イノベーションには「管理された、健全な戦い」が必要である
サジュ=ニコル・ジョニ、デイモン・ベイヤー(満園 真木訳)「ザ・ライト・ファイト」、出版社: アルファポリス(2010)
お奨め度:★★★★1/2
対立をイノベーションのためのリーダーシップツールとして活用することを提唱する一冊。思考レベルや、マンツーマンの行動レベルではなく、組織行動レベルで対立を使うことや、その際に必要になるリーダーシップについて述べている。イノベーションを企ててるマネジャーは必読の一冊。
サジュ=ニコル・ジョニ、デイモン・ベイヤー(満園 真木訳)「ザ・ライト・ファイト」、出版社: アルファポリス(2010)
お奨め度:★★★★1/2
対立をイノベーションのためのリーダーシップツールとして活用することを提唱する一冊。思考レベルや、マンツーマンの行動レベルではなく、組織行動レベルで対立を使うことや、その際に必要になるリーダーシップについて述べている。イノベーションを企ててるマネジャーは必読の一冊。
増田 宗昭「はじめて語られる企画の「虎の巻」 」、毎日新聞社(2010)
お奨め度:★★★★
プロフェッショナルファームとしての「企画企業」のあり方について、25年にわたり、CCC(カルチャーコンビニエンスクラブ)グループを率いてきた増田宗昭さんが持論を展開した本。CCCのプロモーション本みたいな気もするが、僕はTポイントカードは凄いと思っているので、素直に読める。もし、TUTAYAや、Tポイントカードを評価していなければ、宣伝本以外のなものでもないので、要注意。
タル・ベン・シャハー(成瀬 まゆみ訳)「ハーバードの人生を変える授業」、大和書房(2010)
お奨め度:★★★★★
「HAPPIER」で知られる、タル・ベン・シャハー教授の講義の実践ガイドブック。シャハー教授は授業で教わったことを実際の行動に移すことで、理論を自分のものとして吸収する方法を「リフラクション」と読んでいるが、本書は教授をはじめ、多くの(ポジティブ)心理学者の理論を実践に移すリフラクションのためのワークブックである。このワークブックによって、ハーバード大学のディヴィッド・パーキンスン教授が「生産的知識」と呼ぶ知識、すなわち、自分たちをとりまく世界をよく理解して、状況にうまく対処するための知識を育むことができる。
渡辺 三枝子、岸本 光永「考える力を伸ばす教科書―ダイアローグと論理で思考力を高める」、日本経済新聞出版社(2010)
お奨め度:★★★★
「考える力」が重要だとよく言われるが、考える力とはどういう力を明確にした書籍は少ない。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」のようなところがあるのだと思うが、本書は、「考える力」を定義し、ロジカルシンキングとダイアログによりその実現を提唱している。実は最初に読んだときには枯れ尾花と思ったのだが、読み直してみると、深い。人材育成のプログラム開発にたいへん参考になる一冊だ。特に、前半の考えることへの考察は類書がないような内容で、さすがその道の専門家だと思わせるようなおもしろさがある。
ユージン・サドラースミス(吉田利子訳)「直観力マネジメント 第六感が利益を生む! 」、朝日新聞出版(2010)
お奨め度:★★★★★
ソニーの盛田昭夫氏、スターバックスのハワード・シュルツ氏、ヴァージンレコードのリチャード・ブランソンなど、ビジネスにはひらめきや勘が重要であると主張する経営者は少なくない。直観はアート的なものだと考えられがちだが、本書では科学的に説明がつくという立場から、実際に直観とはどのようなもので、どのように働くかについて科学的な説明を試みている。その上で、直観をビジネスやマネジメントの中での活用する方法を提案している。分析だけではビジネスに勝ちきれないと考えているマネジャーや経営者必読の一冊である。
実は昨年から日経BP社の日経コンピュータという雑誌に、ビジネス書の杜として、書評の寄稿をさせて頂いています。
話せば長くなりますが、十年来の親交と、貸し借りのある谷島宣之さんが、一昨年日経コンピュータの編集長になり、依頼されて、ご協力のつもりで始めたのですが、その谷島さんは最初の寄稿をした号が出る前に、編集長を卒業。寄稿の方は、そのあとも続いています。
とりあえず1年経過しましたので、寄稿したリストをビジネス書の杜に掲載しておこうと思います。
ビジネス書の杜の記事もこのくらい、すっきりとまとめろという声が飛んできそうですが、これはプロの編集者の仕事ですので、僕なんかには到底、マネはできません。
実際のところ、毎回、最終原稿の倍くらいの分量のある書き殴りに近い原稿を渡し、半分くらいになってゲラがきます。文章としての原型は残っていないわけですが、意味は生きており、まあ、大したもんです。
紺野 登「ビジネスのためのデザイン思考」、東洋経済新報社(2010)
お奨め度:★★★★★
