2009年11月 9日 (月)

【PMスタイル考】第1話:プロジェクトデザイン

◆プロジェクトデザインとは

第1話のテーマは「プロジェクトのデザイン」です。

プロジェクトのデザインというのは耳慣れない言葉かもしれませんが、大切な概念です。プロジェクトのデザインとは

プロジェクトで何を(広い意味での)顧客に提供したいかを明確にし、その方法の概略を決めること

です。簡単にいえば、プロジェクトの土台作りです。


◆プロジェクトデザインの留意点

プロジェクトのデザインにあたって、留意すべきことが3点あります。

(1)プロジェクトの成果物(プロダクト)とプロジェクト成果の関係(目的)
(2)不確実さへの対処(シナリオ)
(3)プロジェクト環境の設定(条件)

の3つです。

(1)は成果物と成果は違うということです。成果物は、システムであったり、商品であったりします。プロダクトと呼ばれるものです。一般には、これがプロジェクトの成果のすべてにはなりません。プロジェクトの成果は、プロダクトを通じて顧客や自組織に提供するもの、あるいは、プロダクトの開発を通じて自組織に提供するものといったケースがほとんどです。例えば、開発した商品でユーザに対して利便性(ベネフィット)を提供できた、開発した商品で自社シェアの拡大をもたらしたといったことです。

(2)はプロジェクトのデザインは、複数の選択肢を考えておく必要があるということです。プロジェクトのプロジェクトたる所以は、不確実性です。成果物の達成手段は計画で検討され、不確実性はリスクマネジメント計画として扱われます。しかし、成果達成の手段の不確実性は計画レベルでは扱うことができませんので、あらかじめデザインの段階で複数案を検討しておく必要があります。例えば、現有の自社技術では対応できない商品ラインナップを増やすという「成果」が期待される中で、商品を一から開発するのか、既存部品の組み立てで対応するのか、OEM提供先を探すのかといった選択肢は、デザインの中でそれぞれ、どのような展開が考えられるかを検討しておき、その上で、もっとも優先するアプローチを決める必要があります。

(3)はプロジェクトを実施する条件です。特に、選択したアプローチを実施する際には、どのようなことが「前提」になっているのかを明確にする必要があります。これは、(2)でどのアプローチをするかを決める際にたいへん重要なファクターになってきます。

◆プロジェクトデザインをしないプロジェクトは基礎工事をしない建物

このようなプロジェクトのデザインは構想計画と呼ばれることもありますが、プロジェクトの計画の土台になるものです。いくら完璧な計画を作っても、土台がしっかりとしていなければどこかで崩れてしまいます。また、計画変更を要するトラブルが生じたら、あっという間に崩壊してしまいます。

プロジェクト計画の充実に力を入れることは重要ですが、計画の基礎工事であるプロジェクトデザインに力を入れていくことが、特に大規模で不確実性の大きいプロジェクトでは求められます。

2009年11月 5日 (木)

【補助線】顧客視点とはプロダクトライフサイクルの視点

◆プロダクトライフサイクルとプロジェクト

先日、第6回のPMstyleスペシャルセミナーを開催した。テーマは戦略経営におけるプロジェクトマネジメントのあり方。

フロアディスカッションの中で、顧客視点の話が出てきた。いつものことながら、IT業の人たちは、プロダクトのライフサイクルについて考えているのだろうかという疑問を持つ。

顧客の要求をうまく引き出し、また、品質管理に全力を尽くし、顧客が満足するシステムを提供しましょう

という。これはすばらしいことだと思う。

だが、システムのライフサイクルを考えて見ると、短くとも5年、長ければ10年を超えるようなことも少なくない。すると、当然のことながら、5年~10年先にどのようなシステムが求められるかという議論が必要になる。必然的に、本当にこういう議論ができるのかという疑問が生じる。

今の時代、5年先に組織や業務が現状のままと思っているとしたら、危機感がないと怒られるのが関の山である。ましてや10年となると、なくなっていてもおかしくない。組織や事業が変われば多くの場合、システムに求められるものも変わる。

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2009年10月28日 (水)

【補助線】提案はコンテンツではない、コンテクストである。

◆提案の要件

提案では、「提案内容」が問題になる。よい提案を作るには、相手(顧客)をよく知り、顧客の視点で考え、必要だと思うことを提案すればよい。そのためには、顧客とのコミュニケーションを適切にできることが重要である。

みなさんはこの文章を読んでどう感じるだろうか?

