【10周年】特別インタビュー「プロジェクトの経験から学ぶ」(第1回)~リフレクションとは
10周年記念セミナーのセッション4にリフレクションをテーマにしたワークショップが準備されています。体験から学ぶことは、PM養成マガジンが創刊からずっとテーマとしてきたことで、その意味で、このセッションには特別な想いがあります。
そこで、ワークショップをやっていただくLLCチーム経営 パートナーの嶋田 至さんにリフレクションについてお話を聞く機会を作っていただきました。嶋田さんのプロフィールはこちらにあります。
今回から、数回かけて、お届けしたいと思います。今回は、まず、イントロダクションです。
-----
(好川)
よろしくお願いします。さっそくですが、まず言葉の定義から教えてください。リフレクションとはどういう考え方なのでしょうか?
(嶋田)
「体験をふりかえることから学ぶ」ということです。
私たちは、仕事においてさまざまな体験をしています。同僚、お客様、部下、上司などと関わる中で、気にかかったり、違和感をもったりすることがあると思います。
そのような体験を思い出し、行動レベルにとどまらず、そのとき感じたことや考えたこと、関わった相手の様子、その後、自分と相手のとの関係性に影 響したことなどをふりかえることで、何らかの学びが生じることがあります。
たとえば、こんな場面をイメージしてください。
あるプロジェクトのマネージャーになったAさんが、意気揚々とメンバーを集めて会議を開き、仕事の進め方について説明をします。すると、メンバーのB君がやや否定的と思われる発言をします。
Aさんはすこし気分を害しましたが、A君が言い終わらぬうちに無表情に回答し、説明を続けます。
会議が終わりましたが、AさんはB君の態度が気になっています。
Aさんは、会議での体験をふりかえってみます。
B君の発言を自分なりに解釈して回答したが、B君は本当は何が言いたかったのだろう?
私はB君の発言を「やや否定的」に感じたが、それはどうしてか?
B君は不満げな表情だったようだが、私の回答で納得したのだろうか?
他のメンバーは私とB君とのやりとりを、どのような思いで見ていたのだろう?
リフレクションは、他者の支援を得ることで、さらに深めることができます。
たとえば、同僚や先輩に、自分が気になってることを伝えたり、相手から質問されたり、感じたことをフィードバックしてもらったりすることで、自分を客観的に見直すことができます。
そして、体験したこととそのときに生じた気持ち、いま気にかかっていることなどを、深く掘り下げていって、次に生かせる学びを得ることも期待でき ます。
Aさんは、今後同じようなことがあれば、すこし違った行動をとるかもしれません。
たとえば、B君の質問があったとき、B君が意図していることを確認してみるかもしれません。
B君との対話を通じて考えのズレを解消し、B君が納得のいく回答をできるかもしれません。
体験をふりかえることは、自分の考え方や行動のしかたについて、気づきをもたらします。
気づきは自分の行動に変化を促し、より良い関わり方の試行を促します。
(好川)
よく分かりました。
プロジェクトマネジメントの中で振り返りという場合には、いろいろな目的ややり方があります。たとえば、アジャイル開発でよく使われるKPT。 行ってきた仕事や活動を
・継続(Keep):良いことなので、今後も継続する
・問題点(Problem):問題なので、やめる
・挑戦(T):次の展開で挑戦してみること
の3つの視点で整理するフレームワークです。KPTはアジャイルのイテレーションのような試行錯誤で、次の展開を決定するために用いられることが多いですが、プロジェクト全体の振り返りに使われる場合もあります。PMBOKでは、レッスンズラーンドというプロセスがあります。明確な方法が決まっているわけではありませんが、たとえば、発生した問題に対し て、知識エリアごとに
・問題の状況と原因の識別
・是正のオプションと選定理由
・是正の方法の適切さ
・リスクとして識別されていたか
といったポイントを分析していき、そこから以降のプロジェクトへの教訓を得ます。得られる教訓は広範囲にわたり、問題を起こさないようにするための方
法、問題に対する是正方法や評価、リスク識別、などです。レッスンズラーンドに基づき、プロセスを改善したり、計画の作り方を改善したりします。
このような従来の振り返りの方法と比較して、グループプロセスによるリフレクションというのはどういう特徴があるのでしょうか?
