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2008年12月16日 (火)

【補助線】自責と他責

プロジェクトマネジャーが集まった研修やワークショップで、プロジェクトマネジメントの問題分析をやると、ずらっと「他責」の言葉が並ぶ。

「顧客が決めてくれない」
「上司がリソースを提供してくれない」
「メンバーが仕事の仕方を知らない」
「外注先がちゃんと品質を出してくれない」
「法律がこうなっているのだから仕方ない」
 etc

俗名を「くれない症候群」とも言う。

もっとも、これはプロマネ自身が他人から責任を負わされているということでもある。つまり、

・あいつの判断で被害を大きくしたと上司から責められる
・プロジェクトマネジャーが顧客調整してくれないので作業が進まないをメンバーから責められる
・あのプロジェクトのマネジャーはきちんと仕様を確定してから出してくれないと愚痴る外注先
・あのプロジェクトマネジャーは自分から動いてくれないとクレームする顧客
 etc

などといった言い分があちこちから飛んでくる。

そこで、

 やるかやられるか

って話になる。「自責?冗談じゃない」。自分の責任だと認めたら、大変なことになる。シラをきりとおすしかない。そこで、プロマネは声高に「クレナイ」と叫び続ける。他責が蔓延した職場になる。いわゆる「不機嫌な職場」。

綾小路きみまろのネタにこんなネタがある。

社長は課長をいじめます。
課長は係長をいじめます。
係長は平社員をいじめます。
平社員は家に帰って女房をいじめます。
女房は子供をいじめます。
子供は学校に行って、自分より弱い子供をいじめます。
その子供は猫をいじめます。
猫はねずみをいじめます。
そしてねずみは社長の服をかじるのです。

まさにこれだ。この構図を作ると、結局誰の責任か分からなくなる。これが日本型経営の本質である。

責任を取るというのは責任をとってやめるとか、降格するとかいうことではない。話は変わるが、小泉純一郎首相の最大の功績は問題が起こったときに「きちんと対応することによって責任を取る」ということを政界の常識にしたことではないかと思う。明確な記憶がないが、誰か大臣の管理下で問題が起こったときにそう断言した。自責とはこういうことをいう。

プロジェクトマネジャーなら、リスクマネジメントを知っているだろう。リスクマネジメントの中に、「リスクオーナー」という概念がある。リスクオーナーというのはリスクに対する「対応責任」を持つ人のことだ。このように自責とは問題に対して対応責任を持つことである。

そう考えると、「他責」であることを主張することの意味はまったく分からなくなる。「他責」は結局自分に降りかかってくる。気休めに過ぎない。

では、どうすれば自責の発想ができるか。これは他責になる理由を考えてみればすぐに分かる。他責になるのは問題を大括りに捉えるからだ。プロジェクトで仕事をしているのだから、ひとつの問題の中には、必ず、いろいろな人の責任がある。顧客も含めてだ。

それをすべては最大の権限がある人の仕事だとするから、話がややこしくなる。自分の権限では対応できないので、自分の責任だという論理になる。

そこで、問題を徹底的に細分化して、いろいろな人に権限に応じた責任を振り分けていくことだ。これ自身はプロジェクトマネジャーが自責としてやるべきだろう。その上で、それぞれの人にきちんと仕事を頼み、また、自分のすべきことはきっちりしていく。

これによって、多くの問題は解決する。残る問題は、その手順だ。これについては、また、そのうち考えてみたい。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。