【戦略ノート258】失敗を重ねるプロマネに欠落する「概念的思考力」
◆エンジニアの一流と超一流の違い
エンジニアは「ものごとを具体的にモノで考えてナンボ」という商売である
と思われている。機械のエンジニア、プラントのエンジニア、ケミカルのエンジニア、ITのエンジニアなど、一流のエンジニアはすべてものごとを具体的に考える能力にたけている。
しかし、具体的に考えるだけでは、「超一流」のエンジニアにはなれない。あなたの周囲にもし、超一流のエンジニアだと思われる人がいれば、観察してみてほしい。必ず、ものごとを概念的に考えている。概念的に考えた上で、具体的な設計に落としている。なぜ、概念的に考えるのか?それは、新しいことを考えるには、理論や智慧に立ち返る必要があるからである。理論のレベルで考えて、問題を解決し、それを具現化し、具体的なものにしていく。つまり、理論という人類の共通の智慧を活用できない限り、超一流のエンジニアにはなれない。
そもそも、エンジニアの主業務である設計とは概念的な仕事である。にもかかわらず、具体的な思考だけでも優れた設計ができるには、訳がある。知識と呼ぶものである。知識にもいろいろあるが、一番簡単なものは、事例である。設計であれば事例を参考にして設計するので、具体的な思考だけでも設計できる(そこに、特徴をみた事例の選定とか、カスタマイズのところなどに、概念的思考のスパイスを振り掛ければ十分だ)。
ただ、これでは歯が立たないことがある。まったく新しいものの設計だ。いままで、企業では、この部分は超一流のエンジニアが担当していた。そして事例ができれば、一流のエンジニアでもそれを知識として使って設計ができるようになる。
僕がエンジニアだったころにそんなことを考えていた。もちろん、自分ひとりでその境地に達したわけではなく、会社で先輩からいろいろと聞かされたり、本を読んだり、大学の先生との付き合いの中でそんなことを聞いたりした。中でも、人工知能の開発の仕事に従事したときに、頭の整理ができたように思う。
しかし、このような構図はもう通用しなくなった。新しいものがどんどん求められるようになってきた。イノベーションだ。すると、新しいものを設計しなくては一流のエンジニアの地位は危うい。
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