人のプロダクトマネジャーへのインタビューが採録されている。このインタビューを読むことによって、スキルポートフォリオのイメージが明確になるだろう。その意味でとても重要な要素になっている。いずれにしてもハンドブックとしてはよくできているし、プロダクトマネジメントが何かを知らない人が読んでイメージを作る、あるいは、プロダクトマネジメントの実務に関わっている人が自分の行っている仕事を体系的に整理するにはもってこいの一冊である。

一方で、あくまでもハンドブックであるので、この本1冊でプロダクトマネジメントに必要な知識のすべてが身につくと考えるのは早計。この本に書かれている活動をしようと思えば、多くのスキルを必要とする。戦略理論、マーケティング、プロジェクトマネジメント、ブランドマネジメントなどだ。ちょうどプロジェクトマネジメントのPMBOKのようなイメージで読むのがよいだろう。

実際にこの本の書かれているような仕事のやり方を手っ取り早く身に付けたいという方には、同じ著者の

0071410597_01__bo2204203200_pisitbdp500aThe Product Manager's Field Guide: Practical Tools, Exercises, and Resources for Improved Product Management

がお奨めだ。ただし、英語。この本も翻訳してほしいなあ~。

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2006年12月 1日 (金)

「ひとつ上のチーム。」を作る方法

484432330x_01__aa240_sclzzzzzzz_v3722126_1 眞木準「ひとつ上のチーム。」、インプレスジャパン(2006)

お奨め度:★★★★1/2

コピーライターの眞木準さんの編集する「ひとつ上」シリーズ第3弾。クリエイタの仕事術を紹介するこのシリーズネーミングが気に入っている。もちろん、内容も面白いのだが、今回のものが一番響いた。

ちなみに過去の2冊は、ベストセラーになった「プレゼン」と「アイディア」。

484432080709lzzzzzzz

ひとつ上のプレゼン。」は、プレゼンテーション本が大量に出版されていた2005年に出てきた。装丁も豪華だし、値段も高い。そこに、このタイトル。内容も確かに素晴らしいと思うのだが、ビジネスプレゼンテーションではどうかなと思う内容も多少あった。

ひとつ上のアイディア。」。この本は素晴らしい。単発的にアイディアを出すことはそんなに難しいことではない。しかし、継続的にアイディアを出し続けることは非常に困難なことである。それをアイディアで飯を食っているともいえるクリエイタがど4844321889_1のように工夫しているかを解説している。クリエイタならずとも、例えば、継続的改善活動など、多くのビジネス活動でヒントにできる。もっとも、アイディアを連続的に出す仕事をクリエイタというのかもしれない。すると、現場改善に継続的に取り組んでいる人も、クリエイタだ。

さて、第3弾のチームだが、アイディアは「ほ~」という感じだったが、チームには感動した。クリエイティブな作業は個人作業だと思っていたが、よく考えてみれば、多くの人の知恵を借りればかりるほど、よい知恵がでてくるのだ。これにはある種のジレンマがある。人を集めてまとまらないと、逆に一人の方がクリエイティブな仕事ができるだろう。

その意味で、クリエイタにとってチームマネジメントは生命線であることが、この本を読んでよく分かった。また、いかにそこに命を賭け、チームの活性化に取り組んでいるかがよく分かる。まさに、クリエイタはチームビルディングにもクリエイティビリティを発揮しているのだ。チームマネジメントの教科書には書かれていないような宝石のようなアイディアが並んでいる。

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2006年11月29日 (水)

リアリティのある目標を立てる

453403637x_09__aa240_sclzzzzzzz__1 野口靖夫「リーダーのための目標の立て方・達成のしかた」、日本実業出版社(2003)

お奨め度:★★★★

目標。。といった本は、MOBの普及以来山ほどある。

その中で、何気なく、本屋で手にとってびっくりした一冊。

日本で一部上場企業の8割がMOBを導入しているという割には、その具体的な成果を語る人事担当者は少ない。どうもいろいろ話を聞いてみると、問題の本質は、目標設定の仕方にあるのではないかと思う。

確かに、BSCしかり、戦略目標から個人の目標へまで落とし込んでいくと、自動的に目標が設定されるように考えてしまう。テーマという意味では確かにそうだと思う。

しかし、目標設定のもう一つの問題は、その先にある。つまり、目標として達成するための方法を見据えた上で、目標設定ができるかどうかだ。目標管理の本では、目標の設定方法については書いていても、その実行方法については、目標の難易度を考えろで終わっている。その中でも例えばこの本などは、学ぶところが多いとても良い本だ。

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金津健治「すぐ使える・すぐできる目標設定法」、日本経団連出版(2005)