デザインに対する関心が高くなってきた。20世紀の工業デザインに変わり、21世紀の知識社会におけるデザインである知識デザインのあり方としてのデザイン思考について述べ、さらに、デザイン思考に必要な3つの方法論として、エスノグラフィーなどの質的研究方法論、ビジネスモデルデザイン、および、シナリオデザインについて解説した一冊。
ビル・ジョージ(梅津 祐良訳)「難局を乗り切るリーダーシップ―ハーバード教授が教える7つの教訓」、生産性出版(2010)
お奨め度:★★★★1/2
メドトロニック(世界最先端の医療テクノロジー企業)のCEO在任中の12年間に時価総額を11億ドルから600億ドルに高め、“Executive of the year”や“Director of the year”等に選出され、現在はハーバードビジネススクールの教授である著者が、難局におけるリーダーシップについて7つの教訓(レッスン)をまとめた一冊。一般的なリーダーシップではなく、難局におけるリーダーシップを、多くの知人やビジネススクールのケースなどを通じて得た教訓だけに気付かされることが多い。
一條 和生、徳岡 晃一郎、野中 郁次郎「MBB:「思い」のマネジメント ―知識創造経営の実践フレームワーク」、東洋経済新報社(2010)
お奨め度:★★★★★
目標管理(MBO)を補完する新しいコンセプトのマネジメント手法MBB(Management by Belief)=「思いのマネジメント」について、概念化し、ベストプラクティスを紹介しながら解説した一冊。MBOを左脳マネジメントとし、その限界を明確にし、新たに、右脳マネジメントとしてのMBBを提案している。
2010年のベスト1は、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」でした。昨年最後のメッセージにも書きましたが、まあ、ドラッカーの年でしたので、妥当なところでしょう。ちなみに、エッセンシャル版も5位に入っています。
といいたいところですが、実は、ここ2年、前年のビジネス書の杜Awardに選んだ本が第1位になるという流れがありましたので、その意味ではちょっと波乱です。Award2009の「「決める」マネジメント」は、10位に留まりました。Awardセミナーは好評でしたが、ちょっと、本は難しかったのかもしれません。
2位は「20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義」でした。今年は、この本がきっかけになり、マイケル ・サンデル教授の
マイケル・サンデル(鬼澤 忍訳)「これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学」、早川書房(2010)で流れができ、後半は大学講義録本の出版の嵐になったような感じがあります。
ビジネス書の杜でも、2位のスタンフォード大学以外に、11月発売の「ハーバードの人生を変える授業」が9位に入っています。これも書籍紹介は書いておらず、Twitterの紹介のみです。
さて、第3位には、楠木先生の「ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件」が入りました。この本は戦略解説本の概念を変える、新しいスタイルの名著だと思います。日本には戦略の読本がほどんとないので、このヒットをきっかけに今後、戦略読本のような本がたくさん出てくることを期待しています。楠木先生の本を読めばすぐに分かりますが、戦略は読本が向く領域だと思います。読本をたくさん読むことによって、戦略コンピテンシー、戦略センスが向上します。
僕は楠木先生の講義やセミナーを受けたことがありませんのでよくわかりませんが、この本、ひょっとして、講義の語りをテープ起こしして本にしたのではないかと読みながら思っていました。500頁は臨場感ではないかと。ひょっとすると、これも講義録のカテゴリーかも?
実は、この3位の本、実はビジネス書の杜に紹介記事を書いていません。夏の読書お奨め本として紹介した以外はTwitterで紹介しただけです。これは年間ベストセラー史上、始めてです。1月1日にベストセラーを集計して、急きょ、紹介記事を書いた次第です。
第4位は、「スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則」でした。この本もよく売れた本ですね。プレゼンテーションでは、プレゼンテーションZenも8位に入りました。
こう並べてみると、今年は珍しく、世の中の流れとビジネス書の杜があまり、かわらない感じです。おそらく、記事をあまりかけず、紹介している本自体が売れている本の比率が多かったためだと思います。今年は、一昨年までのようにビジネス書の杜だけのベストセラーというのをつくっていけるようにしたいと思っています。
なお、ビジネス書のAward2010は1月10日前後に発表の予定です。お楽しみに!
