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2011年1月10日 (月)

「企画人間」の条件

4620319821 増田 宗昭「はじめて語られる企画の「虎の巻」 」、毎日新聞社(2010)

お奨め度:★★★★

プロフェッショナルファームとしての「企画企業」のあり方について、25年にわたり、CCC(カルチャーコンビニエンスクラブ)グループを率いてきた増田宗昭さんが持論を展開した本。CCCのプロモーション本みたいな気もするが、僕はTポイントカードは凄いと思っているので、素直に読める。もし、TUTAYAや、Tポイントカードを評価していなければ、宣伝本以外のなものでもないので、要注意。

まず、最初にTポイントカードについて説明しておこう。本書でも、5章をまるまる割き、説明されている。Tポイントカードはもともと、TUTAYAのハウスポイントカードだったが、2006年より、オープン化している。つまり、複数の企業が自社のポイントカードとして使えるものになっている。ハウスカードであるので、ポイントがたまったり、イベントに参加したりできる、また、クレジットカードをつけることもできる。

Tカードの面白いのは、上に述べたようにオープン化していることだ。つまり、TUTAYAのポイントカードとしても使えるし、ファミマのポイントカードとしても使える。ネット企業も参加している。

つまり、Tポイントカードは一般的なポイントカードとはコンセプトが違う。ハウスカードは顧客の抱え込みが目的である。そのために百貨店のように過剰サービスを行い、収益を圧迫しているケースすらある。Tカードは企業間ネットワークにより、顧客価値を生み出すと同時に、企業同士の収益向上を実現することが目的である。この違いが企画力だということになる。

増田さんの企画の定義は、いくつかの表現で書かれているが、

企業が求めている「どういうモノを作るか」、「どういう売り方をするか」、「どういう仕事をするか」ということであり、「どういう」の部分が企画だという。そして、これは企業の収益に直結するものだ

というのがもっとも本質的な定義だと思われる。この定義に基づき、増田さんはこれからのビジネスについて、マーケットインから、プロダクトアウトに変わっていくべきだという。

モノが余っている時代には、顧客のニーズを取り込んでモノを作っても、売れるとは限らない。一方で、、企業は前年度比ばかりを意識している。増田さんは、日本のビジネスの問題の一つだと断言する。つまり、前年度比という結果を追いかけるために企業の目線はどんどん顧客から社内に向く。そして、てっとり早く結果を得るために市場のニーズに合致した商品やサービスを作り、売上げを立てようとする。しかし、実際にはモノは余っているのでこの手法では売上げは述べないというのが増田さんの考えだ。

そこで、プロダクトアウトが重要になってくる。ちょっと補足すると、マーケティング的には高度成長期のプロダクトアウトからマーケットインに移行していった経緯があるが、実はその当時のプロダクトアウトと増田さんのいうプロダクトアウトは違う。当時のプロダクトアウトは「できるものを作って売る」という意味のプロダクトアウトであった。つまり、企業の能力ありきの考え方だ。もちろん、市場の方向性(というか行政の示す方向性)に従って、企業能力の向上には取り組んだいたわけだが、本質的にできることで商売をすることに本質があった。

しかし、今、増田さんが求められていると主張するプロダクトアウトは、「企業サイドがこの商品こそ世の中の人々が求めているものだ」と開発した商品を顧客に届けるビジネススタイルである。言い換えると、「企画ありき」で、企業能力はそこに焦点を当てて開発していかなくてはならない、もし追いつかなければ調達が必要になる。言い換えると、戦略マネジメントなのだ。

では、そのような企画力を持つにはどうすればよいか。企画人間を作らなければならない。増田さんの考える企画人間は

・情報を組み合わせることができる
・お金を出したくなる企画を作る
・好感度が高く、人から好かれる

ことが3つのポイントであるという。


僕は門外漢なので、プロフェッショナルとして企画を提供する人にとってこの本に書かれているCCCの実態がどの程度のレベルのものかよく分からない。特に、最後にある企画セオリー20カ条がどのくらいのレベルのものか分からない。

しかし、Tポイントカードの例を見ると、これからの企画の本質はインフラのアイデアの提供にあるように思う。つまり、ソーシャルイノベーションの要素があり、ソーシャルネットワークに参加することによって企業が利益を上げることができることが求められているように思える。

ホームページで見る限り、Tポイントカードはまだ、成功だとは言えないような状況だと思う。ただ、この企業は増田さんが経営している限り、ソニーがフェリカで失敗したような欲を出して、インフラとサービスを両方やるような失敗はしないと思う。その意味で、これから楽しみである。

同時に、もっと重要なことは、これからは一般のビジネスパーソンが企画力を求められる時代にである。そのために企画のハウツー本を読むよりは、まず、企画とは何か、企画の目的は何かという哲学をしっかりと持つべきだと思う。そのためには、CCCの宣伝臭さを我慢しながらでも(笑)読む価値のある本だ。

 

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