目標を立てるということは、その瞬間に達成のための計画を作るということである。にもかかわらず、その意識が希薄であり、それゆえに、設定した目標が達成できないケースが多かった。ところが、人事評価の中での位置づけが定着してきて、今度は、達成することに意識が移った。それは、残念ながら計画を作ってきちんと目標をクリアするということではなく、組織目標の末節のテーマで「実施できる目標を探す」という方向に向いてしまった。

いずれにしても、成果がでる目標の設定ができていない。

この問題を解消するには、各人が目標の達成スキルをきちんと身に付けていく必要がある。その本格的なものはプロジェクトマネジメントであるが、そこまではという向きには、この本をお奨めする。

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2006年11月27日 (月)

条件設定でやる気を調整する

489451243201_1 石田淳「続ける」技術」、フォレスト出版(2006)

お奨め度:★★★1/2

IS行動マネジメントの石田淳さんの新しい本。続けるということだけの焦点をあて、行動科学の視点からいろいろなアドバイスを与えている。

この本に書かれている行動科学を続けるというのに結びつけるロジックは

 条件設定により続ける → 自信がつく → 継続への動機付け → 自発的な行動

というものである。この中で、この本は、どのような条件設定をすれば、行動が生まれるかを詳しく、また、易しく解説してくれている。その意味で、実践的な一冊である。

ただし、このような行動科学のアプローチが万人に通用するものではないということも同時に感じた。以前このブログで、「やる気の自己調整」について書かれた金井先生の本を紹介したが、この中で、やる気の源泉を「緊張系」、「希望系」、「持論系」の3つに分けている。行動科学を用いるやる気の自己調整というのは、いくら条件設定が上手でも、本質的には「緊張系」に限定されるので、その意味で合わない人は多いのではないかと思う(僕もそうです)。

ただ、条件設定をとして希望系の条件設定で行動できる人もいるようにも思うので、この辺りが今後の課題ということになるのだろう。

それから、石田さんはおそらくそうなのだろうが、この方法自体を自分のものにできれば、これは金井先生のいうところの「持論系」になる。そういう道もあるだろう。

石田さんの本の記事:リーダーのためのとっておきの一冊

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2006年11月24日 (金)

創造的模倣

4479791817_01__aa240_sclzzzzzzz_v3471058 三田紀房「個性を捨てろ!型にはまれ! 」、大和書房(2006)

お奨め度:★★★★

ご存知、偏差値30台の高校生が現役で東大合格を目指す異色コミック「ドラゴン桜」の三田紀房氏の啓蒙書。三田紀房氏は、ドラゴン桜以外にも、ボクシングの世界チャンピオンがビジネス界でのチャンピオンを目指4063289095_09__aa240_sclzzzzzzz_4091846629_01__aa204_sclzzzzzzz_す「マネーの拳」というコミックスも書いている。

著者によると、コミックスではなく、もっと直接的に言いたいので本にしたとのこと。

ドラゴン桜にもマネーの拳にも共通する違和感がある。それは、「型」に対するこだわりと、組み合わせに対するこだわりだ。

世の中には成功するための型があり、成功するためには型にはまる必要があることを徹底的に主張している。これは著者の独自の主張というよりは、むしろ、多くの成功本で言われていることだ。

そして、より大きな成功をするには、その組み合わせが重要であるという2点。ここは、著者のオリジナリティだと思う。

誰もできないことをやるのは快感である。しかし、誰もできないことをやるよりは、成功していることがやっていることを「確実」にやるほうが難しい。競争するというのは結局そういうことであり、型にはまれという話は競争を恐れるな、同じ土俵で競争して勝てという王道を主張しているようにも思える。

もう、10年以上前になるが、この話を実証するような本が出版されている。

4641067813_09__aa240_sclzzzzzzz_ スティーヴン・P. シュナース(恩蔵直人、嶋村和恵、坂野友昭訳)「創造的模倣戦略―先発ブランドを超えた後発者たち」、有斐閣(1996)

お奨め度:★★★★1/2

この本は、後発企業が先発企業を逆転している例を集め、その要因を分析し、それらの要因を持つ戦略を創造的模倣戦略と呼んでいる。

・35ミリカメラ:キャノン:ニコン

・ボールペン:パーカー、ビック

・クレジットカード:VISA

・MRI:ジョンソン&ジョンソン、GE

・パソコンOS:マイクロソフト

・表計算ソフト:ロータス(さらに後発でマイクロソフト)

・ビデオ:JVC

・ビデオゲーム:任天堂

などの企業の事例を上げている。おそらく、二番手企業というイメージの企業はないだろう。むしろ、創造性の高いというイメージを持つ企業が多い。

イノベーションが注目されているが、イノベーションの議論というのは注意する必要がある。イノベータと呼ばれるのは主に、ドミナントデザインができた後で出てきた企業である。上の例を見てもそれは良く分かるだろう。

