2007年2月 2日 (金)

ミンツバーグのエッセンス

4478307040_01__aa240_sclzzzzzzz_ ヘンリー・ミンツバーグ(DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー編集部)「H・ミンツバーグ経営論」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★★

異端の経営学者ミンツバーグの

マネジャーの仕事

戦略サファリ

などの代表的な著書から、経営論として編集しなおした一冊。

ミンツバーグの素晴らしさは、無理やり答えを出さず、ありのままでのものごとを見て、考察をすることである。学者とは本来こうあるべきだろうが、やはり、結論ありきの「戦略的仕事」をする学者の方が圧倒的に多い中で、異端の存在だといえる。鬼才 トム・ピーターズはミツバーグを20世紀最高の経営思想家だと評している。

一ツ橋大学の伊丹先生は

唯一最善解はない。ミンツバーグは子どもの目を持ち、老大家の頭を持った、異能の人である。彼の論考に制激されて、読者の頭脳もさまざまな汗をかくであろう。

と称している。最近はだれもがマネジメントには正解はないという。しかし、実感を持ってこの言葉を語る人は10人に1人もいればいいところだろう。9人の人は正解を求めたがる。するとアプローチを誤り、失敗する。

ミンツバーグはその豊富なフィールドワークから、その証拠をいやというほど見せ付けてくれる。そんな一冊でもある。マネジメントに正解はないということを本当に感じたい人はぜひ、読んでみてほしい。読んだ瞬間から、世界が変わるだろう。

この本でミンツバーグに共感できたら、ぜひ、この本を読んでみてほしい。この本にミンツバーグの思想の全てがあるのではないかと思う。

4478170258_09__aa140_scmzzzzzzz_ ヘンリー・ミンツバーグ(北野利信訳)「人間感覚のマネジメント―行き過ぎた合理主義への抗議」、ダイヤモンド社(1991)

版元の絶版で、アマゾンではトンでもない価格がついている一冊だが、本物のマネジャーを目指す人であればこれだけのお金を出しても意味があるだろう。

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2007年1月30日 (火)

金より名誉?!

4492532250_01__aa240_sclzzzzzzz_v4847397 太田肇「お金より名誉のモチベーション論 <承認欲求>を刺激して人を動かす」、東洋経済新報社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

太田肇先生と最初にお会いしたのは、神戸大学の大学院で学んでいたときで、太田先生が滋賀大学にいらっしゃった。まだ、今ほど、一般には知られていない時代だった。学位論文になった書籍

プロフェッショナルと組織―組織と個人の「間接的統合」

に共感を覚え、神戸大学のOBだったこともあって、インタビューをさせて戴いた。 金井先生を除くと、おそらく、僕がもっとも影響を受けた経営学者である。

太田先生の得意は、日本人の特性をよく理解し、利用する人材マネジメント論であり、少なくもと現実的であるということでは、東京大学の高橋先生と双璧だろう。

その太田先生の書かれた人材マネジメント論は

ホンネで動かす組織論

認められたい!―がぜん、人をやる気にさせる承認パワー

個人尊重の組織論―企業と人の新しい関係

など、ユニークなものが多い。その中で、最高傑作ではないかと思うのがこの本だ。

組織で働く個人が認められるということに対するこだわり、その安直な方法としてのほめるということの弊害など、独自の視点で、突出を許さないに本の企業の中でいかに個人のモチベーションを高めていくかを述べられている。

非常に面白いのだが、この本によると、承認欲求を満たす方法で、ポストを与える以外の方法はないということも述べられている。

ただし、その代わりに社会から承認を受けようとするというのは確かにプロフェッショナルの感覚だと思うので、結局、それを積極的に認めることが承認欲求を刺激することになるのだろう。そう考えると、積極的に社外講演を認めるとか、学会発表を推進するとか、資格や学位の取得を支援するとか、日本の企業がいろいろやっているなと思う。

非常に面白いモチベーション論であるので、ぜひ、一読をお奨めしたい。

2007年1月29日 (月)

