« 【イノベーション戦略ノート:046】技術と顧客ニーズを統合する | メイン | 【イノベーション戦略ノート:048】イノベーティブなリーダーとは »

2014年9月 1日 (月)

【イノベーション戦略ノート:047】月を撃ち落とすイノベーションの起こし方

バックナンバー https://mat.lekumo.biz/ppf/cat9922971/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

Moon

◆自動運転車というイノベーションはなぜ起こるのか

前回技術とイノベーションの関係について書いたが、技術プッシュの問題の根底は戦略にある。企業の活動をどのように見るか、現実をどのように見るかという問題はあるが、企業(カンパニー)の活動を部分最適を目指す活動の集合とみれば、イノベーションの課題は前回のように部分として技術と顧客ニーズをいかに統合するかという議論になる。

現実の度合い、事業の広さなどの問題はあるにせよ、企業活動を全体最適を目指すものだとみれば、イノベーションは(事業戦略)にしたがって行われるものだということになる。イノベーション戦略ノートの第11話に

経営戦略とイノベーション

という記事を書いたが、この世界になるわけだ。

今回のイノベーション戦略ノートはその上でという話である。

こういう文脈では出てこないイノベーションというのがある。たとえば、今、自動運転車で大きな話題になっているグーグルのイノベーションを考えてみよう。



◆グーグルXとムーンショット

グーグルはソフトウエア以外でもいろいろなことをやっているイメージがあったが、その研究は謎に包まれていた。グーグルにはグーグルXという研究所があり、そこでさまざまな研究が行っているということになっていた。半年くらい前に、グーグルXがマスコミに公開され、実態が明らかになってきた。

グーグルXは、ムーンショット(困難だが壮大な挑戦)と呼べるイノベーションを目指す研究所で、自動運転車「Google Car」、メガネ型情報端末「Google Glass」、気球を使ったインターネット接続網「Project Loon」、医療用の「スマートコンタクトレンズ」の4つのプロジェクトが公式のプロジェクトとして行われているらしい。

ムーンショットは

1.数百万人からできれば数十億人に影響する問題に取り組むアイデアであること
2.SF(小説や映画)の話にも思えるほどラジカルな解決策(少なくともそうした要素を含む)を用いるアイデアであること
3.現時点または近い将来に使える技術を活用するアイデアであること

の3つの基準で選ばれるそうだ。


◆グーグルグラスはなぜ、ムーンショットなのか

上に紹介した4つのプロジェクトの中で、他の4つはこれから10年くらいかけて普及していくテーマだといわれるとそうかと思うが、グーグルグラスはちょっと毛色が違う。米国ではすでに発売されており、米国以外でも発売がうわさされている「商品」である。

これについて、グーグルは、新しいカテゴリー、新しい問いに価値があるということを提案しているという。その説明にグーグルが引き合いに出しているのが、PCという新しいカテゴリーと、アップル2が世の中に問いかけた有名な問い

あなたが会計士のような専門職でなくても、自宅にリーズナブルな価格でコンピュータを欲しいと思いませんか?

である。


◆グーグルショットは壮大な問い

グーグルグラスはアップル2と同じ問いをしているという。そのためには、グーグルグラスを世の中に出す必要がある。つまり、グーグルグラスというイノベーションはまだ完成しているわけではなく、発展途上なのだ。発売と同時に、いろいろなアプリケーションが提供されるようになってきている。

グーグルグラスは、「壮大な問い」なのだ。

実はアップル2が世に受け入られらたのはアップル2そのものではなく、「VisiCalc」というアプリケーションが登場してきたからだ。

今風にいえば、一種のエコシステムのイノベーションだともいえるが、このように壮大なイノベーションでは、戦略ドリブンでも技術ドリブンでもないやり方というのが考えられるわけである。

コメント

コメントを投稿

PMstyle 2024年5月~7月Zoom公開セミナー(★:開催決定)

カテゴリ

Googleメニュー

  • スポンサーリンク
  • サイト内検索
    Google

最近のトラックバック

Powered by Six Apart

プロフィール

フォトアルバム

好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。