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2015年5月25日 (月)

【新連載・プロジェクトの生産性について考えよう】第1回~生産性とは

Seisannsei

◆はじめに

「生産性向上」が注目されている。PM養成マガジンでも、生産性の向上に注目した連載記事を書いてみようと思い、新連載を始めることにした。

生産性に関する議論の中で、日本は製造業の現場の生産性は高いが、ホワイトカラーやサービス業の生産性は低いといわれる。しかし、そもそも何を言っているんだという受け止め方をしている人も少なくないので、まず生産性の概念について世の中でどのようなことが言われているかを紹介して置こう。

独立行政法人経済産業研究所がJIPデータベースというところに生産性の説明を掲載している。この説明をベースにして、少し、違ったことも含めて説明したい。


◆生産性とは

生産性とは経済学で考えられた概念で、生産活動における生産要素の寄与度を表す指標である。一般的にいえば

生産性=アウトプット/インプット

となり、なんからのインプットに対して、どれだけのアウトプットを出すことができるのかが生産性ということになる。これがコンセプトだといってもよい。

アウトプットは付加価値である。付加価値は売値からコストを引いたもので、コストを発生させるのはインプットである生産要素である。代表的なのは労働力と資本で、前者をインプットとする場合、「労働生産性」、後者をインプットとする場合、「資本生産性」と呼ばれることが多い。生産性という言葉は労働生産性を指している場合が多い。

労働生産性を上げるには、労働力に遊びがでないように仕事を割り振ったり、労働者のスキルを高めて効率を上げることが必要になる。

これに対して、資本をインプットにする生産性の概念もある。ここでいう資本とは、工場の機械だとか、運送業のトラックとか、ホテルの部屋などを意味している。

両者の生産性には、労働生産性を上げるには、労働力が遊ばないように資本を多くする必要があるが、資本が多すぎると資本生産性が下がる。こういう関係にあるので、どちらかの生産性が高ければいいというものではなく、両者のバランスが重要である。そこで、本当の意味での生産性を見るには、両者を統合した指標が必要である。

それが全要素生産性(Total Factor Productivity, TFP)という指標で、言葉の通り、工場のトータルの生産性であり、労働力と資本のバランスを見る指標になる。


◆ホワイトカラーの生産性はKPIが必要

モノづくりにせよ、サービスにせよ、活動がいわゆる生産活動の場合には、こういった関係は比較的明確であるが、ホワイトカラーの生産性という議論は曖昧である。付加価値の定義があいまいなためだ。

そもそも付加価値という概念があまりそぐわないのかもしれない。その代わりになる、ROIやKPIが必要である。モノづくりには明確なプロセスと品質基準があり、中間のKPIも明確であるのに比べると、ホワイトカラーの仕事は生産の上流工程の設計業務ですら、KPIが明確になっているとはいいがたい。

このような状況の中で、生産性の議論をするのは無理があり、残業が多いとかといった現象的の解消に置き換わることになる。あるいはホワイトカラーエグゼンプションのように生産性の管理を個々人に任せてしまうような方向に向かうことになる。

ちなみに、ホワイトカラーエグゼンプションは生産性ということでいえば、インプットの管理を個人に任せていることになる。

このやり方はかなり本質的な話で、背景にホワイトカラーの仕事というのは、インプットとアウトプットの関係が工場の作業のように明確ではないし、個人に依存するという事情がある。だが、別の言い方をすればマネジメントの放棄であり、やはり、KPIは必要を定義し、生産性の管理をする必要があるという考え方もあるだろう。

◆インプットだけの議論でいいのか

また、ホワイトカラーの仕事、特にプロジェクトで行う仕事には別の側面がある。お気づきになった方もいると思うが、以上のような生産性の議論はインプットの議論、つまり、インプットをどうすれば小さくできるのかという「効率」の議論である。

言い換えると、生産が生み出す価値は一定だという前提で、どうすれば付加価値を大きくできるのかという議論だ。工場での生産についていえば、東京大学の藤本隆宏先生の言われる設計情報を素材に転写する仕事なので、設計情報以上の価値が生まれることはなく、当然こういう議論になる。サービスでもしかりである。

ただし、生産性の式をみれば分かるように、生産性を上げるにはアウトプット、つまり価値を大きくするという方法がある。

設計業務やマーケティングなどホワイトカラーの仕事の一部は、設計情報を作る仕事であり、別の生産性向上の方法を考えることができる。それがアウトプットを大きくする、つまり、設計の生み出す価値自体を高めることである。平たくいえば、効率化してコストを下げるのではなく、高く売れるものを作ることによって生産性を上げる方法だ。


◆効率を上げても残業はなくならない

残業の問題を考えてみてほしい。効率だけをいくらあげても、生み出しているものの価値が小さければ付加価値は大きくならず、そこに売上げや収益目標があれば長時間労働するしかない。サービスでもそうだ。客単価が低ければ長時間働くしかない。平たくいえば、貧乏暇なしである。国際比較で日本は生産性が低いという調査結果はこの問題を反映していると思われる。

日本の企業は長い間、頑張ることが評価されて、その結果をあまり問われなかった。言ってしまえば、頑張ってできることをやってきたし、頑張りで成長してきた。しかし、それでは成長ができなくなり、戦略経営で、達成ゴールを決めた経営を始めた。しかし、価値の増大に真剣に取り組んでこなかったので、長時間労働をするしか目標達成をする方法がない企業が増えている。


◆プロジェクトの生産性

この問題は生産性ではなく、創造性の問題としてイノベーションの議論になることが多いが、プロジェクト活動に関していえば、生産性の問題と切り離して議論できない。コストやスケジュールなどの資源の制約条件がある中で、価値を大きくすることとを考えざるを得ないからだ。

戦略ノートの中でプロジェクトの生産性についてはなんどか触れたが、プロジェクトの生産性というのは資本ではなく、資源に対する生産性だといってもよい。言い換えると、時間の制約、予算の制約がある中で、時間やコストを抑えながら、価値を高めていくことにより生産性を上げていくのがプロジェクトだ。

この議論をするためにここに一つ造語を作りたい。それは資源生産性である。これは単位当たりの資源(時間と資本)からどれだけの価値を生み出すかを示す指標だ。

一般的な全要素生産性が、労働生産性と資本生産性で考えられるのと同じように、プロジェクトの生産性は労働生産性と資源生産性で考える。

この連載では、このような基本スタンスで、プロジェクトの生産性を上げるにはどうすればよいかを考えていきたい。

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好川哲人

技術士&MBA 技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。