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2016年7月11日 (月)

【イノベーション戦略ノート:092】洞察の源泉

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Gensen

◆イノベーションと洞察

イノベーションには洞察が必要だ。イノベーションを要求するのは、効率化、売上げ創出、などであり、それをさまざまな視点から実現していく洞察がイノベーションであるといえる。洞察の対象には、市場動向、顧客ニーズ、自社システムや仕組みなどさまざまな要素がある。

これに対して、洞察の源泉、つまり、どのような切り口でイノベーションを見つけるかについてはどうだろうか。

◆源泉の例

たとえば、ロシアのEコマースを考えてみる。1億人を超える中流層の消費者、7500万人のインターネット契約者がいたにも関わらず、小売りにおけるEコマースのは1.5%に過ぎなかった。

ここで、起業家のニース・トンセンはその理由を、郵便システムの信頼性がないことと、クレジットカードが普及していないことだと考えた。そして、オンラインの衣料品店ラモダを立ち上げた。ラモダは、顧客の購入品を自社の物流で配送し、代引きで集金し、ファッションに関するアドバイスまで行った。

この例から分かるように、イノベーションにつながる洞察は、現状をどのように解釈するかである。いわば、本質的な問題は何かという洞察だ。ラモダの例でいえば、中流層が多く、インターネット契約が多いのに、Eコマースの率が低いという事象から、そのような状況を引き起こしている問題を洞察し、

・郵便システムの信頼性の問題
・クレジットカードの普及の問題

の2つを本質的な問題だと考えたわけだ。


◆洞察の源泉をどこに見つけるのか

ここには2つの示唆がある。一つは、洞察の源泉をどこに見つけるかだ。この例だと、変則性に見つけていると見ることができる。一般的な事例では、中流層が多く、インターネット契約が多いともっとEコマースが多いというわけだ。

この点に関しては、モハン・ソーニーとサンジャイ・コースラは、「イノベーションの「種」を見つける7つのコンセプト・ワード」というハーバードビジネスレビューの論文の中で、

・変則性
・交錯点
・不満
・正統性
・極端さ
・旅
・類似点

の7つのキーワードを示しているので、参考になる。


◆どのように洞察するか

もう一つの示唆は、その源泉からどのように本質を洞察するかだ。これについては、概念的に考える、構造的に考えるなど、いくつかの方法があるが、この例だと大抵のやり方で本質にたどりつける。

たとえば、「なぜ、変則性が生まれているのか」という問題に対して、WHYを考え、概念的に考えてみると、おそらく、クレジットカードの問題はすぐに出てくる。また、郵便システムの信頼性の問題もインターネットの普及率が高い理由を考えてみると出てくるだろう。


【参考資料】
モハン・ソーニーとサンジャイ・コースラ「イノベーションの「種」を見つける7つのコンセプト・ワード」、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー(2015年09月号)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01G69J9IW/opc-22/ref=nosim

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。