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2013年4月 5日 (金)

【補助線】日本にチームは必要ないのか?

Term3_2今、ある農業法人におけるプロジェクトマネジメントの話をしている。まだ、お話できる段階ではないが、ちょっと面白いかもしれない。その中で出てきた話。

日本の農家は、戦後、小さな水田を持ち、用水を都合しあいながら、米を作ってきたそうだ。上流にある水田のオーナーは下流の水田に水が途切れないように用水に気を配るし 、下流側も心配する。しかし、決して、一つの水田にして、米をシェアしようという発想にはならないらしい。これって、農耕民族日本人のDNAなのだろうか?

この話を聞いて思い出したのが、チームマネジメントのグル「カッチェンバーグ」のいうチームとワーキンググループの話。

ワーキンググループはプロジェクトの課題(スコープ)を最初に分けてしまい、分担を決めて、できるだけ、お互いの担当領域には足を踏み込まないように仕事を進めていくやり方である。仕事の性格は異なるが、工場でいえば、ライン的な仕事の仕方だ。

こ れに対して、チームは、専門性や経験などに基づいてある程度の分担を決めるが、基本的にはメンバーの判断で、プロジェクトの成果を達成するために必要な仕 事をやっていくようなやり方である。工場でいえば、ボルボ方式と呼ばれるワークショップ型の仕事の仕方があるが、これに相当する。

ちなみに、ワークショップ型のグループで、チームワークとは、「和」を乱さないこと、協調性を持って仕事をすること」である。これに対して、チームでは「徹底的に議論を戦わせること」だろう。

こ れはどちらがよいとか、悪いと言う議論ではなく、プロジェクトの課題に対して、適性がある。例えば、最初からプロジェクトの課題を達成するために行うべき ことがすべて決まっていれば、ワーキンググループ方式の方が効率がよいのは明らかである。しかし、決まっていなければ、分担など決めようもない。

最悪なのは、やることも決まっていないのに、専門性に基づいて、分担だけ決まっているケースである。これをやると、例外なく、スコープや品質の問題が出てくる。

日本の企業をみていて不思議に思うのは、チームというものに対して関心を示さないことである。ワーキンググループの形態で仕事をしているという理由が大きい し、また、本来的にビジネスプロジェクトはそうあるべきかもしれない。とにかく、事前にあいまいさをなくして、何とか、ワーキンググループで仕事ができる ような課題にしようとするのは、不思議でならない。

できればいいのだが、できないと上に述べたような最悪の状況になる。そんなプロジェクトが増えてきているような気がする。

何 年か前に、ある出版社の人と、チームの本を作ろうとしたことがある。本を作っても売れないと意味がないので、かなり、徹底的に市場ニーズの議論をした。結 論は、チーム本は作っても日本では売れないというものだった。リスクをとらないため、チームに対する現実的なニーズがないという結論だ。

実際に、その後、チームに関する本で、売れたという話は聞かない。が、先月、ついに、本命ともいえる本が翻訳された。リチャード・ハックマンのLeading Termsである。

 「デキるチーム」5つの条件―チームリーダーの〈常識〉

この本が売れなければ、チームは日本のプロジェクトには10年早いのかもしれない。

(この記事は、2005年10月5日に「フラジャイル~弱さは強さより深い」というブログに書いた記事の採録です。このブログは廃止しました)

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。