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2012年5月 7日 (月)

【10周年】第3回は、プロジェクトマネジャーのためのデザイン入門

EthnoPM養成講座10周年記念セミナーも第3回を迎えます。6回のセッションの中で、好川が個人的にもっとも関心があるのが、第3回のデザイン思考です。今回の棚橋さんのワークショップでは、デザイン思考の本質だと思う行動観察を取り上げて頂きました。

僕が行動観察の重要性に最初に出会ったのは、もう20年近く前になります。マネジメントの大家の一人であるヘンリー・ミンツバーグ博士がマネジャーの業務の実態を調査し、結果をまとめた「マネジャーの仕事」という著書があります。マネジャーは、当時考えられていたようにまとまった体系的な仕事をしているわけではない。短い時間で終わる雑多な仕事をつぎから次に処理していることを見つけた名著ですが、この調査で使われたのは行動観察です。実際に、マネジャーの行動を観察し、常識とは異なる事実を発見したわけです。

「百聞は一見にしかず」という言葉がありますが、まさに、これですね。


この数年、ビジネスマンの間でもマーケティング活動を中心に、行動観察に関心を持つ人が増えています。たとえば、プロトタイプを作り、実際に使っているところを観察し、観察の結果を商品の仕様に結びつけていくわけです。そうすることによって、頭で考えたり、インタビューだけでは出てこないアイデアが出てくることがあります。

顧客要求分析の難しさは、顧客が自らの要求を的確に認識できないことにあります。コンシューマー商品であれば、メーカが販売する商品の取捨選択をすればいいわけですが、情報システムのような一品ものだとこの問題は非常に深刻な問題です。実際に、自分たちの要求として求めたものが実は不要なものだったということは珍しいことではありません。

そこで、プロトタイプを作って、実際に使ってみて自分たちが欲しいものかどうかを判断するわけですが、情報システムに関していえば、プロトタイプもそんなに有力な手段にはならないことがあります。それは、その情報システムによって自分たちの行動やものの見方が変わるようなケースです。つまり、ユーザはそのシステムを利用することによって自分たちにどのような変化が起こるかを想像し、その上でそのシステムが欲しいものかどうかを判断しなくてはならないのです。これは、一般のユーザには無理です。

そこで、行動観察です。プロトタイプを使っているところを、システムのプロの眼で観察し、システムが導入されたときの仕事の仕方を想像し、それについて話し合いを行いながら、ユーザの要求を明確にしていきます。これがデザイン思考であり、その中での行動観察の役割です。

さて、行動観察は顧客の要求定義だけではなく、問題解決の有力な手段になります。問題解決でもっとも難しいのは問題を発見することですが、行動観察により、通常では気づかない問題の存在に気づき、レベルの高い問題解決が可能になります。

僕は行動観察に出会ってから、できるだけ問題解決の際には取り入れるようにしています。時間がかかるという特性がありますのでどんな場合にもとはいきませんが、問題が複雑な場合には必ず時間を取って入れるようにしています。時間がかかっても、解決策の策定の段になってから問題定義がイマイチだとやり直すよりははるかに効率的です。

たとえば、スケジュールがだんだん遅れてきたとします。このときに、「机の上」で考える問題は、見積もりのミスとか、「スキル不足」だったりするわけですが、「現場」で一人一人の行動を見ていると、それぞれが一人で仕事を抱え込んでおり、すぐにコミュニケーションが足らないといった問題が見つかったりします。「机の上」で考えると、コミュニケーションの問題は、コミュニケーション不足による手戻り発生といったタイミングで認識されることが多く、パフォーマンスの問題で認識されることはほぼ、ないといってよいでしょう(プロジェクトマネジャーの経験値が大きければ別ですが)。

阪ガス行動観察研究所の所長・松波晴人さんは著書「ビジネスマンのための「行動観察」入門」の中で、行動観察は、欧米では、商品開発、生産性の向上、個人の能力開発など、さまざまな分野で導入され、成果を上げていることを紹介されています。

この機会に行動観察を学び、自分の分析や問題解決の幅を広げてみるチャレンジをしませんか?


━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆開催決定☆━
【PM養成マガジン10周年記念セミナー】
第3回 未来のユーザー要求を創出する方法としてのデザイン思考
日時:2012年06月09日(土) 13:30-16:30(13:00受付開始)
場所:カタリストBA(東京都世田谷区) 
講師:棚橋弘季 (株)コプロシステム 商品計画研究所シニアコンサルタント
詳細・お申込 http://www.pmstyle.biz/smn/pm_magazine10_3.htm
主催 PM養成マガジン(運営:PMstyle)
3PDUを発行します。
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【カリキュラム】
・講義
・ワークショップ1 行動観察
・ワークショップ2 観察結果に基づく分析~ブレインストーミング
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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。