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2020年5月 5日 (火)

【コンセプチュアル講座コラム】正解がない問題に対応するクリティカルシンキング

バックナンバーはこちら https://mat.lekumo.biz/ppf/conceputual_col/
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Critical2

◆変わってきた「正解がない」という意味
 
10年前には「正解がない」という言葉を人によってさまざまな答えがあるという風に考える人が多かったように思います。しかし、今、正解がないという意味は全く違います。本当に答えが見つからないないのです。
 
コロナを例にとればよく分かると思います。
 
コロナの治療にいろいろな薬が効くとニュースになっていますが、いわゆる「特効薬」はありません。同じ薬が効く人もいれば、効かない人もいる。これは、別の治療薬の転用だから専用の薬ができれば特効薬ができると考える専門家がいると同時に、本質的に特効薬がないウィルスではないかと心配している専門家もいるようです。
 
ビジネスにおいても、VUCA時代に突入しており、正解がない問題という場合には、特効薬がないケースが圧倒的に多くなっています。しかし、人は心のどこかで特効薬になる正解を求めています。
この意識を変え、対応するスキルを身に付ける必要があります。
 

◆ロジカルシンキングでは意思決定できない
 
その代表がクリティカルシンキングです。ロジカルシンキングを正解を求める手法だと考えている人は少なくありません。こういう人は、ロジカルシンキングを意思決定に使えると考えていますし、実際に使おうとします。
 
しかし、これをやろうとすると、膨大な情報が必要になってきます。そこで、論理的に意思決定をするために、まず、情報を集めようとします。しかし、いくら情報を集めても論理的に完璧な判断はできませんし、結局、決定できないまま、時間切れで追い込まれて、時間がなかったと言い訳をして、一応「現時点」での結論を出すことになります。
 
このような現象はよく見かけますが、これは情報収集のスキルの問題ではなく、論理で意思決定ができると思っている誤解している点に原因があります。
 
ロジカルシンキングは「物事を体系的に整理し、筋道たてて矛盾なく考える思考法」です。これから分かるように、ロジカルシンキングには2つの要素が含まれています。一つは、「全体と部分の包含関係」を整理することであり、もう一つは「部分と部分の因果関係」を整理することです。
 

◆ロジカルシンキングの例
 
事業でよくある一つの例を挙げます。経営基盤の強化したい(目的)と考えている企業があり、そのために売上げをアップすることを目標にしていたとします。
 
売上高は、
 
購入者数×客単価×購入頻度
 
となりますので、
 
全体:売上高
部分:購入者数、客単価、購入頻度
 
というのが「全体と部分の包含関係」になります。これに対して、例えば「SNSを使えば、購入者数が増える」というロジックに注目すると、
 
結果:SNSを活用する
原因:購入者数が増える
 
という関係がありますが、これが部分と部分の因果関係になります。
 
このようにして、全体と部分、関係を整理してものごとの筋道を立てるのがロジカルシンキングです。
 

◆ロジカルシンキングの生命線
 
これを実行すれば、目的の実現方法をロジックでを決めることができると思うかもしれません。つまり、SNSを活用すると、購入者数が増え、それによって売上げが増え、経営基盤が強化されるという関係があると考えられるからです。
 
しかし、これらの関係には「前提」があることに注意する必要があります。前提が正しいということが、ロジカルシンキングの生命線です。
 
前提は課題(目的)に依存します。例えば、上での例で経営基盤を強化するという経営課題のために、売上げを伸ばすという目標を設定しているわけですが、ここには売り上げが大きくなると経営基盤が強くなるという前提があります。ロジカルシンキングには必ずこのような前提があります。
 
ところが、経営基盤を強くするという経営課題の実現方法は、売上げを大きくすることではなく、利益を多くすることかもしれません。このように考えると、前提が成り立たなくなり、購入者が増える→売上げが増える→経営基盤が強化するというロジックは成り立たなくなります。
 
このように、、考えるという場合には、前提が適切かどうかを考えなくてはなりません。論理が完璧であればあるほど、前提が間違っていれば結論は大きくずれてしまうことになります。つまり、論理的に考える場合には、前提を疑わなくてはならないのです。このような思考態度はクリティカルシンキングと呼ばれる思考法です(思考法ではありません)。
 
 
◆クリティカルシンキングで前提と視点を疑う
 
上の例で説明しましょう。別の視点から売上げの増大を考えてみます。すると、シェアを増やすとか、市場を大きくするといったことがあることが分かります。
 
つまり、視点を変えると、全体と部分の関係は
 
全体:利益
部分:シェア、市場
 
と考えることができます。つまり、考えるべきは、シェアを上げるか、市場を広げるのいずれかだということになります。そうすると着目するロジックも変わってきて、例えば、シェアを大きくするために
 
結果:テレビでCMを流す
原因:ブランド認知度が向上する
 
という関係になり、全体として
 
テレビでCMを流す→ブランド認知度が上がる→シェアが大きくなる→利益が大きくなる
 
といロジックで、経営基盤の強化に結びついてくるわけです。
 
このようにクリティカルシンキングでは視点を変え、前提の妥当性を見極めることがポイントになります。
 
このような思考態度は事業のように大きな活動だけではなく、例えば、プロジェクトのような個別の活動についても役立つものです。クリティカルシンキングを使うことによって、まったく異なる視点や前提でものごとを考えることができ、これによって正解がない問題にも対処できるようになります。
 
もちろん、これは事業のような大きな課題だけではなく、個別のプロジェクトにおいても非常に有用な思考態度です。これについては、また、別の機会にご紹介したいと思います。
 
 
◆関連セミナーのご案内
 
PMstyleでは、8月20日、21日にZOOMでオンラインセミナーを開講します。クリティカルシンキングを身に付けたい方のご参加をお待ちしています。
 
━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ◆クリティカルシンキング入門                  ◆7PDU's
  日時:2020年 08月 20日(木)13:30-17:00(13:20入室可)
       ~2020年 08月 21日(金)13:30-17:00(13:20入室可)
  場所:ZOOMによるオンライン開催
  講師:鈴木道代(プロジェクトマネジメントオフィス,PMP,PMS)
  詳細・お申込 https://pmstyle.biz/smn/critical.htm
  主催 プロジェクトマネジメントオフィス、共催:PMAJ
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  【カリキュラム】
   1.クリティカルに考えるとは
   2.ロジカルシンキングとその落とし穴
   3.何を疑うのか(合理性)
   4.何を疑うのか(内省)
   5.クリティカルシンキングの4ステップ
   6.具体的状況におけるクリティカルシンキング演習
   7.クリティカルシンキング総合演習
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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。