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2014年9月18日 (木)

【ブックレビュー】エッセンシャル版 ミンツバーグ マネジャー論

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ヘンリー・ミンツバーグ(池村 千秋訳)「エッセンシャル版 ミンツバーグ マネジャー論」、日経BP社(2014)

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ミンツバーグを最初に知ったのは、神戸大学のMBAコースで金井壽宏先生のゼミで、「マネジャーの仕事」という本を、すばらしいエスノグラフィーだと紹介されたことだった(確か、この本を読んで、エスノグラフィーを書くという課題が出された)。

ヘンリー ミンツバーグ(奥村 哲史訳、須貝 栄訳)「マネジャーの仕事」、白桃書房(1993)


このエスノグラフィーは非常にインパクトがあった。マネジャーというと、じっくりと落ち着いて熟考し、重要な決断をする仕事のようなイメージがあったが、ミンツバーグのエスノグラフィーによると全く違い、30分もまとまった時間がない仕事だと分かった。

この知見は、このあとのマネジャーのリーダーシップやマネジメントの研究の方向性を大きく変えたのではないかと思う。たとえば、ハーバード・ビジネススクールの人気講師のリンダ・ヒル教授は

リンダ・A・ヒル、ケント・ラインバック(有賀 裕子訳)「ハーバード流ボス養成講座―優れたリーダーの3要素」、日本経済新聞出版社(2012)

の中で、マネジャーの仕事は細切れの仕事であるのでPDCAのサイクルを回すのではなく、細切れの仕事の中で、PDRを実践し、自分のやりたいことをすべきだと述べている。PDRとは
(1)Prep(実行に向けた準備)
(2)Do(実行する)
(3)Review(結果の見直しと学習)
というサイクルだ。詳しいことを知りたい人は、この本を読むか、こちらの記事を読んでみてほしい。

【PMスタイル考】第84話:PDCAからPDRへ


さて、ミンツバーグに戻るが、ミンツバーグがエスノグラフィーにこだわるのはマネジャーというのはこうすればいいという仕事ではなく、自分で自分の行動を観察し何をしなくてはならないか考えなくてはならない仕事であり、また、他者を深いレベルで観察することによってのみ学べるものがある仕事だという信念があるからだろう。

これは非常に重要な見識であり、マネジャーがMBAコースで学ぶような知識やスキルではなく、リフレクションとか、さらに進んでマインドフルといった行動により自分の在り方、立ち振る舞いを決めるようになってきているのは、明らかにミンツバーグの影響だろう。この意味で、ドラッカーと同じレベルでマネジャーに影響を与えている学者かもしれない。

この点においてミンツバーグの姿勢はマネジャーの仕事から一貫しており、そのような姿勢で、非常にセンスのよい研究をし、成果を世に出している。たとえば、以下のような本を出版している。

ヘンリー・ミンツバーグ(池村 千秋訳)「MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方」、日経BP社(2006)

ヘンリー・ミンツバーグ(池村千秋訳)「マネジャーの実像」、日経BP社(2011)

そして、この本はこれらの本の集大成であるとともに、ミンツバーグの研究と思想の集大成である。

ミンツバーグのマネジャー論を一冊読むならこの本をお勧めしたい。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。