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2012年8月 7日 (火)

【戦略ノート291】イノベーションのためのプロジェクトマネジメント

◆牙を抜かれたプロジェクトマネジメント

Innovatio1プロジェクトマネジメントが本格的に認知されるようになって10年余りになる。日本では、この間、ITベンダーを中心に、受注プロジェクトという定常業務への適用を中心に発展してきたため、ある意味で牙を抜かれたような状態になっている。

プロジェクトマネジメントは本来、プロジェクトを実施する目的を実現するために行うものである。目的の実現には度合いがある。たとえば、ブランドの認知を目的だとすると、商品に関心を持つ市場でのブランドの認知なのか、商品に関心を持たない人もいる市場での認知なのかによって、話がずいぶん変わってくる。このコントロールは、目的に対する目標の設定で行う。この例であれば、認知率のようなものでコントロールできる。

そして、この度合の設定はプロジェクトに任されている(上位組織は承認をする)。このためか、プロジェクトマネジメントが「進化」するにしたがって、リスクマネジメントの威を借りて、目標設定が低くなっている。

プロジェクトマネジメントは本来、目標を少しでも高く設定するために行うものだ。できることをできるようにやればよいのであれば、プロジェクトマネジメントは要らない。よく引き合いに出されるのは、ピラミッドの建立のプロジェクトである。巨大な構造物であるが、民というリソースがふんだんにあり、できるときにできればよいのであれば、技術さえあればできる。逆にいえば、これが、技術が重視される理由でもある。


◆定常業務とイノベーションの目標設定の違い

定常業務であれば、目標はリスクとのバランスで決まる。定常業務の目的は収益を上げることであり、マネジメントの目標は収益を最大化することである。従って、目標を高くしすぎて、うまく回っていかないのは目的に相反するし、逆に目標を下げても機会損失になってしまう。確実にでき、かつ、最大の収益を上げるパフォーマンスが求められる。

これに対して、イノベーションでは、目的の一つに革新がある。その意味で、目標に度合いはない。目標を下方修正すると、革新するという目的そのものが成り立たなくなる。

ここでもう一つ、問題になるのがリスクと不確実性の問題である。リスクは生起する事象そのものは分かっており、その発現が確率的に決まる事象である。つまり、どういうことが起こるかが分かっているが、どのくらいの確率で起こるかが分からない。これに対して、イノベーションに取り組むと、生起する事象そのものが分からないことが多い。平たくいえば、何が起こるかわからない。このような事象はリスクマネジメントで扱うのは難しい。もし、扱うとすれば、リスクモニタリングを頻繁に行い、新しいリスクが起こっていないかどうかを確認するくらいしか手がない。この方法では、突発的に発生する予期せぬ事象に対しては、お手上げだ。


◆イノベーションのむずかしさは、不確実性への対処

プロジェクトリスクマネジメントは、リスクがあっても(想定した問題が発生しても)、目標を達成するために行うものである。リスクマネジメントの枠組みで扱えない不確実性により起こる問題に対しては、目標を達成すること自体を諦める必要がある。

そこで、もう一つ上位のマネジメントが必要になってくる。つまり、ある目標の達成を諦めたときに、別の方法(目標)によって目的そのものは実現するためのマネジメントである。プロジェクトマネジメントという枠組みの中では、これはプログラムマネジメントによって実現される。たとえば、上のブランド認知の課題で、全国的なブランド認知を目的の取り組みを始め、10人に1人を目標とした。商品Aにより10人に1人への認知を目指したが、うまく行かず、その範囲は20人に1人にとどまった。そこで、新商品BとCを同時に市場に投入し、そのシナジー効果により20人に1人への認知を狙った。


◆イノベーションに適したマネジメント

こういう展開を場当たり式ではなく、計画的に行うのがプログラムマネジメントである。つまり、プログラムマネジメントは、その中で行う個々のプロジェクトでは失敗をする(目標達成ができない)ことを折り込んで計画を作るという意味で、不確実性に対応できる方法になっている。

もう一度、整理しておくと、

リスクを伴うイノベーション:プロジェクトマネジメント
不確実性を伴うイノベーション:プログラムマネジメント

というのを基本戦略として、イノベーションに対するマネジメントを行うことが望ましい。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。