MOT人材からMOTリーダーへ

4502389609_01__aa240_sclzzzzzzz_v4686950 古澤哲也「MOTリーダー育成法―技術経営成功の鍵は人材開発にあり」、中央経済社(2007)

お奨め度:★★★★

この本では、MOTは人の問題だと考え、その視点から人材開発によって技術経営を成功させるにはどうすればよいかを議論している。

この本が非常に面白いのは、MOTにおける人の問題をいわゆる技術者としての育成という視点から話をしていないことである。当然であるが、人の問題の中で中心になるのは、技術者であるのだが、問題になるのは技術的な能力ではない。経営のメカニズムの中で如何に活躍できるような人材にしていくかだ。つまり、MOTの技術部分を担う人材ではなく、リーダー人材として育成することが必要だと考えている。

この問題に対して今までのMOTの議論は、マネジメントを教えればよいということであったが、この議論は現実的ではない。必要なのは、マネジメントができる技術者ではなく、マネジメントに参画できる技術者である。

そう考えると、問題の本質は大幅に変わり、育成とは、技術者のマネジメント能力を身につけさせることではなく、技術者のコンピテンシーを開発するという問題になってくる。

この本ではどのようなコンピテンシーが必要か、それをどのように身につけさせるか、そのための仕組みをどう作るかを議論した一冊である。

2007年1月26日 (金)

影響力の武器

4414302692_09__aa240_sclzzzzzzz_ ロバート・チャルディーニ(社会行動研究会訳)「影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか」、誠信書房(1991)

お奨め度:★★★★★

1週間くらい前にこの本がアマゾンのビジネス書ランキングベスト10に入っていてびっくりした。見ると、なんと50人以上の★★★★★が並んでいるが、いま、15年以上前の本がなぜと思った。反面、そうかと思った部分があるので、ビジネス書の杜で取り上げた。おそらく、このブログで取り上げている本の中ではもっとも古いものだと思うが、時代に関係なく、★★★★★である。

この本を読んだのはもう10年以上前である。MBAに行っているときに、マーケティングの講義の課題図書になり、レポートを書いた。MBAの2年間で読んだ本はおそらく100冊くらいになると思うが、その中でも印象深い1冊である。

セールスマン、募金勧誘者、広告主など承諾誘導のプロの世界で、「承諾」についての人間心理心理学の視点から、人に影響を与えるにはどうすればよいかを体系立てて説明している。

この本では、豊富な実験結果や実例に基づいて、影響力を受けるパターンを以下の6つに整理している。

・返報性
 人間は他人から何かを与えられたら自分も同様に当たる様に努力する
・一貫性
 人間は自分の言葉、信念、態度、行為を一貫したものにしたいと考える
・社会的証明
 人間の多くの振る舞いは、他人を模倣する傾向にある
・好意
 人間は自分が好意を感じている知人に対してイエスと言う傾向がある
・権威
 人間は権威者に対して思考せずに服従する傾向がある
・希少性
 人間は機会を失いかけるとその機会をより価値のあるものとみなす

これらの6つのパターンを活用して、人に影響を与えようというのがこの本の主張。

リーダーシップ、ファシリテーションなど、人に影響を与えることが注目されている今の時代に、そんなに難しくなく、かつ、きちんとした理論を身につけるには絶好の一冊だといえる。

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2007年1月24日 (水)

マナーを考えよう

4902444437_01__aa240_sclzzzzzzz_v3450639 ピーター・ポスト(堀内久美子訳)「正統派男の行動学―覚えるマナーから考えるマナーへ」、オープンナレッジ(2006)

お奨め度:★★★★

生活のほとんどの場所が仕事の場になってしまっているせいか、マナーというのにあまり気をかけなくなってきた。

ヒューマンスキルだといっている中で、マナーの領域の話は意外なくらい多い。

たとえば、プロジェクトマネジメントの中で、ステークホルダマネジメントの重要性を盛んに言っている。そこでは、うまく聞くとか、伝えるとか、あるいは共感を得るといったスキルが重要なことはいうまでもないのだが、いくら、仕事の場だからといって、マナーが悪いことが障害になることは少なくない。