三田紀房の言い方を借りると、ドミナントデザインができた後で競争することが、成功の型にはまるということだろう。

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2006年11月22日 (水)

今日から役立つ会議TIPS集

4756910394_01__aa240_sclzzzzzzz_v3649441 宇都出雅巳「あたりまえだけどなかなかできない会議のルール」、明日香出版社(2006)

お奨め度:★★★1/2

「あたりまえだけどなかなかできない」シリーズの会議編。会議活性化のノウハウを書いた類書は多いが、この本はシリーズの特徴をとてもうまく使っている。一冊、手元においておきたいTIPS本。

さすがに、会議中にこれを見ながらというわけにはいかないと思うが、101のルールをリスト化しておき、リマインドしながら会議を進めていくとよいだろう。役に立ちそう。

また、内容も半分くらいはどこにでも書いてあるが、半分くらいは、非常に特徴があり、なるほどと思えるものが多い。例えば

場の空気を口に出して表現してみよう

というルールがある。たとえば、「何かあせっているような感じがする」といったことだ。

これは経験上、大変、有効であるが、あまり会議本には書いていない。このようなTIPSが多いのも好感が持てる。

読んでおいて損のない一冊だ。

2006年11月21日 (火)

日本で一番売れているマイクロソフトプロジェクトの本

4756146252_01__aa240_sclzzzzzzz__1 岡野智加「Microsoft Projectでマスターするプロジェクトマネジメント 実践の極意」、アスキー(2005)

お奨め度:★★★★

日本で一番売れているマイクロソフトプロジェクトの本。著者は、日本のプロジェクトマネジメント普及活動の草分けの1人、岡野智加さん。

MSプロジェクトの本というと、どうも、パワーポイント本とか、エクセル本とかのイメージがついて回るが、この認識は間違い。エクセルに例えれば、エクセルを使って、会計をどのようにやっていくかということを説明した本だと思ってよい。

まず、PMBOKをベースにしたプロジェクトマネジメントの方法があって、それを如何にMSプロジェクトを使って実行していくか。つまり、計画をどのように作るのか、進捗管理をどのようにするのかといったことを説明している本だ。

この本には2つの使い方があると思われる。

まず、一つはPMBOKプロジェクトマネジメントの導入をしている組織、あるいは、導入の計画を持っている組織が、PMISとしてMSプロジェクトを導入した場合にMSプロジェクトのトレーニングをするときのテキスト。

MSプロジェクトはシステム自体の操作が相当複雑であるので、このような形で学ぶのがもっともよいと思う。

もうひとつは、プロジェクトマネジメントの導入の際にMSプロジェクトを前提として行う場合に、プロジェクトマネジメントの枠組みそのものをトレーニングするときのテキスト。

いわゆるPM本は、読んでいるとふんふんとうなづきながら読むが、読んだことはあまり実践に結びつかない。その点、この本を使ってプロジェクトマネジメントのトレーニングをすると、実践に直結するのではないかと期待できる。

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2006年11月20日 (月)

人間と組織をどのように理解するか

4393641213_09__aa240_sclzzzzzzz_ ジョージ・ボーク、デヴィッド・トンプソン(斎藤彰悟、池田絵実)「リーダーのためのメンタルモデル活用術―人間と組織を理解する70のモデル」、春秋社(2000)

お奨め度:★★★★1/2

古い本だが読んでみてびっくりした。こんな本があったのかと、、、

何がすごいかというと、マネジメントやリードで使う手法に対して、メンタルモデルという考え方を使って手法の使い方を説明している。このような本をしっかりと参考にしながら、手法スキルの習得をしていけば、少なくとも振り回されることはないだろう。

扱われている手法は

・自己マネジメントのモデル
・リードとマネジメントのモデル
・変革のモデル
・戦略と組織構造のモデル
・目標達成のモデル
・プロジェクト、経営基準とモデル

の6つのジャンルで、70にある。かつ、そのメンタルモデルは、状況を理解し、マネジメントする上でもっとも効果的であったという著者たちの経験を踏まえたものである。

例えば、リードとマネジメントのモデルであれば次の17である

・リーダーとマネジャー

・行動重視のリーダーシップ

・リーダーシップ・スタイル

・マネジメントの機能

・動機づけのプロセス

・人々を動機づけるものは何か

・X理論とY理論

・チームワーク

・チームの役割

・柔軟性を持った自主管理チーム

・チームブリーフィング

・個人別能力開発シート

・個人と能力のマトリクス

・トレーニングの三角形

・コーチング

・行動の修正

コンピテンシーの中で、パフォーマンスコンピテンシーを高めるために非常に効果のある一冊である。

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2006年11月17日 (金)

