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2011年4月11日 (月)

【戦略ノート235】シンプリシティ考(6)~シンプリシティと単純化の違い

◆リスクマインドの低さがものごとを複雑にしている

突然だが、リスクマインド強化研修の中で、リスクマインドを作り出す5つのプロセスとして

・失敗から学ぶ
・単純化を許さない
・現場を重視する
・専門性を尊重する
・復旧能力を高める

が必要だという説明をしている。以前、この研修を受講して戴いた方と偶然お会いする機会があり、シンプリシティの話になった。彼がいうには、リスクマインドが低いから、ゴテゴテの商品ができるのではないかというのだ。


◆単純化とシンプリシティの違い

いろいろ議論をしているうちに、単純化とシンプルというのはどう違うのかという話になった。リスクマインドで単純化を許さないといっているのは、仕組みが決まっているのに、合理的ではないといった理由でルールを無視して単純なやり方をすることを許さないという意味である。例えば、プロジェクト憲章を作って、プロジェクト憲章に基づいてプロジェクト計画を作るというのが正規のプロセスだったとする。このときに、このプロジェクトのミッションは明々白々なので、プロジェクト憲章を作るのは時間の無駄だ、いきなりプロジェクト計画書を作ろう。これが単純化である。

何が問題なのか?ルールを守っていないという低次元の話ではない。仕組みはいろいろな視点からの配慮がなされていることが多い。例えば、プロジェクト憲章であれば
当面プロジェクトにあまり関係のなさそうな人に、こういうミッションのプロジェクトを始めるということを周知するための配慮がある。

これを飛ばすとどうなるか。社内でプロジェクトへの協力を求めたいときに、そんな話は聞いていないという話になる。そして、話を通せということになって、延々と迷路に迷い込むことになる。一事が万事である。


◆仕様を単純化するから、あとで複雑になる

実は商品についても同じような一面がある。例えば、著者はドイツの家電が比較的好きだ。日本の家電とドイツの家電を較べると、日本の家電は基本的な操作を単純化している商品が多い。例えば、電子レンジ。温度と時間と加熱方法の組み合わせで操作する道具で、おそらくマニュアルなしには使えないような道具だ。ところが、日本製
の電子レンジには、この動作原理を無視して、弁当のあっためとか、ご飯とか、酒のお燗といった用途別の機能がついているものが多い。要するに単純化しているのだ。

確かに便利であるし、ユーザの声から生まれてきたものらしい。しかし、このようなコンセプトでユーザの声を聞いていると、商品は複雑化の一途をたどることは間違いない。現にそうなっている。このような商品は多い。たとえば、オーディオもまったく同じ道を歩んでいる。


◆原理原則を洗練するか、無視するか

つまり、単純化が結果として、複雑な商品を生み出しているのだ。なぜか。単純化とシンプルの基本的な違いは

・原理原則を洗練するのがシンプル
・原理原則を無視するのが単純化

だということだ。つまり、コンセプトデザイインにしろ、設計にしろ、「単純化を許さない」という姿勢がシンプリシティを生み出す。

このように考えてみると、商品や仕組みをシンプルにする方向性が見えてくる。単純化してしまったものの原理原則を考え直し、再び、それを洗練していくことである。

 

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。