例えば、携帯電話のマナー。プロジェクト会議中に携帯電話を切らずに、それで後をひくコミュニケーショントラブルが発生したケースを何度となく見てきた。

あるいは、聞き方以前に、聞く態度の問題で相手が十分に情報を伝えなかったということも何度もある。これをスキルだけで片付けるのは無理があるような気がする。

一度、マナーというのを真剣に考えてみる必要があるのではないかと思う。もっとも基本的なところにマナーがあり、その上にヒューマンスキルがある。そんな発想が必要だろう。

この本は米国では割と有名な本である。

日常生活、コミュニケーション、人付き合い、仕事など、いろいろな場面でのマナーやルールが簡潔に述べられている。含蓄もある書き方だ。

一度読んで、自分のマナーについて、じっくりと考えてみてほしい。

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2007年1月22日 (月)

問題社員

447836091x_01__aa240_sclzzzzzzz_v4627424 DIAMONDハーバードビジネスレビュー編集部編・訳「ケース・スタディ 「問題社員」の管理術」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

・やり手だが会社のルールを守らない若手セールスマン

・頭は切れるが、他人のミスを責め立てるスター社員

・優秀だが、エゴが強く、協調性に欠けるクリエーター

といったいわゆる問題社員のマネジメントをケースを使って解説した一冊。ひとつのケースに対して、複数の識者が意見をつけるという形で進んでいる。その内容もばらばらであり、如何にこの問題の根の深さがよく分かる本だ。

この種の議論は日本にはなじまないという意見が根強いが、このケースブックを読んでいると、コンサルティングの際に、世間話で部下やボスの相談をされることがあるときに、よく出てくるパターンであることが分かった。

ということは、この種の人種はたくさん社内にいるということだ。日本のマネジャーはこの種の問題は顕在化させずに処理するのが有能だとされてきた。だから、こっそりと「ついでに相談を受ける」のだと思うが、非常に蔓延してきたように思うので、まあ、そういう時代でもなくなってきたのだろう。

とりあえず、読んでみて、傾向と対策を仕入れては如何だろうか?読み物として読んでも超・面白い。特に、好川のお奨めは

第7章 対人関係力が問われる仕事に肥満社員は不適格なのか
第8章 カリスマCEOのスキャンダルにどう対処すべきか

の2章(笑)。

なお、同じシリーズから、この前に次の本が出版されている。

4478360790_09__aa240_sclzzzzzzz_ DIAMONDハーバードビジネスレビュー編集部編・訳「いかに「問題社員」を管理するか」、ダイヤモンド社(2005)

お奨め度:★★★1/2

こちらは論文集だ。特にCクラス社員、Bクラス社員といったところに焦点を当ててそのマネジメントを論じた論文が多い。また、ボスザル社員をてなづける、有能人材の悪癖を取り除くといった、人材活用の観点からの論文も何点かある。問題社員に頭を抱えるマネジャーにとっては非常に役立つ一冊である。

併せて読んでみてほしい。

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2007年1月19日 (金)

人生をプロジェクトマネジメントする!

4569658660_01__aa240_sclzzzzzzz_v4983093 中嶋秀隆、中西全二「25の目標」、PHP研究所(2007)

お奨め度:★★★★1/2

むかし、神戸大学の経営大学院で加護野忠男先生のマネジメント論の授業を受けた際に、非常に印象に残った言葉があった。それは、「マネジメントは生き様である」という言葉だ(もはや、講義のタイトルすら覚えていないので、この言葉はよほど印象に残ったのだと思う)。

中嶋さんと中西さんのこの著書を読んだときに思い出したのが加護野忠男先生のこの言葉だった。この本で書かれている人生をプロジェクトに見立てたプロジェクトマネジメントの考え方がまさしく、中嶋さんや中西さんの生き様なのだろうなと思ったのだ。

