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2012年9月24日 (月)

【イノベーションを生み出すマネジメント】第6話 現状の環境を知り、問題に対して手を打つ

◆なぜ、イノベーションは難しいのか

Innovativeこの連載も今回が6回目である。そろそろ、各論に入っていこう。まず最初は入り口の問題から。

多くの組織がイノベーションに失敗する理由の一つは、イノベーションに対する問題の分析をせずに、いきなり、テーマに入って行こうとするためである。

イノベーションはいままでできなかったことに対する取り組みであり、できないにはそれなりの理由がある。技術テーマそのものより、別の理由によりできなかったというケースも少なくない。その理由を無視して、精鋭を集めてイノベーションプロジェクトを打ち出してみても、実現性は乏しい。組織の抱える問題が解消していないからだ。

イノベーションの難しさは、テーマの問題解決と同時に、組織風土の変革を行わなければうまくいかないことにある。つまり、アイデアや技術だけでは不十分なのだ。技術を開発するだけであればテーマに対する問題解決がうまくいけばよく、精鋭を集めたプロジェクトというアプローチでもうまくいくかもしれない。しかし、技術を開発し、商品を開発し、ビジネスモデルを考案し、実際に展開していくには、組織全体の協力が不可欠であり、その現在レベルを把握することが欠かせない。逆にいえば、何がイノベーションの阻害要因になっているかを把握する必要がある。


◆状況を知るための指標

あなたの組織がどのような状況にあるかは、たとえば、過去3年間における以下のようなデータに着目してみるとよく分かる。

・企画が承認されてから実行されるまでにどのくらいの時間がかかっているか
・イノベーションにどれだけの時間、人員、資金を投入しているか
・過去3年間でイノベーションによる利益は総利益のどの程度の割合を占めるか
・パイプラインにのっている製品は将来価値が十分に期待できるか
・従業員による提案はどのくらいの数があるか

イノベーションを企てるときに、このような過去のデータ(現実)を全く無視して行っても無意味である。もちろん、これまで通りにやっていたのではイノベーションにはつながらないので、風土を変えていく必要があるが、理想を掲げても挫折するだけである。そのためには、このようなデータが何により生まれているかをは把握する必要がある。イノベーションは、組織風土や仕組みにより阻害されていることが多い。そこで、たとえば、

・新しい提案を進める権限がどの程度委譲されているか
・リスクをとることについてどの程度認め、どの程度評価しているか
・会社の方針や上司の決定に異議を唱えることができるか
・プロジェクトを推進する際には部署間の連携がとれているか
・外部の声に耳を傾けているか
・失敗すると責任を追及される感じるか
・現状に満足しているか

といったことを分析し、イノベーションの阻害要因を抽出するとよい。


◆個人レベルの問題

また、個人レベルで問題があることもある。特にマネジャーに問題があると、イノベーションはうまく行かない。参考までに、経産省のフロンティア人材研究会の報告書に掲載されている「イノベーションの芽をつぶすひとこと」を掲載しておく。

・「それって、儲かるの?」
・「ぜんぶ数字で説明してくれ」
・「他社でやっていないのであれば、リスクがないとはいえない」
・「これをやると、あの部署がうるさいよ。それはどうするつもり?」
・「そのアイデアは既存事業とコンフリクトしないかね」
・「コンプライアンス上の問題があるからダメだ」
・「なんで実績のないことやるの?」
(これは、マネジャー自身の問題であることが多いので、改めればよいことだ)

このような問題があるときには、イノベーションはなかなか、うまく行かない。問題解決が必要である。


◆顧客本位のアプローチ

イノベーションの促進される風土、仕組み、人をどのように作っていくかは難しい問題であるが、成功事例を見ていると、顧客本位の考え方がもっとも効果的である。顧客価値を増やすには、自分たちはどのように振る舞えばよいかと考えることだ。

重要なことは、このような問題は、リスクとしてとらえ、イノベーションの実行の中で解決していかなくてはならないことである。まず、環境を整えて、しかるべきのちに、イノベーションに取り組むという姿勢では、環境を変えることもできないし、イノベーションを実現することもできない。環境の変革そのものもイノベーション活動の一部であるという認識が必要である。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。