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2008年4月25日 (金)

【補助線】ミドルマネジメントの復権

◆3つのマネジメントの重要性

ミドルマネジメントは、トップマネジメントが示した経営方針や経営目標に対して、自部門の目標を設定し、ロワーマネジメント(現場管理者層)を通じて一般社員に実行させる役割を持つマネジメントである。

欧米では、マネジメントの重要性として

(1)トップマネジメント
(2)ロワーマネジメント
(3)ミドルマネジメント

の順になっている企業が多い。これに対して、日本企業は

(1)ミドルマネジメント
(2)ロワーマネジメント
(3)トップマネジメント

の順になっている企業が多い。

Middle_2
◆連結ピンとしてのミドルマネジメント

特に、ミドルマネジメントはリカートのいう「連結ピン」として機能することにより、全体のパフォーマンスが高くするという重要な任務を果たしていると考えられていた。

これは経営制度や価値観の違いによるところが大きい。欧米はトップマネジメントが比較的細かな目標設定までするに対して、日本ではトップにそのような役割が求められて来なかった。その一つの理由に年功序列があると思われる。欧米の大企業のトップとしてバリバリに仕事をしているのは40代が多い。40代はおそらく総合的な意味での人間の情報処理能力が最も高く、経営細部にわたるマネジメントが可能だったと思われる。また、それを補佐する経営チームの導入も進んでいた。

これに対して、日本ではバブル前までは大企業のトップは50代~60代であり、70代のトップなども結構いた。いくら経営スタッフをつけてもこの年代のトップマネジャーに経営細部にわたる判断をするのは難しく、おのずとミドルマネジャーにその役割が移っていたのではないかと思われる。

◆ミドルの崩壊

ところが、バブル期を経て、右上がりの成長が止まるとこの状況が一変した。作っても売れなくなった。そこで、当時の経営トップはどういう行動に出たか?多くの企業は自分たちの立場は変えないために、成果主義を導入した。成果主義では、基本的に中間層は必要ない。トップマネジメントとロワーマネジメントさえしっかりしていれば、成り立つ制度である。

これに加えて、情報化の進展が重なり、急激に中抜き経営が進んでいった。ミドルマネジメントが崩壊していったのだ。つまり、マネジメントの重要性は米国と同じく、

(1)トップマネジメント
(2)ロワーマネジメント
(3)ミドルマネジメント

となってきたわけだ。

結果、何が起こったか?日本の強みであったはずの現場の崩壊であり、それによる経営そのものの弱体化である。現場力で勝ってきた企業は瞬く間に崩れ去っていった。

◆グローバル化か、ミドルマネジメントの再構築か

これらの企業がこれから2つのオプションを選ぶことになる。ひとつはグローバル化による経営の強化である。もう一つは、現場の再構築である。前者の典型例はソニーだろう。特に動きの激しい電子・情報の業界を中心にこれからもこの方向性を持つ企業は増えていくと思われる。問題は後者である。

社名を上げるのは控えるが、かなりの割合の企業が現場の再構築に取り組んでいる。開発力の再構築だったり、技術力の再構築だったりする。ところがあまりうまくいっているようには見えない。

これはそのような戦略を取るある大手メーカの役員に聞いた話だが、なかなかうまくいかなということと同時に、時代に逆行しているような感覚があると言っていた。

これはある意味で当り前である。ミドルマネジメントが機能し、現場も強かった時代とは経営環境が一変しているからだ。現場の再構築といっても、少なくともこの時代に戻すという選択肢はない。トップマネジメントが機能しないと方向性を見失ったままで、沈没してしまうような時代なのだ。ただ、この点は変わりつつあるといってよいだろう。

◆現場の再構築にはミドルマネジメントの再構築が不可欠

問題は現場を再構築するにはどうすればよいかということだ。これには、短絡的にロワーマネジメントに手を入れるのではなく、成果主義で失われたミドルマネジメントを再構築することが先決ではないかと思う。過去に現場が強かったのは、技術力とか、開発力とかいった力だけではなく、ミドルマネジャーのトップと現場の調整機能、部門間の調整機能や、これらを基盤にしたロワーマネジメントに対するリーダーシップなどの存在があったからに他ならない。

少しずつ変わりつつあるトップマネジメントに対応できるミドルマネジメントを再構築する必要がある。

このようなミドルマネジメントでキーになるのがプログラムマネジメントではないかと思う。特に、ロワーマネジメントにプロジェクトマネジメントが導入されているときには、プログラムマネジメントは強力なミドルマネジメントのツールになるはずだ。

◆おわりに

今回の話はここまでにして、最後にプログラムマネジメントの位置づけに対してコメントをしておく。PMIの標準ではプログラムマネジメントはロワーマネジメントとして位置づけられ、トップマネジメントとしてのポートフォリオマネジメントがあり、整合させるような構図になっている。これに対して、日本のP2Mではプログラムマネジメントをミドルマネジメントと位置付けている。この標準の位置づけを見ても、日米のミドルマネジメントの重要性の認識が違うのが分かる。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。