この本は前半は、人生の目標(25の目標)の定め方、後半は定めた目標の実行の方法について述べられている。

前半では、

・自分の人生のビジョン

をつくり、そこから、

・25の目標

に落とし込む。そして、そのうちの目標のどれかをうまく達成したら

・人生101のリスト(思い出リスト)

に書き込んでいくというスキームを提案している。そして、実際にこれらがツールとして提示されており、ワークをしながら読んでいけるような形になっている。

後半では、お二人の活動されている会社(プラネット)が提唱しているPM10のステップを使って、設定した目標を如何に達成するかが解説されている。

前半と後半をあわせて、人生をプロジェクトマネジメントするということになる。

実は、この本、著者の1人の中嶋さんから昨年の末に頂戴したのだが、このブログに書評を書くのに1ヶ月近くの時間が過ぎてしまった。とりあえず、さっと読むのはすぐにできたが、せっかくだと思い、25の目標を作り出した。作り出すと、いろいろなことが頭に浮かんできて、何度も読み直しながら、やっと先日作り終えて、こうして書評を書いている。

このような経験を通じて分かったことは、実際に目標を作ってみると、前半の目標設定の中で書かれていることが実によく分かるし、中嶋さん独特(?)のものの見方もだんだん、腑に落ちてきた。また、25が一種のマジックナンバーではないかとも思えるようになった。論より行動である。

ということで、この本を読まれる方は、実際に演習をやってみないと価値が半減する!とアドバイスしておきたい。ぜひ、25の目標を立て、その達成チャレンジを実践してみてほしい。

もうひとつ、この本は記述が極めて良質である。帯に「PMのプロ講師直伝」と書かれているのは、内容もそうだが、教える方法に対する自信の表れなのだろう。

もうひとつ読者の方へのアドバイス。前半で提案されている目標設定と達成のスキームはプログラムである。この本では、「ダイナミックに全体のバランスをとる」と書かれている。実は、このダイナミックにバランスをとる具体的な方法が後半でもあまり明確になっていない(ヒントはある)。

この本の後半に書かれている(シングル)プロジェクトマネジメントだけではなく、プログラムマネジメントの手法を習得すると、一層、25の目標がよりうまく達成できるのではあるまいか。この本を読んでプロジェクトマネジメントが一通り分かったら、次はその辺りを勉強してみてほしい。

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感情は経営資源である

4777105679_01__aa240_sclzzzzzzz_v4801363 野田稔「燃え立つ組織」、ゴマブックス(2007)

お奨め度:★★★★1/2

「感情のマネジメント」をテーマにした野田先生の新著。

最近のビジネスにおけるEQの注目度をみても、感情がマネジメントにとって無視できない存在であるという認識は定着してきたように思える。

4062562928_09__aa240_sclzzzzzzz_ ダニエル・ゴールマン(土屋 京子訳)「EQ―こころの知能指数」、講談社(1998)

しかし、それらは多くの場合、セルフマネジメント、あるいは、ソフトマネジメントの対象であり、マネジメントの対象として扱われることはなかった。この野田先生の本は、真正面からそこに切り込み、

 正しく使われた「感情」は経営資源である

とまで言い切っている。

その上で、プロジェクトには「感情のV字回復がある」ことを発見し、その谷を乗り越えるための方法論として、モチベーションマネジメントを位置づけている。

モチベーションマネジメントにおいては、野田先生の得意のコミットメントという視点から、リーダーシップ、人材育成などの問題について述べている。また、リクルートHCの高津氏、リンクアンドモチベーションの小笹氏といった著名人をゲストに読んで彼らの持論を語ってもらっている部分も読み応えがある。

なお、野田先生の主張するコミットメントマネジメントについてはこちらの本を読んでみられることをお奨めしたい。

4569628125_1 野田稔「コミットメントを引き出すマネジメント―社員を本気にさせる7つの法則」、PHP研究所(2003)

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2007年1月17日 (水)

社長はドライバー、会社はクルマ、さて経営とは?

