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2014年10月29日 (水)

【イノベーション戦略ノート:058】イノベーション・システム・ソフトウエア

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Concept

◆システムとソフトウエア

イノベーションを考える上で、どうしても気になることがある。それは、

・システム
・ソフトウエア

の2つである。この2つのワードを並べると、「なんだ、ITイノベーション」かという人が少なくないと思うが、日本でイノベーションが停滞しているとすれば、このワードからITを連想するところに問題があるのではないかと思うのだ。

システムもソフトウエアも本来、ITとは直接関係のない概念である。システムは複数の要素が組み合わさったもので、たとえば、オーディオのシステムコンポなどは音響機器を組み合せたシステムである。極論すれば、複数の機能を持つものはすべてシステムだと考えてもよい。

部品や機能を要素としてみれば、一つのモノだと思われているものもシステムである。たとえば、iPhoneもシステムであるし、自動車もシステムである。


◆システムを動かす仕組みはソフトウエアで構成される

ソフトウエアは狭い意味ではコンピュータプログラムやそのドキュメントを意味する。
つまり、コンピューターを動かす仕組みであるが、広い意味ではものごとを動かす仕
組みを意味している。組織の中のオペレーションのルールもソフトウエアであるし、
組織文化もソフトウエアである。ビジネスモデルもソフトウエアである。世の中のあ
りとあらゆるものはソフトウエアによって動かされている。

ここで重要なことはシステムを動かす仕組み自体もソフトウエアであることだ。シス
テムアークテクチャーという言い方をされることもある。念のために言っておくがア
ーキテクチャーという言葉も情報システムの設計だけを意味する言葉ではなく、もっ
と広義な言葉である。


◆イノベーションとは新しいシステムを作ること

さて、以上を前提に本題に入る。イノベーションとは上に述べたような意味で新しい
システムを作る活動である。言い換えると、複数の要素を組み合わせて、新しい付加
価値を生み出すことがイノベーションということで、これはヨーゼフ・シュンペーター
が定義したイノベーションに他ならない。

このように考えると、システムを作ることができなければイノベーションもできない
ことになる。


◆新しいシステムの作り方

ここで問題は、システムを作る方法に2つの方法がある。一つはハードウエアの組み合せでシステムを作る方法。上に述べたシステムコンポオーディオはその例である。

もう一つは、ハードウエアやソフトウエアをソフトウエアを使って組み合わせる方法。iPhoneがそうだ。iPhoneでは、iTuneという仕組みを併せてアプリや音楽を購入し、使うようになっている。

iTuneだけではなく、アプリを使うとさまざまなハードウエアを組み合せることもできる。つまり、iPhoneを使うことによってユーザ自身がイノベーションを起こすことも可能である。iPhoneが世紀のイノベーションだといわれている所以はここにある。

シュンペーターはイノベーションの例として

(1)新しい財貨すなわち消費者の間でまだ知られていない財貨、あるいは新しい品質の財貨の生産
(2)新しい生産方法の導入
(3)新しい販路の開拓
(4)原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得
(5)新しい組織の実現

の5つを上げているが、この中でハードウエアの組み合せであるのは(1)および(4)の一部である。ほかは、ソフトウエアである。


◆イノベーションはソフトウエアから生まれる

たとえば自動車を考えてみるとよくわかる。これまで自動車はハードウエアの組み合せで構成されていた。ハードウエアの中にはナビゲーションシステムのようにソフトウエアが中心のパーツもあるが、トータルでみればハードウエア部品を組み合せて付加価値を生み出している。

ところが、ソフトウエアで自動車走行のコントロールが行われるようになってきた。つまり、部品にソフトウエアが使われるようになってきた。そして、全体の付加価値をソフトウエアが決めるようになってきている。自動運転車になると車のほとんどの付加価値はエンジンやステアリングではなく、デザインも含むソフトウエアになるだろう。

言い換えると、ソフトウエアで作り上げるシステムがイノベーションの主対象になってくる。このような流れは電子機器や自動車に限らず起こって生じるのではないかと思われる。ハードウエアそのものはまだ、イノベーションの余地があると思われるが、単にハードウエアを組み合せて付加価値を生み出せる時代ではない。

つまりイノベーションを生み出したければ、ソフトウエア的な発想で、付加価値のあるシステムを生み出すことが不可欠である。そのためには、システムやソフトウエアをITの中の概念ではなく、本質を捉えて取り組んでいくことが不可欠である。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。