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2009年10月27日 (火)

PMサプリ193:目的を持って意志決定をする

「目的観」がないのに、意志決定してはならない(本田直之、レバレッジコンサルティング代表取締役)

◆目的が選択肢を生む
◆あるクライアントで
◆目的のある意志決定はマインドの問題
◆周囲と目的を共有することによって目的観が生まれる

【効用】

・PM体質改善
  リーダーシップ発揮、問題解決能力向上、計画力アップ、実行力アップ
・PM力向上
  ピープルマネジメント力向上、チームをまとめる力の向上、リスク対応力向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上、チームの士気向上

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2009年10月20日 (火)

【マネジャーのためのプロジェクトマネジメント:2】ゴールブレークダウンストラクチャー(GBS)

◆プロジェクトマネジメントのトライアングル

プロジェクトマネジメントのトライアングルというのがある。プロジェクトの制約を表現するもので、基本的には

・スコープ(プロダクト品質)
・タイム
・コスト

であり、この3つの要素のバランスをうまくとり、プロジェクト品質を向上させるためのマネジメントを行う。あるいは、ITなどの受注型のプロジェクトでは、スコープを目標と考え、目標達成のためのマネジメントを行うという考え方をするケースもある。この場合は、プロダクト品質がプロジェクトの品質になる。

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PMサプリ192:プロは期待を上回る

プロのビジネスパーソンが評価される基準は「期待」(清水久三子、IBMビジネスコンサルティングサービス・アソシエイトパートナー)

◆プロは期待を上回るパフォーマンスをする
◆プロジェクトとは課題である
◆期待を上回るには
◆課題設定力の高い人は、目的から付加価値を見つける

【効用】
・PM体質改善
  リーダーシップ発揮、顧客感度アップ、問題解決能力向上
・PM力向上
  ピープルマネジメント力向上、チームをまとめる力の向上、リスク対応力向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上、チームの士気向上

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2009年10月13日 (火)

【補助線】リスクを制約条件として捉える意味

◆制約条件は6つ

PMBOKのプロジェクトマネジメントの対象となる制約条件が、従来の3つ(4つ)から6つに変わった。

・スコープ
・品質
・スケジュール
・予算
・資源
・リスク

説明としては、これらの要素は相互に影響を与えるため、そのバランスが重要であるという説明にとどまっているが、なかなか、興味深いのは5つのベースラインに加えて、リスクが入っていることである。

他の5要素が変わるとリスクも変わるので、リスクも併せてどうするかを考えなさいといえば一見当たり前のように思えるが、実はそうでもない。

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PMサプリ191:「おもしろい成果」を生み出す鍵は「コンテキスト」にある

一歩先を行く「おもしろい成果」を生み出す鍵は「コンテキスト」にある(杉野幹人、内藤純、A・Tカーニー社マネジャー)

◆コンテンツとコンテクスト
◆マネジメントにおけるコンテクストの重要性
◆「おもしろい成果」とは
◆「成果物」はコンテンツ、「成果」はコンテクスト

【効用】
・PM体質改善
  創造力アップ、バランス感覚の洗練、顧客感度アップ、問題解決能力向上、
・PM力向上
  チームをまとめる力の向上、ピープルマネジメント力向上、リスク対応力向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上、チームの士気向上

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2009年10月 9日 (金)

【マネジャーのためのプロジェクトマネジメント:1】10歳の太郎君と40歳の太郎氏

◆10歳の太郎君と40歳の太郎氏

太郎の10歳の夏休み。

父親「もう、夏休みの宿題は終わった?」
太郎「自由研究以外は終わったよ」
父親「自由研究は何をするんだい」
太郎「1週間の星の観察にしようと思ってるんだ」
父親「なぜ、星の観察をするの」
太郎「担任の先生が1週間の星の観察をすればいいと思うと言ってたから」

太郎君は健やかに成長し、大学を卒業、IT企業に就職する。とりあえず、上司のいうことをよくきく、覚えめでたい社員で、順調に出世。40歳で課長になる。ある日のこと。

部長「A社のプロジェクトのスコープは決まった?」
太郎「はい、部長」
部長「どんな感じになった?RFPと大きな相違点はないかい?」
太郎「A社担当の佐藤さんはシステムをよく分かっていて、細かく要求仕様を出してくれました。このプロジェクトは私が係長のときから目をかけている井上君を担当にしました。私は細かいところはよく分かりませんが、井上君はこれなら予算、納期とも大丈夫だと言ってくれました。RFPはRFPですので、現実に受注条件をクリアできる方が大切です」

実は、この2つは両方とも実話だ。もちろん、同一人物ではないが、10歳の太郎君が健やかに成長すると40歳の太郎氏になると思った話を2つ並べて見た。

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2009年10月 8日 (木)

【補助線】プロジェクトマネジメントエグゼクティブ

◆プロジェクトマネジメントエグゼクティブとは

企業(組織マネジメント)には、エグゼクティブと呼ばれる人たちがいる。

エグゼクティブとは、組織運営に関して、「重要かつ決定的な意思決定を行っている人たち」で、一般的には上級管理職、経営幹部、重役などを指す言葉である。

これと同じようにプロジェクト(プロジェクトマネジメント)にもエグゼクティブと呼ばれる役割の人がいる。

プロジェクトマネジメントエグゼクティブの役割は

「プロジェクト運営に関する重要かつ決定的な意思決定を行っている人たち」

である。これは一体誰だろうか?

プロジェクトマネジャー?
プロジェクトマネジメントオフィス?
上位管理者?

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。