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2020年3月24日 (火)

【コンセプチュアル講座コラム】仕事の成果物と成果を分けて、働き方を変える

バックナンバーはこちら https://mat.lekumo.biz/ppf/conceputual_col/
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◆働き方改革の現状を概観する
 
VUCA時代には成果と成果物を分離しなくてはならないという話をしています。内容はこちらをお読みください。
 
【PMスタイル考】第158話:プロジェクトの成果と成果物
 
今回は少し違ったからこの問題を考えてみたいと思います。その観点とは、働き方改革です。
 
多くの企業が働き方改革に取り組んでいますが、あまり、芳しい効果が得られておらず、一方で生産性の向上は不可欠で、仕切り直しをしている企業すら出てきているような状況です。この状況に対して、残業だけだと働き方の改革にならないといった指摘を始め、さまざまな問題が指摘されていますが、問題解決の取り組みはあまりなされていないのが現状です。
 
そもそも働き方改革の必要性が出てきた背景には、一人の抱える仕事が増えてきたことにあります。もちろん、多くの仕事では、人員が削減され、業務の範囲が増えて、現実に仕事は増えています。これに対して、多くの組織は、例えば非正規社員を活用して対応してきました。しかし、景気がよくなると当然、人が足らなくなります。そこで、効率化をしようとしたことに働き方改革の動機があります。
このようなニーズに対して、経営として押さえているのは結果で、効率がよくなれば仕事をする時間が削減できるので、残業が減るということで、残業に注目するような管理が行われるようになってきました。
 

◆効率を上げる2つの方法と実態
 
効率を上げる方法は、仕事のスピードを上げるか、仕事を減らすかです。もちろん、成果を保ったままでです。
 
分野によっても違いますが、例えば製造業では、以前から生産スピードの向上に取り組んでおり、そんなに大きな無駄はありません。オフィスワークにおいてもこの10年くらい、かなり合理化が進んでおり、改めて改革というような大きな変革をする余地はあまりありません。
 
一方で、仕事を減らすことに関しても、無駄をなくすということで定期的に見直しをしている企業が多く、それなりにIT化も進展しており、同じ成果物を生み出すにはあまり減らす余地がないと言っている人が多いようです。
 
その中で働き方改革だと称して、残業が禁止されたので仕事を家に持ち帰っている人が少なくないというのが現実です。
 

◆教会を建てる石切り職人のエピソード
 
このような現実の中で、ほとんど手を付けられていない活動があります。それが冒頭に述べた、成果物と成果の切り離しです。
 
本来、成果物と成果は異なるものです。まずこのことを、ピーター・ドラッカーが作った有名なエピソードを使って説明しておきます。教会を作っている石切り職人のエピソードで、以下のようなものです。
 
教会の建設に参加している石切り職人に「あなたは何をしているか」と訊ねました。
一人目は「お金を稼いでいる」と答え、二人目は「石を切っている」と答えました。そして、三人目は「人々の安らぎの場になる教会を作っているんだ」と答えました。
 

◆成果物と成果を切り離す
 
このエピソードの中で、一人目は言われたことをやっているだけで、成果物とか成果といった意識はほとんどありません。今の時代にはほぼ自動化されていて、あまり見かけなくなってきています。
 
二人目は成果物=成果という認識をしています。今の時代には圧倒的にこれが多いように思います。余談ですが、いずれ、AIにとって代わられる仕事の仕方です。
 
三人目は成果物と成果を分けて考えています。つまり、切った石は自分の成果物だと考えますが、それによってもたらされるものが「人々の安らぎの場になる教会」であり、これを作ることこそ、自分の仕事の成果だと認識しているわけです。
 
仕事を減らして、効率を上げるには三人目の職人のような視点を持つ必要があります。
 

◆効率を上げるには
 
二人目の職人のように成果を成果物を作ることだと考えると、今、やっていることにそんなに無駄はないという人が多いと思います。それなりに石切の方法を工夫し、改善しているからです。
 
ところが三人目の職人のように考えれば、ちょっと話は変わってきます。「人々の安らぎの場になる教会を作る」ために自分がすべきことは石切以外にもあるかもしれないからです。言い換えると、成果物は成果を生み出すための手段に過ぎないのです。VUCAの時代には、設計図が成果物になるという保証はないために、設計図の背景にある実現したい成果が問題になってきます。
 
働き方改革においては、担当する業務がVUCAであるとは限りませんが、成果物と成果を分けて考え、より効率よく成果を上げることのできる成果物を見つけ出していけばよいのです。
 

◆同じ成果を実現するために成果物を変えるときの壁
 
ところがこういう仕事の進め方をしようと思えば、2つの大きな壁があります。一つは社内のステークホルダーの壁です。成果物から成果を生み出すことは前例や自社のやり方があり、それを変えることは望まない人が多いのです。もう一つは顧客の壁で、顧客が依頼するのは成果物だということです。
 
働き方改革の中では、前者の壁を破ることはそんなに難しくありません。担当者がこれで同じ成果を上げながら、残業を減らす方法だと説得すれば、働き方改革を打ち出していれば認められることは大きいでしょう。もちろん、そういうアイデアがあればですので、そこは担当者の知恵の絞りどころとなりますが、多くの場合、見つかると思います。
 
難しいのは顧客です。顧客は成果物を求めていて、それ以上、踏み込まれることを望まないケースが多いのです。ただ、依頼を受ける側としては、三番目の石切職人のようになぜ顧客はそれが必要なのかを把握する必要があり、そこまではたいていの場合、やっていると思います。
 
ここでもう少し知恵を使います。それは、顧客の求めているものの本質は何かということです。そこから一度、顧客の要求する成果物で実現した成果を考え、それを実現するためにより適した成果物はないのかを考えてみます。見つかれば顧客を説得するチャンスができます。見つからなければ顧客の設定した成果物が妥当なものであればそのまま進めればよいのです。
 

◆つまるところ、常に目的に立ち返ること
 
以上の議論は、仕事の目的と手段(達成目標)の議論に他なりません。仕事を依頼されるときに、目的を与えられた場合と、目標を与えられる場合があります。目的を与えられた場合はそれを目標に落とし込み、達成していけばいいわけですが、問題は目標を与えられた場合です。
 
そこで、目標にとどまると二番目の石切職人になります。自分の仕事は石を切ることであっても、なぜ石をきるのかを考えていると、もっとよい方法が見つかる可能性があり、そこからイノベーションが生まれることも珍しいことではありません。
 
このような活動はコンセプチュアルスキルによって実現されます。
 
 
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5.コンセプトを実現する本質目標を決定する
6.本質的な目標を達成する計画を策定し、実行する
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  【カリキュラム】                     
  1.コンセプチュアルではないマネジメントの問題点
    【振返り】自組織のマネジメントの問題を振り返る
  2.コンセプチュアルなマネジメントのポイント
  3.P-D-Rとは
  4.P-D-Rによるコンセプチュアル・マネジメントの仕組みづくり
    【検討】コンセプチュアル・マネジメントの仕組みのコンセプト
  5.コンセプチュアルなマネジメントの効果
  6.ワーク:自身のコンセプチュアル・マネジメントの仕組みを創る
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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。