(嶋田)
リフレクションすなわち体験をふりかえることから学ぶためには、グループプロセスに焦点をあてることが求められます。
仕事の体験について、コンテントとプロセスの2つに分けて考えてみたいと思います。
コンテントは、チームにおける活動の内容や会議の議題など、「何をしているか」といったことを指します。
プロセスは、チーム活動や会議をおこなっているときに、どのように話しあっているか、聴きあっているか、メンバーにおこっている気持ちや、メン バー同士の関わりのなかでおこっている思考や気持ちなど、「関わりのなかで起こっていること」を指します。
プロセスには、個人のなかでおこっていること、個人間の関わりのなかでおこっていること、グループのなかでおこっていることがありますが、グループのなかでおこっているプロセスをグループプロセスと呼びます。
たとえば、プロジェクトの会議で、マネージャーのAさんが仕事の進め方について説明をしているときに、メンバーのB君がAさんの話をさえぎって質 問をしたとします。
「Aさんが仕事の進め方を説明した」、「B君が途中で質問をした」というのが、コンテントです。
一方、プロセスは、「Aさんが仕事の進め方を説明しながら、チームの結束を強めようと考えていた」、「B君は、Aさんの説明がわかりにくいので、 もっと理解を深めたいと思った」、「B君がAさんの話をさえぎって質問をしたので、Aさんは自分が否定されたように感じた」、「AさんはB君に対 して怒りの感情を持った」、「チームのメンバーは、Aさんの表情をみて冷たい印象を感じた」といったことなどです。
コンテントは見えやすく、注目しやすいのですが、プロセスは個人やメンバー間の関わりのなかで生じるものなので、見えにくく、とらえることが困難です。
しかし、プロセスに焦点をあてることが、チーム内の人間関係をより深いものにしたり、自分自身の思考や行動に変化を促すことになり、チームの成果にも影響します。
リフレクションは体験をふりかえることで学ぶことだと申しました。
仕事の内容や活動、発生した問題など、コンテントについては、KPTなどの枠組みを活用してふりかえることができます。
あわせて、グループプロセスに焦点をあててふりかえることで、自分たちの行動がもたらした影響に気づき、より良い思考や行動について考え、成果に つながる関わり方を促すことができるのだと思います。
-----
◆お知らせ
嶋田さんが、同僚の広瀬義浩さんとおこなうワークショップの詳細、申し込みは
こちらになります。
【PM養成マガジン10周年記念セミナー】
第4回 プロジェクトの経験から学ぶ力をつける
~グループプロセスに焦点をあてたリフレクション~
(好川)
よろしくお願いします。さっそくですが、まず言葉の定義から教えてください。リフレクションとはどういう考え方なのでしょうか?
(嶋田)
「体験をふりかえることから学ぶ」ということです。
私たちは、仕事においてさまざまな体験をしています。同僚、お客様、部下、上司などと関わる中で、気にかかったり、違和感をもったりすることがあると思います。
そのような体験を思い出し、行動レベルにとどまらず、そのとき感じたことや考えたこと、関わった相手の様子、その後、自分と相手のとの関係性に影 響したことなどをふりかえることで、何らかの学びが生じることがあります。
たとえば、こんな場面をイメージしてください。
あるプロジェクトのマネージャーになったAさんが、意気揚々とメンバーを集めて会議を開き、仕事の進め方について説明をします。すると、メンバーのB君がやや否定的と思われる発言をします。
Aさんはすこし気分を害しましたが、A君が言い終わらぬうちに無表情に回答し、説明を続けます。
会議が終わりましたが、AさんはB君の態度が気になっています。
Aさんは、会議での体験をふりかえってみます。
B君の発言を自分なりに解釈して回答したが、B君は本当は何が言いたかったのだろう?
私はB君の発言を「やや否定的」に感じたが、それはどうしてか?
B君は不満げな表情だったようだが、私の回答で納得したのだろうか?
他のメンバーは私とB君とのやりとりを、どのような思いで見ていたのだろう?