楠木 建「ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件」、東洋経済新報社(2010)
お奨め度:★★★★★
戦略は要素ではなく、ストーリーとして語られなくてはならないという考えに基づき書かれた戦略読本。戦略論のテキストに見られる概念的な説明ではなく、また、戦略実践書に見られるフレームワークを中心にした説明やベストプラクティスの羅列でもない。戦略とは何か、よい戦略というのはどのように考えてつくられているかを自分の言葉で淡々と事例をふんだんに使って語っている。新しいタイプの戦略の名書である。非常に巧みな語りで、さしむき、語り部による戦略論といった趣の一冊。500ページというボリュームのある本であるが、ボリュームを感じないのは語りの巧みさだろう。
今年はあまり、記事を書けず、ごめんなさい。忙しいとか、珍しく本を書いているとか、いろいろな理由はあるのですが、中でも、Twitterで、とりあえず、読了宣言をして、適当なタイミングで紹介記事を書くというリズムがうまくできていません。
また、思うところあって、書籍プレゼントを無期限休止し、記事を書く義務がなくなったことも少し、影響をしているように思います。このあたりを考え、来年はもう少し、記事の数を増やしたいなと思っています。
そんなわけで、毎年、お正月の恒例になっているビジネス書の杜のアワードの発表は少し遅れる予定です。
読んだ本の数はそんなに減っておらず、紹介記事が書けなかっただけですが、せめて、アワードの候補に選んだ本くらいは紹介記事を書いてからアワードを発表したいと思っています。
できれば、10日までには発表したいと思っていますので、お楽しみにお待ちください。
では、よいお年をお迎えください。
P.F.ドラッカー(上田 惇生 編訳)「 [英和対訳]決定版 ドラッカー名言集」、ダイヤモンド社(2010)お奨め度:★★★★★
待望のドラッカーの対訳集。上田惇生先生が選んだ120本。ドラッカーファンであれば見逃せない1冊だ。目標管理、民営化、などマネジメントにおいてドラッカーの提唱した概念は多い。その正しいニュアンスを知るには、この本は非常に役立つ。その意味で、すべてのマネジャーに目を通して欲しい本。
磯崎 哲也「起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと」、日本実業出版社(2010)
お奨め度:★★★★★
「isologue」で知られる公認会計士・磯崎哲也氏の初の単著。ベンチャーファイナンスを通じて、自らの起業、経営、ビジネス、仕事などに対する哲学をカジュアルに述べている。一から十まで体系的に書かれている本は珍しいので起業家や起業家予備軍の方にお奨めしたいのはもちろんだが、そこに書かれている哲学は一読に値する。その意味で、ビジネスに関わる人すべてにお奨めしたい。書き方が平易で読みやすい本なので、さまざまな分野で専門家として活躍する人が、ビジネスや仕事の仕方、ファイナンスについての基礎を得たい場合には特にお奨めしたい。
藤井 清孝「グローバル・イノベーション 日本を変える3つの革命」、朝日新聞出版(2010)
お奨め度:★★★★1/2
「グローバルマインド」で、日本人は正解のない問題に弱いという問題提起をした藤井清孝氏の続編。グローバルマインドを持つための3つのソリューション(イノベーション)を示している。藤井氏はマッキンゼー出身で、現在はベタープレイスという電気自動車のインフラビジネスを手がける企業の日本法人の代表だが、キャリアの中でケーデンスやSAPというITやソフトウエアビジネスの会社の日本法人の代表も務めており、特にこの分野で経営や組織マネジメントに携わる人にはぜひ読んでいただきたい一冊である。
遠藤功「「日本品質」で世界を制す!」、日本経済新聞社(2010)
お奨め度:★★★★★
最近の品質事故を引き合いに出しながら、「品質」管理の問題を分析し、これからの品質管理の視座を示すと同時に、それが日本企業のグローバル競争力となり、In-Outにも、Out-Inにも決定力になることを示唆した一冊。現場の品質管理担当者に新たな視点を与えるととにも、経営スタッフに品質管理への取り組みの視座を与える。製造業、IT業、サービス業などを中心にすべての人に読んでほしい本。
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