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2013年11月10日 (日)

【コンセプチュアル仕事術】第5話~T型人材とΠ型人材のコアスキル

Senmon_2◆T型人材ではなく、Π型人材になれという教え

大学の同級生や新卒で就職した企業の同期がそろそろ、役職定年になっている。会うとまだあと10年と言う話しと同時に、やはり、人生を振り返って的な話になる。先日もあるIT企業で役員まで務めた友人Aと人生振返って的な話をしていた。そのときに、面白い議論になった。

大学(工学部システム工学科)を卒業するときに2つのことを言われた。ひとつは農耕民族ではなく、騎馬民族になれということ。もう一つは、T型人材ではなく、二つ以上の専門性を持つΠ型人材になれということだ。

面白い話しとは、後者に関わる話。それを紹介する前に、まずT型人材について少し論じておきたい。

システムエンジニアはT型の人材でなくてはならないというのはよく言われる。ひとつの柱になる専門の深いスキルと、複数の分野にまたがる浅く広い知識である。専門分野というのはどのようなものでもよい。たとえば、著者が卒業した大学だと、機械工学、流体工学、メカトロニクス、制御工学、情報工学、経営工学などの専門の先生がいた。これはいずれもシステムエンジニアとして柱になるスキルだ。

もちろん、工学である必要はない。これまで知り合った有能なシステムエンジニアで、文系の人は少なくないし、一番変わり種で司法試験を通っていてシステムエンジニアをやっているとおいう人もいる。



◆T型人材になるために必要なスキル

では、T型になるには何が必要かということを考えておきたい。T型人材になろうとすると、いろいろなことを勉強して必要な分野の知識を身につけることが必要だと考えている人が多い。

分かりやすい例は、ITのアプリケーションの構築をしている人は、情報技術が柱で、構築する分野の浅いスキル(いわゆる業務知識)が必要になる。そこで、その分野の勉強をする。こうしてキャリアとともに広い範囲の知識を身につけていく。

ところが、それではTにはならない。横軸が点の並びだからだ。横軸を線にするにはどうすればよいか。

もうお分かりだと思うが、アナロジーを中心にした抽象化スキルが点を線にする。抽象化スキルがあれば、自分の専門分野とのアナロジーで適切に他の分野の把握をできる。

具体的に何ができればよいかというと、アナロジーで考えることができるところと、アナロジーは通用しないところの見極めである。この見極めができるということは、その分野について細かなところは分からないまでも、大局的な見極めができるということに他ならない。

よくプロジェクトマネジャーで分からないところは人脈を使って専門家を巻き込むという人がいるが、これがうまくいくのは大局が見えている場合の話で、専門家に丸投げしようとすると大抵失敗する。

要するにT型人材とは、横軸をしっかりと作り、そこにその分野の専門家を巻きこみ、プロジェクトが作れるスキルを持つ人のことだ。言い換えると、コンセプチュアルスキルの基本である、抽象化スキルとアナロジーである。


◆今の時代はΠ型スキルが必要

さて、問題はΠ型人材だ。Π型人材はいうまでもなくT型の縦軸、すなわち専門分野を一つ増やしたイメージだ。では、2つの専門を持つエンジニアはΠ型かだと言えるのか。Tと同じように、2つの専門を持っただけではΠ型とは言えない。

Aがいうには、今の時代はITベンダーは顧客から提案をすることを求められる。すると浅い業務知識では人を巻き込んで問題解決はできても、提案には対応できないという。彼がいうのは、コラボレーションの場を作っても提案は難しいだろうという。だから、Π型なのだと。

こ れはなかなか興味深い指摘である(というかわが意を得たり)。専門分野が一つと二つに本質的な違いを感じているようだ。それについて少し議論をしたが、単 に業務分野に詳しいITエンジニアであれば良い提案ができるとは考えていないようで、その場では答えがでなかった。以下は、あとで考えたこと。


◆2つの専門分野を持つ意味はサイロを突き破るスキルを持つこと

問題は自身が2つの専門分野を持つ意味である。その理由は、深いレベルの多様性の実現にあるのではないかと思う。

T型というのは悪くいえば、サイロ型(縦割り)の組織構造を前提にしている。プロジェクトはこの問題に悩むケースが多いが、サイロ型の構造があるとどうしても全体の統合がうまくできないことが多い。

サイロを突き破る方法がないのだ(もちろん、チームマネジメントとしてそれを実現しようとする試みがあるのは知っているが、必ずしもうまく行っていないと思う)。

複数の分野の専門家を集めれば形の上では多様化されるが、結局、統合できないままで、軸となる考えにいくつかの別の視点を加えて進んでいくことが多い。その意味でAの言っていることは正しいように思う。情報技術と深いレベルでの業務スキルがなければ統合はできない。


◆統合するには洞察力が必要

分 野は違うがAから聞いた話をそのまま書くわけには行かないので、例としてスマートフォンを考えてみると、アップルの作ったスマートフォンはITCの技術と デザインを統合することで新しいコンセプトを作った。ところが、日本のスマートフォンはITCの技術にいくつかの技術をくっつけているだけである。製品と して統合されていない。

統合をどのようにして行うかと考えたときに、誰か洞察し、構想をする人が必要である。ここまでできればあとはコラボレーションの場を設定すればなんとかなるが、この部分だけはどうしようもない。アップルのスマートフォンでいえば、ジョブズである。

この統合するスキルというか、コンピテンシーこそがΠ型人材の本質であり、コンセプチュアルスキルである。そして、それは複数の専門を究めないと本質的に身につかないことだと思う。

◆コンセプチュアル仕事術を実践する

コンセプチュアル仕事術を実践するための塾「コンセプチュアル仕事塾」を開講します。第1弾は、「リーダー」に焦点を当てた内容で開催します。


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 ◆リーダーのためのコンセプチュアル仕事塾                ◆
  日程:2013年11月28日(木)、12月19日(木)
     2014年1月9日(木)、1月30日(木)、2月13日(木)、2月27日(木)
     19:00-20:45(18:40受付開始)
  場所:銀座ビジネスセンター(東京・中央区)
  講師:好川哲人(エム・アンド・ティ コンサルティング代表)
  詳細・お申込 http://pmstyle.biz/smn/conceptual_juku0.htm
  主催:プロジェクトマネジメントオフィス
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 【カリキュラム】
  第1回(目標設定)   仕事の本質を捉え、目標を決める
  第2回(状況分析)   データから仮説を立て、状況を見極める
  第3回(仕組みづくり) 目標を実現する仕組みを作る
  第4回(問題解決)   創造的なアイデアを出し、行動に落とす
  第5回(意思決定)   直感を効果的に活用し、生産性を向上させる
  第6回(交渉)     対立関係を統合して交渉をまとめる
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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。