4757304242_01__aa240_sclzzzzzzz_v4922894 前田隆敏「社長の作り方―経営参謀が贈る90分でわかる社長実務」、インデックス・コミュニケーションズ(2007)

お奨め度:★★★1/2

社長を「ドライバー」、会社を「クルマ」にたとえ、ドライバーとしてクルマを運転し、価値を生み出す仕組み、あるいは、安全運転の方法を解説している。

経営というのは複雑で分かりにくい。書いてあることを個別にみていくとそんなに変わったことが書いてあるわけではないのだが、クルマの運転のメタファで、意思決定、管理、ブランド、リソースマネジメント、資金のマネジメント、ステークホルダマネジメント、人事などの仕組みの関係がクルマの運転をできる人なら直感的に分かる素晴らしい一冊である。

特に、創業時のベンチャー企業の経営者に読んでほしい一冊である。

また、会社をプロジェクトに置き換えると、ほぼ、同じ関係が成り立つ。プロジェクトマネジャーが自分のやっている活動を振り返り、一皮むけたいときにもお奨めしたい一冊である。

2007年1月15日 (月)

現場力を高める問題解決とは?

4820744070_01__aa240_sclzzzzzzz_v4841729問題解決実践研究会「組織の現場力を高める問題解決メソッド」、日本能率協会マネジメントセンター(2006)

お奨め度:★★★★

「問題を先送りにする組織」には

・問題解決の具体的な手順を知らないこと
・問題解決を実行していくような組織方針・組織風土がないこと

の2つの問題がある。これらの問題を解決し、「現場力の高い組織」に変えていくために必要なことをテーマにした本。

第1部では、問題解決の方法を課題設定型と構想設定型に分けて解説している。さらに、これらの問題解決に必要なコンピテンシーとして、協働誘発力、組織管理力の2つについて述べている。

第2部はマネジメントを進化させる学習する組織において問題解決がどのように役立つかを述べている。

フレームワークはシンプルで強い。精神論だけでは問題解決型の組織は作れないと感じている人は一読の価値があるだろう。

また、チームビルディングの方法論として読んでみると、問題解決を行う仕組みを作って、問題解決型のチームを創っていく方法になる。これは実務的なチームマネジメントの方法論かもしれない。

その意味ではプロジェクトマネジャーやリーダーも読んでみる価値アリ。

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2007年1月12日 (金)

マーケティングにおけるギャップに悩む人必読

4820118455_01__aa240_sclzzzzzzz_v4983141 石川昭、辻本 篤編「新製品・新事業開発の創造的マーケティング―開発情報探索のマネジメント」、生産性出版(2006)

お奨め度:★★★★

編著であるが、研究開発から製品開発、事業開発までバランスよくまとめられており、初心者が読むにも適した製品開発、事業開発のテキスト。

第2章では、戦略実行のための研究開発のあり方について解説されている。特に、マーケティングのさまざまな活動と研究開発活動をどのように関係付けていくかを丁寧に解説している。

第3章では、研究開発における意思決定について解説されている。テーマの選定および、継続中止などの評価と判断をどのように行うかを解説している。

第4章では、マーケティングにおける情報活動について解説している。

第5章では、研究開発活動における情報活動について解説している。

6章以下は、これらの解説を事例によって解説している。「からだ巡礼(TM)」、Webリコメンデーションシステム「教えて!家電」、ロボットの開発などの特徴のある事例を取り上げて解説しているので、とても面白い。

最後に9章では最近注目されている、クレームベースの製品開発について解説している。

経営戦略と研究開発、研究開発と製品開発のギャップに悩んでいる人にはとても参考になる一冊である。

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2007年1月10日 (水)

意図された混乱

4478307040_01__aa240_sclzzzzzzz_v4801519 ヘンリー・ミンツバーグ(DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー編集部編)「H. ミンツバーグ経営論」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★

