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2010年12月28日 (火)

起業家のバイブルになるだろう

4534047576 磯崎 哲也「起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと」、日本実業出版社(2010)

お奨め度:★★★★★

「isologue」で知られる公認会計士・磯崎哲也氏の初の単著。ベンチャーファイナンスを通じて、自らの起業、経営、ビジネス、仕事などに対する哲学をカジュアルに述べている。一から十まで体系的に書かれている本は珍しいので起業家や起業家予備軍の方にお奨めしたいのはもちろんだが、そこに書かれている哲学は一読に値する。その意味で、ビジネスに関わる人すべてにお奨めしたい。書き方が平易で読みやすい本なので、さまざまな分野で専門家として活躍する人が、ビジネスや仕事の仕方、ファイナンスについての基礎を得たい場合には特にお奨めしたい。

本書は、ベンチャーファイナンスの全体像を説明し、日本社会の特殊性について説明している。ここではキャピタルゲインなどの基本知識以外に、
・投資家は何をもとめているか
・会社を潰すことは悪いことか
といった分かっているようで意外と分かっていないことについて著者の考えを明確に書いてあるので、頭をすっきりさせて本書を読み進めていくことができる。

個別論としては、まず、「会社の始め方」から解説している。著者は、起業でもっとも大切なものは初期の計画だと言う。そして、初期計画のポイントになる
・個人と会社の違い
・ベンチャー企業を始めることはどういうことか
・会社の種類
・法人化のタイミング
などについて解説している。また、法人化の際の資金調達で、現物出資やエンジェルから出資を受ける際の留意点について解説している。さらに、増資をする際にベンチャーキャピタルとどのようにつきあうべきかについても解説している。とにかく、書かれている内容は実践的であり、そのまま役立つと思われる。

次は、「事業計画」について述べている。著者が事業計画の重要性として上げているのは
・考えがまとまり、説得力の話をできるようになる
・センスだけでは永続性がない
・不確実性に対して、投資者のコミットメントを得る
などである。そして、そのような目的から、具体的に事業計画書の構成や記載項目、記載上の留意点などを具体的に説明している。

特に、説得力があるのは、著者の

経営は数字だけではできない。しかし、結果は必ず数字に表れる

という経営観であり、その経営観に裏打ちされた事業計画のノウハウが示されている。また、計画書のサンプルも掲載されており、参考になる。

次は、「企業価値」について説明している。企業価値の話は漠然としたイメージは多くの人があると思うが、具体的な話になると、小難しい話になり、なかなか、ハードルが高い。この本では、事業価値、企業価値、資本価値をきちんと分離しながら、正確にかつ、わかり易く書かれている。全般的に突出した本だが、この部分がこの本の最も特徴的な部分ではないかと思う。企業評価の方法として、
・純資産法
・類似企業比準法
・DCF法
などの基本的な手法を説明した上で、実務上は投資家はEXITから逆算するという指摘をし、人によって評価は異なる、最終的には需給で決まるとまで言い切っている。

後半はストックオプション、資本政策などについて解説している。この部分の解説も平易でわかり易い。

好川もこれまで10社以上の起業や、支援に関わってきたのでそれなりに経験知はある積もりだが、目からウロコという指摘も少なからずあった。また、全体の体系がよくできている。15年前にこの本を読んでいたら、もっとうまく、起業支援ができたかなと思った次第である。

 

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