【ブックレビュー】はじめる戦略~ビジネスで「新しいこと」をするために知っておくべきことのすべて~
ビジャイ・ゴビンダラジャン、クリス・トリンブル(花塚 恵訳)「世界トップ3の経営思想家による はじめる戦略~ビジネスで「新しいこと」をするために知っておくべきことのすべて~」、大和書房(2014)
「リバース・イノベーション」で知られるのビジャイ・ゴビンダラジャン、 クリス・トリンブルのコンビが書いた「Beyond the Idea: How to Execute Innovation in Any Organization」という本がある。
日本では
として翻訳されている。
この本、イノベーションの実行に焦点を当てた類書のない素晴らしい本で、事例もふんだんに取り上げられているのだが、紹介した人からは事例を読んでもぴんと来ないという意見が多い。イノベーションの本は、一般のビジネス書のように事例を自分たちの仕事でイメージするのは難しいからだろう。
日本でイノベーションがなかなか進展しない理由の一つは、新しいことをしなくてはならないイノベーションではほかの分野のように模倣が難しく、事例が役に立たないからだ。これがイノベーションという仕事の特性だと思われるが、このハードルの解消策を本として考えると、同じ目線でその本の中に入っていろいろと考えるような作り方が必要なのだと思う。疑似エスノグラフィーと言ってもいいだろう。
そのような作り方の一つの方法はストーリーとケーススタディであるが、「イノベーションを実行する」のストーリー版の本が出た。
ストーリーがなかなか傑作で、人間が捨てた農園を、動物たちが引き継ぎ、動物ファームとして運営していくという設定。創業者の努力により農園として確立した地位を得て、二代目の効率化、コストダウンにより利益を上げていた。
しかし、年々、製品価格が下がり、利益が圧迫される。そこで、新規事業としてアルパカを加えて高級ウールの事業を立ち上げようとする。
イノベーションの立ち上げのむずかしさ、既存事業との折り合いのむずかしさ、リーンスタートアップなどを中心にイノベーションの実行を物語化している。
イノベーションはそのとっかかりのむずかしさだけが注目されるが、一つの柱の事業になってイノベーションは初めて完結する。その中で、技術イノベーションでいう死の谷はどのような分野にもあり、ここをリーンスタートアップで乗り越える方法を動物ファームの動物たちが教えてくれる。
このストーリーの中で、ポイントポイントで、読者ならどうするかと問いかけてくる。ケーススタディで使ってもいいし、読書会で使ってもいいだろう。
イノベーションを自分の仕事のレベルでイメージしてみたい人は、ぜひ、この本でぜひ、動物たちと一緒に学ぼう!
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