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2008年6月 9日 (月)

【補助線】目的と目標を区別する

目的と目標という言葉を分けて使っていない人は多いと思う。あるクライアントから、そこにこだわる意味が分からないという指摘を受けた。

両者には明確な違いがある。プロジェクトの目的とはプロジェクトによって達成したいことである。目標とはその目的を達成するために、達成しなくてはならないことであり、一般的には一つの目的に対して、複数の目標が設定される。

ややこしいのは、ひとつのプロジェクトにおいて目的というのは一通りではない。組織としての目的もあれば、顧客としての目的もある。もちろん、プロジェクトマネジャーの目的もあるし、チームの目的もあるだろう。そして、異なる目的に対して、同じ目標が設定されることもある。P2Mに目的―目標連鎖というツールがあるが、これは目的と目標のネットワークをマネジメントしながら、プロジェクトを進めていくためのツールとして用いられている。

抽象的かもしれないので、例をあげてみよう。新技術を使った商品Aの開発プロジェクトがある。このプロジェクトの全社的な目的は
(G0)新しい層の顧客に受け入れられる商品を獲得すること
だった。そして、事業としての目的は
(G1)商品群としてのシェアで競合しているX社を抜くこと
だったとしよう。また、開発現場(プロジェクト)としての目的は、
(G2)新技術に対する可能性を広げる
ことだった。さらに、営業的には
(G3)商品ラインナップに厚みを持たせることにより、顧客を囲い込むこと
といった目的があった。

まず、G0から設定された目標は
(O0-1)○○と△△の機能を持った商品とすること
(O0-2)1年以内に開発し、原価は3000円。開発費用は2億円で、原価に変動のない範囲で許す
(O0-3)商品リピート率を40%にすること
の2つだった。次に目的G1達成のために
(O1-1)商品Aを年間50万個販売すること
(01-2)商品Aの相乗効果で、他の商品の販売数を平均1%増やすこと
(O1-3)商品群のシェアを25%にすること
の2つを策定した。さらに、G2からは
(O-1)3つ以上、20億円のポテンシャルを持つ技術Bの適用市場を探すこと
が設定された。最後のG3からは、
(O3-1)商品群のシェアを25%にすること
(O3-2)商品リピート率を40%にすること
を設定した。この(O3-1)は(O0-3)と同じものである。こんな感じだ。

さて、では、なぜ、目的と目標は混同されるのだろうか?これには明確な理由がある。商品を作ることそのものが目的になっているようなプロジェクトが多いからだ。たとえば、IT業界で特定の分野でよく行われている製造請負といった仕事がある。これをプロジェクトとして使っていこうとすると、一定の制約条件(QCD)のもとでものを作ることそのものが目的であり、それは同時に目標にもある。このようなプロジェクトはあまり付加価値の高くないというより、プロジェクトとして実施することにあまり意味があるとはいえない。

IT業界に関していえば、システムの請負でやる場合にも同じような目的の立て方をする会社やプロジェクトマネジャーがいる。付加価値が期待できるところをモノを作ることだけを目的にしているのは組織としてみれば大変な「ロス」である。

会社がそのようにやるというのは、評価の問題との関係が出てくるので、そんなに単純な話ではないが、極力、付加価値を大きくするような目的の策定をして、プロジェクトを立ち上げたいものである。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。