日本でも紹介されているミンツバーグのいくつかの著作を編集した本である。

456124218x09lzzzzzzz_1 マネジャーの仕事

戦略サファリ―戦略マネジメント・ガイドブック

の2冊がベースに、HBRのインタビューなどが加えられて一冊の本になっている。編集がよくて、ミンツバーグの特徴がよく現れた一冊になっている。

4492530649_09__aa240_sclzzzzzzz_このブログでもマネジャーの仕事は何度か紹介しているが、ミンツバーグは考えるネタを提供してくれる著作が特徴である。マネジメントは複雑であるという思いがあるのだそうだ。

この本の原題は、邦題より大きく書いてある「Calculated Caos」である。意図された混乱とでもいえばよいのだろうか?意図して混乱させ、考えさせる。そこにミンツバーグの著作の本質があるといえる。

この記事を書くのにアマゾンのページを見たら、take_dさんという方が、司馬遼太郎を読むような感覚で読んでみてはどうかと書かれていて、なるほどと思った。

日本人はこの手の考えさせる本は好きではない。ノウハウもの以外は本に金を払う価値はないと思っている人が多いように思う。しかし、言われてみると、時代小説は好んで読み、それをマネジメントや自分の仕事に活かすというのは好んでする人が多い。

時代小説には答えが書いてあるわけではないが、刺激がたくさんあるのだろう。確かにミンツバーグをそのような感じで読めば、非常に面白い著作が多いのは間違いない。ナイスアイディアだ。

ERP、CRM、SCMと並ぶEMM

4901234919_01__aa240_sclzzzzzzz_v3496859デイブ・サットン、トム・クライン(高宮治、千葉尚志、博報堂ブランドソリューションマーケティングセンター訳)「利益を創出する統合マーケティング・マネジメント」、英治出版(2006) 

お奨め度:★★★★1/2

マーケティングという概念は分かりにくい部分があるが、それは、製品を企画し、開発し、販売するまでの一連の活動すべてであるにも関わらず、それらを体系的に取り扱う手法がないためである。

このため、ステージ間の連携においては、ヒューリスティック頼りの側面が強く、これがマーケティングはアートとサイエンスが混在しているといわれる一因になっている。

この本で提案されているEMM(エンタープライズ・マーケティング・マネジメント)は、これらの活動を統合的に扱うために考えられた手法である。統合的に使おうとするために、マーケティングのさまざまなステージにおける活動はすべて必然性と論理性が求められるようになり、これにより、マーケティングはサイエンスになる。

コトラーはこの本で紹介されているサットンとクラインの仕事を、「ERP、CRM、SCMと並ぶ効果効率の高い収益力のある事業運営のプラットホーム構成要素のひとつ」だと称している。

製品開発に関わる人は必読の一冊である。

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2007年1月 8日 (月)

検索ができるようになりました。

Googleの検索を使って、ブログ内の検索ができるようになりました。右にある検索窓にキーワードを入れて、検索範囲を指定してお使いください。

ついでに、気分転換で、デザインも変えました。如何でしょう?

2007年1月 7日 (日)

PMstyle Books開店のお知らせ

Pmstyle_color1_2 PMstyle.bizに PMstyle Booksを開店しました。サイト内で、書籍やソフトウエアの買い物をお楽しみいただけます。

プロジェクトマネジメント、プログラムマネジメント、プロダクトマネジメントについては、かなり、カバレッジが高いと思いますので、ぜひ、一度、お越しください。

また、周囲の方にもご紹介いただければ幸いです。

PMstyle Books

2007年1月 5日 (金)

イキイキ

4833418428_01__aa240_sclzzzzzzz_v3560707 人と組織の活性化研究会、加護野忠男、金井壽宏 「なぜあの人は「イキイキ」としているのか―働く仲間と考えた「モチベーション」「ストレス」の正体」、プレジデント社(2006)

