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2010年4月13日 (火)

【ポジティブでいこう!】第1回 ポジティブであるとはどういうことか

◆ポジティブ心理学の教え

何か問題があったとしても、それは何か自分に悪いことがあって起きるのではなく、自分自身が自分のよいところを働かせれば克服できるような問題なのかもしれないと考えていきます。つまり、自分自身の責任で、目標を持って自分を育てていくことによって成長していくという、人間の持っているポジティブな働きのモデルを考えているのです。

この文章は、ポジティブ心理学の研究者である南九州大学の島井哲志教授のポジティブ心理学の説明の一部である。

これまでプロジェクトマネジメントについて、メルマガ、雑誌、書籍などで、いろいろな意見を発信してきたが、どうしてもうまく伝わらない話が「プロジェクトをポジティブな発想でマネジメント」するという話だ。

プロジェクトで問題が生じたときに、ほとんどのケースは、自分自身(自責)か、プロジェクトメンバー、あるいはステークホルダ(他責)に悪い点があると考え、その悪い点を改善することによって問題を解決しようと考える。例えば、プロジェクトのスケジュールが遅れてきたとしよう。そのときにその原因を調査し、取り除く。

そうではなくて、自分やプロジェクトメンバーには、自分たちがよいところを働かせれば解決できる問題だと考えて、対応していく。つまり、頑張れば、スケジュールを挽回できると考える。


◆闇雲にプラスに考えればいいというわけではない

ただし、ここで微妙なのは、俗にいう「プラス思考」のように、起こっていることを正視せず、また、原因をまったく考えず、闇雲にやればよいという話ではない。ここが難しいところだ。

少なくとも、起こっていることが好ましいことではないということは正確に認識する必要がある。そして、それによって芽生えるネガティブな感情を殺せという話でもない。

金井先生が、「危機の時代の「やる気」学」の中で、「ポジティブがネガティブを孕み、ネガティブがポジティブを孕む」と書かれているが、まさにこれだ(その後、同居するということではなく、時間的な推移の中で起こることと訂正されている)。


◆ポジティブとネガティブの関係

ポジティブがネガティブな感覚を呼び寄せ、ネガティブな感覚がポジティブの推進力になるという関係がある。

たとえば、プロジェクトのスケジュールを考えてみよう。ポジティブに考えるとリスクや問題が生じる。それをきちんと認識しなくてはならない。そこでポジティブであり続けると、プロジェクトは破綻する。ネガティブが呼び寄せられることが重要である。マネジメント的にはそれは結果ではなく、リスクであって欲しい。そして、そこでアクションをとる。そのアクションによって、また、ポジティブが推進されるという関係ができる。

日本の組織というのは、従来、スケジュールが遅れてもそれを正視せずに、問題を問題として認識せず、いつかはできるだろうという管理をしていた。つまり、危機においてもポジティブでアリ続けた。このようなやり方に戻れと言うことではない。

問題を問題として認識する。これがスタートである。まずいと思うかもしれないし、焦るかもしれない。危機感が生まれる。問題はそのあとである。そこで、自分の何を伸ばせば状況を問題を克服できるかを考える。たとえば、自身やチームの集中を高めることで、パフォーマンスを上げれば、スケジュールの遅れはカバーできると考える。

ネガティブな発想は、スケジュールが遅れている原因はリワークの多さであり、リワークを少なくすることによって生産性を上げようとする。

なんだ、同じじゃないかと思う人もいるだろう。現実的な反応としては、集中を高めることによってパフォーマンスを上げるなど理想論だと思う人もいるだろう。

でも、まったく違うのだ。リワークに注目してしまうと、仕事の集中できない。集中できない仕事はおもしろくない。おもしろくないと、パフォーマンスは上がらない。悪循環に陥る。

しかし、仕事に集中すると、仕事が楽しくなる。嫌いでやっている仕事でも、集中して有能感(つまり、俺ってできるんだ)や、効力感(やればなんとかなる)を感じることができれば、仕事が楽しくなり、仕事をすることが喜びになる。さらにチームであれば、チームで一緒に一生懸命に何かをすること自体に喜びを感じることもできる。喜びを感じるから、一生懸命にやる。好循環になる。

この違いがポジティブとネガティブの違いである。

以上に述べた例は、かなりステレオタイプの例であるが、プロジェクトの初期計画や、問題への対処で、プロジェクトマネジャーやメンバー、あるいはスポンサーがポジティブに考えるか、ネガティブに考えるかによって、計画がずいぶん変わってくることが多い。

この連載では、ポジティブにものごとに取り組んでいくというのはどういうことかを考えながら、プロジェクトをポジティブにマネジメントしていう方法を考えていきたい。

【参考文献】
金井 壽宏編著『 「人勢塾」 ポジティブ心理学が人と組織を鍛える』、小学館(2010)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4093878633/opc-22/ref=nosim
島井哲志「ポジティブ心理学入門 幸せを呼ぶ生き方」星和書店(2009)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4791107144/opc-22/ref=nosim
金井 壽宏「危機の時代の「やる気」学」、ソフトバンククリエイティブ (2009)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797354801/opc-22/ref=nosim


◆ワールドカフェのお知らせ

「ポジティブでいこう」をテーマにしたワールドカフェを行います。ワールドカフェは初めてという方も多いかと思いますので、今回は「体験会」の形で行います。

「戦略実行リーダー養成講座」という講座の紹介イベントも兼ねて行いますので、こちらには興味がないという方は、ワールドカフェだけでもご参加ください。その場合、その旨を備考欄にて書いて頂き、15時くらいまでにお越しください。

会場などの詳細、お申し込みはこちらになります
http://www.pmstyle.biz/smn/20100422.htm


 

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。