情けは人のためならず

4901234951_01__aa240_sclzzzzzzz_v3752032 グレン・アーバン(スカイライトコンサルティング監修、山岡隆志訳)「アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業」、英治出版(2006)

お奨め度:★★★★

アドボカシーというのは聞き慣れない言葉だが、辞書を引いてみるとadovocate=支持する、提唱するといった意味らしい。

要するに、むやみやたらと自社の商品を押し付けないで、顧客の立場に立ち、本当に顧客に役立つ商品を、それが仮に競合他社の商品であっても薦めていく。その中で信頼関係を構築し、長期的なスパンで収益を上げていこうという考え方のマーケティングのことである。

この本では、アドボカシーをプル・プッシュ、リレーションシップ第3のマーケティング戦略と位置づけ、企業は顧客や見込み客に対してあらゆる情報を包み隠さず提供し、顧客が最高の製品を見つけられるようにアドバイスをする関係を想定している。

このような背景にはインターネットの普及により「隠したところで顧客はいずれすべてを知り尽くす」という現実があると想定しているのだ。

ただし、このプロセスは、企業が一方的に顧客にアドバイスを与えるプロセスではなく、顧客との対話により顧客を支援していくプロセスであるとしている。言い換えると、顧客は自社の製品を買わないまでも、自社の製品を知り尽くす。そして、その情報を顧客が別の顧客に推薦してくれるという関係を構築しようという考え方である。

この本を読んでなるほどと思った。僕の会社は小さいのでこの手のことがよくあるのだ。つまり、お客様から相談を受けたときに、自社では最適解が提供できないというときには、競合でもいいので、最適解を提供できそうな企業を紹介をする。場合によっては本当に紹介の労をとることもある。そんなお客様に、弊社に適したお客様を紹介してもらうことが結構ある。

ロジックが分かっていることと、実行できることは別だというマーケティング手法の典型かもしれないが、だからこそ、実行できるところは強くなれるかもしれない。

2006年11月16日 (木)

トヨタ方式の真髄を知る一冊

4492555722_01__aa240_sclzzzzzzz_v3602165_1 若松 義人「トヨタ式ならこう解決する!―思考から仕事を変えるケースブック」、東洋経済新報社(2006)

お奨め度:★★★★

トヨタ方式を40ケース以上の他社の問題解決に適用した事例を、コンパクトにまとめた一冊である。

僕は若松さんの著作は好きなので、だいたい読んでいる。このブログでも何冊か紹介している。

言い方は悪いが、若松氏の著作を読んでいても、トヨタだからという思いが拭い去れない部分があった(エピソード的に他社適用の話が入っている本も少なくないが、、)。実際のところ、これはトヨタだからできるというのは少なくないと思っていた。

しかし、この一冊を読んで、むしろ、他社事例により、トヨタ方式の本質が分かったような気がした。特に、書き方が、自社に適用してみて、なぜトヨタ方式がよいかを分析するといった書き方になっているので、腑に落ちる。

同じ感触を持った本にトヨタウエイがあるが、トヨタウエイよりはこの本の方が腑に落ちる。その意味で貴重な本である。

【このブログで紹介している若松氏の他の本】

若松義人「最強トヨタの7つの習慣―なぜ「すごい工夫」が「普通」にできるのか

【トヨタウエイ】

ジェフリー・K・ライカー(稲垣公夫訳)「ザ・トヨタウェイ 実践編

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2006年11月15日 (水)

人材育成担当の必読本

4478440557_01__aa240_sclzzzzzzz_v3856815 中原淳 (編集)、荒木淳子、北村士朗、長岡健、橋本諭「企業内人材育成入門」、ダイヤモンド社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

企業内人材育成に際して必要な心理、教育理論を体系化した本。理論だから実践的ではないということではない。

人材育成については、おそらく、担当者はそれなりの持論を持っている。しかし、人材育成は非常に多面的な仕事であるので、その持論ですべてがうまく行くことが珍しい。うまく行かないときに、別の視点からやり方を見直してみることが大切である。

そのような目的で現場の実践家が使える本だと考えてよい。目次を見て戴くと良く分かるが、学習メカニズム、動機付け、インストラクションデザイン、学習環境デザイン、キャリア開発、と内容は心理学、教育学にわたっており、非常に幅広い。それぞれについて、執筆者が簡潔にまとめていて、読みやすい。

また、この種の編著にありがちな、得意分野を並べているといった風の本ではなく、関連性も比較的明確で、バランスが取れているように思う。その意味でも、企業の人材育成者に一度は読んでほしい一冊である。

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