お奨め度:★★★1/2

日本の経営学のグルの一人、加護野先生が学部長をやられていたときに「カゴの鳥」状態で外に出れなくて、学部長室に来てもらって開催していた研究会が、その後、成果を積み重ね、一冊の本になった。時代背景にバブルの後の落ち込みがある。

金井先生が研究会にコミットされていることの影響もあると思うが、この本は、いつも元気でいようというスタンスではない。「落ち込みOK」である。つまり、ライフサイクルの中で、元気な時期もあれば、落ち込んでいる時期もある。それを前提に元気のないときにどのように活力を取り戻すかを、研究会の参加者が実際に知っている、あるいは調査した事例に基づいて議論している。「落ち込みOK」、「実例」の2つにより、元気になりたい人にとってとても力強い本になっている。

ちなみに、研究会の議論のベースになっている、「イキイキ・サイクル・チャート」と呼ばれるライフサイクルチャートがある。年齢を時間軸にして、イキイキ度を書いていく。今、30代後半から40代前半にある人は、ぜひ、このチャートを書いてみてほしい。それだけで元気が出てくると思う。

もうひとつ、神戸大学のMBAコースの特徴である、「社会で活躍する人が自分の抱える問題を持って学校に来て、リアルタイムで解決し、トライアルできる教育環境」というのがよく現れている一冊でもある。

もうひとつ。3~4年前に金井先生にお会いしたときに、「好川さんは落ち込まないね」といわれた。この本の解説で金井先生がいつもハイなのはビョーキだと書かれている。そういう意味だったのか、、、(笑)

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2007年1月 4日 (木)

2006年「このビジネス書が凄い!」

好川哲人が選ぶ2006年のベスト1は

 スコット・バークン(村上 雅章訳)
 「アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法

です。

この企画、ビジネス書の杜を始めて以来、毎年やっていますが、たぶん、プロジェクトマネジメントの本を選ぶのは初めてではないかと思います。そのくらい素晴らしいと思った本です。

書き方は抽象化されていますが、内容はマイクロソフトの「エスノグラフィー(民族誌学)」だといってもよいくらい、現実に起っている、やっていることに忠実に書かれています。

プロジェクトマネジメントの書籍も一時なりを潜めていましたが、昨年後半から、また、出版されるようになってきました。

しかし、複雑化しているプロジェクトをマネジメントする術を書くには、長尾さんの書かれた本、中嶋さんの訳された本(この2冊は出版以来、必ず、ビジネス書の杜ベスト10に入っています)のような優れた本でも、限界があるように思います。

これからは、このようなエスノグラフィー的な本をたくさん出版して、「物語」として伝えていくというものぜひ、考えていただきたいものです。プロジェクトマネジメントにはやはり、アートも必要なのです。

それから、今年は特別賞があります(何も賞品でるわけではないですが;笑)。

 Linda Gorchels(新井宏征訳)「プロダクトマネジャーの教科書

よくぞ、この本を訳してくれました!訳者の新井さんはもちろんですが、翔泳社の外山さんにも感謝です!「クロフネ」到来になるかも?!

2007年1月 3日 (水)

2006年ベストセラー

Thank_1 昨年度は、ビジネス書の杜をご愛顧いただき、ありがとうございました。本年もよろしくお願い致します。

2006年にビジネス書の杜で売れた本のベスト10は以下のようになりました。

第1位
A Guide To The Project Management Body Of Knowledge: Official Japanese Translation

第2位
世界一わかりやすいプロジェクト・マネジメント

第3位
プロジェクトマネージャーが成功する法則―プロジェクトを牽引できるリーダーの心得とスキル

第4位
一日5分奇跡を起こす4行日記―成功者になる!「未来日記」のつくり方

第5位
ファシリテーション・グラフィック―議論を「見える化」する技法

第6位
先制型プロジェクト・マネジメント―なぜ、あなたのプロジェクトは失敗するのか

第7位
意志力革命 目的達成への行動プログラム

第8位
自分の小さな「箱」から脱出する方法

第9位
ケースで鍛える 人間力リーダーシップ

第10位
プロジェクトマネジメント・オフィス・ツールキット

死の谷を如何に乗り越えるか

4641162530_01__aa240_sclzzzzzzz_ 榊原清則「イノベーションの収益化―技術経営の課題と分析」、有斐閣(2006)

