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2009年10月 6日 (火)

【補助線】「目的を変えても仕事を続ける」謎

◆ダムを造ることが目的なら、プロジェクトを中止する理由はない

ダム建設中止の是非が大きな問題になってきた。住民は、今の「中止ありき」で協議をしていくという方法に激しく反発している。

ダムのプロジェクトではダムを造ること自体を目的にしているわけではない。たとえば、熊本の川辺川の場合だと、ダムを造る目的には、治水、水源(かんがい)、発電の3つの目的があるとされる。時代が経てば、状況が変わり、目的が消失することがある。当たり前の話だ。3つある目的のうちの治水だけが残っている。

当然、投資対効果が変わってくるし、目的が変わるということはプロジェクトとしては仕切り直しをすることを意味する。しかし、仕切り直しをすることなく、40年継続された

この問題の構図ははっきりしている。戦略的にプロジェクトを進めようとせず、「実行ありき」なのだ。目的というのはある意味でどうでもいいのだ。ある意味というのは、必要ないというとではない。「実行ありき」で、目的は実行するための「理由」に過ぎないということだ。従って目的が変われば、仕切り直しするという理由はない。

つまり結果としてか、確信犯かは別にして、ダムを建設すること自体が目的だったということになる。

よく走り出したプロジェクトは中止できないというが、目的が「ダムを造ること」だとすれば、中止する理由などないわけである。この点をよく押さえておいてほしい。

◆ビジネスプロジェクト

実はビジネスプロジェクトでもこのパターンは非常に多い。目的に

・商品を開発すること
・システムを開発すること
・売り上げを上げること

といったものを上げているビジネスのプロジェクトは、ほぼ、ダムと同じパターンだ。三番目は微妙だが、とりあえず、止めなければ目的が達成できるということを考えると同じパターンだといえよう。

このパターンに陥ると、そのプロジェクトを中止することはできない。特に、SIや建設のように社外の顧客がプロジェクトオーナーのプロジェクトは、中止できない。

逆にいえば、中止するには、正しい目的を掲げ、目的のレベルで合意するようにすることだ。顧客のつくプロジェクトであれば、契約書の中でそれを謳い、中止後の処理についても明確にして、合意しておくことが必要である。

◆根本的な問題

もっと根本的な問題としては、そもそも、仕事の目的とはどのようにして達成されるかという話だ。

仕事と目的には、

 仕事
  →(生み出す)
   サービス/プロダクト/・・・
   →(実現する)
     目的

のような構造がある。ダムでいえば、

 ダム建設
  →(生み出す)
   ダム
   →(実現する)
     治水、水源(かんがい)、発電

という構造があるわけだ。この構図をみれば分かるように、目的が変わるということは、プロダクトも変わるし、仕事も変わる。当たり前の話である。

プロジェクトマネジメントというのは目的を達成するために、プロダクト(スコープ)や仕事を調整していくマネジメントである。

そんなことは分かっているという人は多い。しかし、実際にプロジェクトマネジメントとしてできている人は少ない。理由は様々であるが、共通の理由は分かっていないことではないかと感じることが多い。ダム工事の役人のように確信犯でやっている人は少ないように思う。

◆もっと根本的な問題

ではなぜ、確信犯でするか?

これは簡単である。やってきたことを失敗だと認めないためだ。

公共工事であれ、ビジネスであれ、中止と大赤字を比べると、大赤字の方が失敗としては小さいという考える。戦略性のなさのなせる業である。

であれば、簡単だ。失敗に対する対処、つまり、中止という判断のためのオペレーションを標準化すればよい。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。