リフレクションは、他者の支援を得ることで、さらに深めることができます。
たとえば、同僚や先輩に、自分が気になってることを伝えたり、相手から質問されたり、感じたことをフィードバックしてもらったりすることで、自分を客観的に見直すことができます。
そして、体験したこととそのときに生じた気持ち、いま気にかかっていることなどを、深く掘り下げていって、次に生かせる学びを得ることも期待でき ます。
Aさんは、今後同じようなことがあれば、すこし違った行動をとるかもしれません。
たとえば、B君の質問があったとき、B君が意図していることを確認してみるかもしれません。
B君との対話を通じて考えのズレを解消し、B君が納得のいく回答をできるかもしれません。
体験をふりかえることは、自分の考え方や行動のしかたについて、気づきをもたらします。
気づきは自分の行動に変化を促し、より良い関わり方の試行を促します。
(好川)
よく分かりました。
プロジェクトマネジメントの中で振り返りという場合には、いろいろな目的ややり方があります。たとえば、アジャイル開発でよく使われるKPT。 行ってきた仕事や活動を
・継続(Keep):良いことなので、今後も継続する
・問題点(Problem):問題なので、やめる
・挑戦(T):次の展開で挑戦してみること
の3つの視点で整理するフレームワークです。KPTはアジャイルのイテレーションのような試行錯誤で、次の展開を決定するために用いられることが多いですが、プロジェクト全体の振り返りに使われる場合もあります。PMBOKでは、レッスンズラーンドというプロセスがあります。明確な方法が決まっているわけではありませんが、たとえば、発生した問題に対し て、知識エリアごとに
・問題の状況と原因の識別
・是正のオプションと選定理由
・是正の方法の適切さ
・リスクとして識別されていたか
といったポイントを分析していき、そこから以降のプロジェクトへの教訓を得ます。得られる教訓は広範囲にわたり、問題を起こさないようにするための方
法、問題に対する是正方法や評価、リスク識別、などです。レッスンズラーンドに基づき、プロセスを改善したり、計画の作り方を改善したりします。
このような従来の振り返りの方法と比較して、グループプロセスによるリフレクションというのはどういう特徴があるのでしょうか?
(嶋田)
リフレクションすなわち体験をふりかえることから学ぶためには、グループプロセスに焦点をあてることが求められます。
仕事の体験について、コンテントとプロセスの2つに分けて考えてみたいと思います。
コンテントは、チームにおける活動の内容や会議の議題など、「何をしているか」といったことを指します。
プロセスは、チーム活動や会議をおこなっているときに、どのように話しあっているか、聴きあっているか、メンバーにおこっている気持ちや、メン バー同士の関わりのなかでおこっている思考や気持ちなど、「関わりのなかで起こっていること」を指します。
プロセスには、個人のなかでおこっていること、個人間の関わりのなかでおこっていること、グループのなかでおこっていることがありますが、グループのなかでおこっているプロセスをグループプロセスと呼びます。
たとえば、プロジェクトの会議で、マネージャーのAさんが仕事の進め方について説明をしているときに、メンバーのB君がAさんの話をさえぎって質 問をしたとします。
「Aさんが仕事の進め方を説明した」、「B君が途中で質問をした」というのが、コンテントです。
一方、プロセスは、「Aさんが仕事の進め方を説明しながら、チームの結束を強めようと考えていた」、「B君は、Aさんの説明がわかりにくいので、 もっと理解を深めたいと思った」、「B君がAさんの話をさえぎって質問をしたので、Aさんは自分が否定されたように感じた」、「AさんはB君に対 して怒りの感情を持った」、「チームのメンバーは、Aさんの表情をみて冷たい印象を感じた」といったことなどです。
コンテントは見えやすく、注目しやすいのですが、プロセスは個人やメンバー間の関わりのなかで生じるものなので、見えにくく、とらえることが困難です。
しかし、プロセスに焦点をあてることが、チーム内の人間関係をより深いものにしたり、自分自身の思考や行動に変化を促すことになり、チームの成果にも影響します。
リフレクションは体験をふりかえることで学ぶことだと申しました。
仕事の内容や活動、発生した問題など、コンテントについては、KPTなどの枠組みを活用してふりかえることができます。
あわせて、グループプロセスに焦点をあててふりかえることで、自分たちの行動がもたらした影響に気づき、より良い思考や行動について考え、成果に つながる関わり方を促すことができるのだと思います。
-----
◆お知らせ
嶋田さんが、同僚の広瀬義浩さんとおこなうワークショップの詳細、申し込みは
こちらになります。
【PM養成マガジン10周年記念セミナー】
第4回 プロジェクトの経験から学ぶ力をつける
~グループプロセスに焦点をあてたリフレクション~
[バックナンバー]
コメント