お奨め度:★★★★

R&Dにおける「死の谷」問題に着目し、実際の日本企業のサーベイを通じて、この問題への解決の方向性を提案している。提案は、クリステンセン先生の『イノベーションのジレンマ」や、東大藤本先生の『アーキテクチャの位置取り戦略』をベースの理論としており、これらに対する簡単な解説も含まれている。

理論的な解説をこの問題に絞っているので、MOT全般を扱う本にはなっていないが、簡潔に、実に的を得た実感を持てる問題分析と提案になっている。

また、この本の三分の二を占める内外のベストプラクティスを分析する形で、提言が構成されているので、納得性も高く、読んで面白い本である。

MOTのとってつけたようなケースではなく、このように本格的なケースを踏まえて、論理構成をする榊原先生のセンスには感動すら覚える。

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2007年1月 1日 (月)

抜く

476319657x 上原春男「「抜く」技術」、サンマーク出版(2006)

お奨め度:★★★★

著者の上原春男先生は佐賀大学で「海洋温度差発電」という資源を必要としない発電方法の研究に一生をささげている方だ。業界では著名な方だが、その活動は、大学の研究者の域を超えており、産官学を巻き込んだ活動をアクティブに展開されている。大学のキャリアの最後は佐賀大学の学長を勤められ、退官後、「海洋温度差発電推進機構」というNPOの理事長を勤められている。

そのようなキャリアの上原先生が「海洋温度差発電」というライフワークを通じで、「抜く」技術を習得され、製品開発や企業経営の中に活用され、多くの企業やプロジェクトを指導されている。そのエッセンスをまとめた一冊である。

この本は「車のハンドルのあそび」から話が始まる。

ハンドルにあそびがないと、車は怖くて運転できない。あそびにより、人間の無理な操作を抜き、急速な動作を緩める。ここに抜きの技術がある。

その次に出てくるのが、建物の強度。マンション強度偽装が行われたのは、記憶に新しいが、このときに話が分かりにくいと思った人は少なくないだろう。構造物の安全性は、素材の硬度や強度だけでは決まらない。構造が問題になるので、分かりにくかったのだが、そこにもはやり、無理な力がかかったときに抜く技術がある。

ダンパーなどもそうだが、エンジニアリング技術にはこの抜くという技術がたくさん使われている。上原先生のいわれる抜く技術のポイントは「抜いたものを如何に有効に使えるか」だという。海洋温度差発電もまさにこの技術である。

これはビジネス全般にいえることだというのが上原先生の主張だ。最近は押し一辺倒になっており、うまく行かなくなっている。もっと抜きとしての「引く」ことをビジネスに取り入れるべきだと主張されている。

ビジネスの駆け引きを想像してみればこれはよく分かるだろう。サッカーとか、アイスホッケーでパワープレイというプレイスタイルがある。終盤でどうしても点がほしいときに、攻撃陣を厚くして、押しまくるプレイだ。最近のビジネスを見ていると、パワープレイだけでものごとを済まそうとしている。勝ち負けだけを考える。これが、日本型経営の崩壊になっているという指摘はまさにそのとおりだ。

抜く技術の一つが捨てることを考える技術だ。上原先生は、これを現場指向と結び付けている。目からウロコ。一昨年辺りから現場主義の重要性が盛んに言われだした。戦略経営に振りすぎた振り子のゆり戻しだと思うが、現場主義の本質は、確かに、無駄をしないことにある。

さらに人間関係でもこの「抜く」技術は重要であると説かれている。人間関係をフレックスにする例をいくつか上げている。

そろそろ、こういうことを考えてもいいのではないかと思う。今の米国中のパワープレイにうんざりとしている人にお奨めの一冊だ。

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